モノづくりデータマイニングシステム「DAIMON」

製薬業界において、膨大なデータを扱うのは、研究開発だけではありません。モノづくり、生産の現場においても同様です。医薬品の有効成分である原薬の製造においては、構造変換を伴う化学反応や精製といった工程があります。また原薬を実際の医薬品にする製剤の製造では、原薬を均一にする混合や錠剤に成形する打錠など、いくつもの工程があります。これらすべての工程において、データを基に厳密な品質管理が必要です。
患者さんにより良い品質の医薬品を安定的に供給するために、アステラスが独自に開発した最先端のデータマイニングシステムが「DAIMON」です。

DAIMONによるデータマイニングには、(1)一変量モニタリング、(2)回帰・因果関係モニタリング、(3)多変量モニタリングという、データ量およびデータ解析の複雑さに応じた3つのモニタリングがあります。それぞれを必要に応じて適切に運用することで医薬品のモノづくりから得られる多様なデータに対応できます。

このトレンドモニタリングを起点に、変動検出/リスク予測、原因調査/未然防止、製品とプロセスの理解向上、という知識獲得サイクルを継続的に回すことで、品質・生産トラブルへの対応が迅速となるだけでなく未然に防ぐことが可能となり、医薬品のモノづくりの高度化・安定供給を実現します。

 

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製剤設計AIの開発

低分子化合物の錠剤開発では、目標とする品質(溶けやすさや硬さなど)にするために、原薬に加える添加剤の組合せ(処方)が重要です。最適な処方を見出すために、一般的に数多くの実験が必要になりますが、この実験を効率化し、高品質な錠剤を短期間で開発できれば、患者さんにより早く薬を届けることができます。アステラスでは2018年度から株式会社日立製作所と協働し、これまで社内で蓄積してきた錠剤に関するデータを用いた製剤設計AIを開発しています。

製剤設計AIには、錠剤の品質を予測するAIと、最適な処方を探索するAIが組み込まれています。製剤設計AIに、原薬データと目標品質を入力すると、その目標を満たす候補処方と予測された品質が提示されます。
 

製剤設計AIの開発


入力する目標品質は、錠剤から原薬が溶け出す速度を表す溶出性、錠剤中の原薬が保管時に分解などで変化する割合を表す安定性、錠剤が目的の硬さに製造トラブルなく成形できるかを表す製造性です。製剤設計AIでは複数の品質項目を同時に最適化することができ、より早く患者さんに薬が届くことになると期待されます。

現在はより使いやすいインターフェースを整えたアプリケーションの開発が完了し、すでに開発化合物への適用を開始しています。AIの精度にはデータの量が大きく寄与するため、社内データを継続的に収集・整理できる仕組みの構築を検討しており、今後もAIの精度を継続的に改善していきます。

 

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