アフリカのまん延国の子どもたちに、数年以内に製品を届ける
主な目標
イノベーションの創出
命にかかわる感染症「住血吸虫症」
住血吸虫症はアフリカや南米を中心とする発展途上国に多い寄生虫感染症で、まん延地域で暮らす人々の経済や健康に重大な影響を及ぼしています。小児の罹患率が特に高いことが知られており、治療をしなければ、貧血、発育不全、学習能力の低下、臓器の慢性炎症を引き起こし、命にかかわることもあります*1。
しかし、住血吸虫症に対する幼児を含む就学期前の児童の臨床データが不足していることに加え、その標準治療薬であるプラジカンテル錠は、錠剤が大きく薬剤に苦みがあることなどから幼い児童の治療には適しておらず、感染している児童が治療を受けられないという現状があります。
製剤技術供与を行い、コンソーシアムパートナーとともに小児用製剤開発を進める
アステラスは、製薬企業や研究機関、国際非営利組織といったコンソーシアムの参加者とともに、プラジカンテル錠の小児用製剤の開発を進めています。
この小児用製剤の創製にあたり、アステラスは自社の製剤技術を供与しました。開発中の小児用製剤は、現行のプラジカンテル錠よりも小さく、口腔内で崩壊しやすいため水の有無に関係なく服用できるうえ、苦みを低減する工夫も施されています。また、生産コストを抑えつつ、簡素な生産技術で製造でき、熱帯地域の高温多湿な環境でも品質を維持できるなど、さまざまな特長を有しています。その後、コンソーシアムパートナーであるドイツのメルク社が製剤の最適化を行い、ブラジルのファルマンギーニョ社に製造移管が実施されました。この一連の連携は治験薬の製造と将来の供給に向けた現地生産能力の構築に繋がっています。
小児用製剤の臨床開発
小児用製剤開発のための臨床試験は、規制当局や流行国の臨床医を含めた国際的な専門家からの助言に基づき計画され、欧州医薬品庁(EMA : European Medicines Agency)の推奨事項に沿って実施されました。新たな小児用製剤の開発には第Ⅰ相から第Ⅲ相の臨床試験の実施が必要でした。2021年11月に、ケニアとコートジボワールで実施していた第Ⅲ相試験が完了し、生後3か月から6歳の就学期前児童のための新たな治療薬候補として、良好な有効性と安全性を示しました。
2022年12月には、就学期前児童を対象にした住血吸虫症の治療薬としての、承認申請をEMAが受理し、これからEMAが審査を開始します。
アクセスプログラム
また、まん延国において、この新たな小児用の治療選択肢へのアクセス確保に備えるための新たな実施研究プログラムに対して、2021年2月には公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund : Global Health Innovative Technology Fund) と The European & Developing Countries Clinical Trials Partnership(EDCTP) からの資金提供を受けることが確定しました。*2
並行し、コンソーシアムではこの新たな治療選択肢への公平かつ持続可能なアクセスを提供するための新しい仕組みを模索しています。
アステラスは、今後もコンソーシアムの一員としてノウハウや技術の提供を行い、コンソーシアムパートナーと連携し、アフリカの住血吸虫症まん延国の子どもたちに数年以内には製品を届けることができるよう取り組んでいます。
コンソーシアムの活動やパートナーの詳細については、以下をご覧ください。
https://www.pediatricpraziquantelconsortium.org/
*1 https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/schistosomiasis
*2 コンソーシアムの活動は現在、GHIT FundおよびEDCTPからの資金提供により支えられています。
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※本動画は、GHIT Fundにより2019年7月に作成されました。