従来、病気の原因となる標的分子に結合しやすい化合物(ヒット化合物)を取得し、さらに医薬品としての適性を高めた化合物(医薬品候補化合物)とするまでに、多大な時間とコストが必要でした。アステラスではDXの推進により、このプロセスの改善に取り組んでいます。

超大規模バーチャルスクリーニング

より多くの化合物を対象に高速な計算を行い、評価することで、良いヒット化合物を短期間で取得できます。これまでは社内サーバーを用いて、約100万個の化合物を対象に計算していました。より良いヒット化合物を取得するためには、数億個の化合物を対象とする必要がありますが、従来の環境では1~2年かかってしまうため、現実的ではありませんでした。新たにクラウドコンピューティングと、結合しやすさを予測するAIを組み合わせることで、数億個の化合物を対象にした計算が、最短1~2週間で完了できるようになりました。

dx_image1_jp

人×AI×ロボットを統合したHuman-in-the-Loop型の医薬品創製プラットフォーム

さらに、取得したヒット化合物を医薬品候補化合物にするまでの最適化研究の期間短縮と質の向上にも取り組んでいます。化合物の構造設計(Design)、合成(Make)、その化合物の薬理作用などの評価(Test)、解析をし(Analyze)、その結果から次のより良い化合物の構造を設計するというDMTAサイクルにAIとロボットを導入して加速化しています。各工程はAIとロボットを活用して進め、要所で研究者がアイデアや総合的判断などの価値を加える仕組みとすることで、創薬スピードが飛躍的に向上しました。このプラットフォームによって、ヒット化合物から医薬品候補化合物取得までの期間を、従来に比べて最短で約70%短縮しました。
また、細胞や遺伝子などの新しいモダリティにもこのプラットフォームを活用するため、Mahol-A-Ba(まほらば)を薬理作用などの評価(Test)に導入しています。

dx_dx-story-vol2

アステラスのDX戦略シリーズ Vol.2:人×AI×ロボットの協働で創薬を加速

Read more

NLPを用いた研究サポートツール「E-PaD」

E-PaDはAI技術の1つのNLP(Natural Language Processing)を用いて、毎年160万件以上も増え続けるライフサイエンスに関する文献データから、重要な情報(病態、遺伝子、バイオロジー、モダリティ等)を漏れなく効率的に抽出し、創薬研究に必要な洞察や、新しい創薬アイデアの発想をサポートします。本ツールは単純なキーワード検索だけではなく、入力されたバイオロジー等に関する文章やフレーズに基づき、関連性の高い疾患(適応症)候補を根拠とともに研究者に提案します。またE-PaDには外部環境の情報を集約して可視化することができる機能があり、競合の状況やライフサイエンスのトレンドなどを踏まえて研究戦略立案も支援する包括的なツールとして構築されています。

 

dx_image2

関連リンク