気候変動対策

気候変動はその緩和と適応に国、自治体、企業、市民などの積極的な参加が求められています。アステラスは、気候変動が持続可能な企業活動の制限要因になると認識し、経営の重要課題のひとつに位置づけて取り組んでいます。
アステラスは、2016年パリ協定の「2℃目標」達成に向けたSBTイニシアチブが推奨する削減目標設定手法を採用し、2018年11月に環境行動計画で定める目標が認証を受けました。*¹
気候変動を経営課題として取り組む際の指標は、国際エネルギー機関の2℃シナリオ(IEA 2DS)を採用しています。現在、2050年ネットゼロの長期目標設定に向け検討を進めています。 

*¹ 2023年に、温室効果ガス排出削減目標に関する情報を新しく掲載していますので、詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。

https://www.astellas.com/jp/news/26936

2050年に向けた取り組み

環境行動計画(気候変動対策)<SBT認証済>

■ GHG排出量(スコープ1+2)を2030年度までに30%削減する
(基準年:2015年度、 基準年の排出量:202千トン)  

■ GHG排出量(スコープ3)を2030年度までに売上収益当り20%削減する
(基準年:2015年度)  

 

行動計画(SBT)の進捗状況independent limited assurance

GHGプロトコルに基づき算出したSBT目標の進捗は次の通りです。

Scope 1+2 ratio

第三者保証の対象は、GHG排出量です。
一部のサイトで2020年度購入電力量の修正が発生したため、2020年度データを修正しました。


環境行動計画の進捗(スコープ3/売上収益)independent limited assurance

  2015年度 (基準年) 2019年度 2020年度* 2021年度
GHG排出量(スコープ3)(トン) 271,010 229,953 194,534 200,019
売上収益(十億円) 1,373 1,301 1,250 1,296
排出量原単位(トン/十億円) 197 177 156 154
基準年度比(%) -- -10.5 -21.1 -21.8

第三者保証の対象は、GHG排出量(スコープ3)および排出量原単位です。
* 一部のサイトの購入電力量の2020年度データを修正したため、スコープ3カテゴリー3の値も修正しています。

 

GHG実排出量の推移independent limited assurance

アステラスの2021年度のGHG実排出量は、119千トン(スコープ1:64千トン、スコープ2:55千トン)でした。

エリア別GHG実排出量の推移

(単位:トン)
ARC
  2015年度 構成比
(%)
2019年度 構成比
(%)
2020年度 構成比
(%)
2021年度 構成比
(%)
日本 166,857 75 132,888 80 94,522 77 89,725 76
スコープ1 61,036   48,842   46,217   46,662  
スコープ2 105,821   84,046   48,305   43,063  
米国 31,185 14 13,022 8 13,880 11 12,448 10
スコープ1 20,742   7,878   7,139   5,686  
スコープ2 10,443   5,143   6,741   6,762  
エスタブリッシュドマーケット 16,725 8 12,131 9 8,601 7 9,913 8
スコープ1 13,073   10,743   7,799   9,115  
スコープ2 3,652   1,389   802   798  
グレーターチャイナ 3,349 2 3,941 2 3,623 3 3,956 3
スコープ1 14   18   29   47  
スコープ2 3,335   3,923   3,594   3,909  
インターナショナルマーケット 4,628 2 4,155 3 2,695 2 2,636 2
スコープ1 3,635   3,417   2,092   2,181  
スコープ2 994   738   603   455  
合計 222,744 - 166,138 - 123,320 - 118,679 -
スコープ1 98,500   70,898   63,276   63,691  
スコープ2 124,244   95,239   60,044   54,988  

非エネルギー起源GHG排出量は全体排出量の5%未満のため、開示データに含まれていません。
 

GHG排出削減に向けた取り組み

GHG排出量の削減には、中期的にグループ全体で取り組むマネジメントが必要です。生産部門や研究部門、営業部門、オフィス部門で気候変動の緩和に向けたさまざまな取り組みを行っています。
ハード面では、高効率機器の導入や燃料転換などはエネルギー使用に伴い発生するGHG排出削減に大きな効果が期待できます。ソフト面では、日々の活動のなかでの工夫や社員全員の参加による省エネルギー活動も大切な取り組みです。各事業所では、これらハード面・ソフト面の取り組みを進めています。

気候変動対策投資計画

2021年度は、各事業所での省エネルギー対策、空調関連機器の更新、LED照明の導入などを中心に、約11億円の投資を計画し、実際に9億円の投資が完了し、GHG削減効果として1,933トンとなりました。
今後も再生可能エネルギー導入などの投資計画について、継続的な検討を行うこととしています。

サプライチェーンでの温室効果ガス排出量の把握

気候変動に関する環境行動計画は自社の事業活動による排出(スコープ1、2)を対象にしていますが、アステラスは、サプライチェーン全体での排出(スコープ3)の把握にも努めています。スコープ3の重要な排出源からのGHG排出についてもSBTを設定し、その削減に取り組んでいます。また、生産委託先にもGHG排出削減に向けた取り組みに賛同・協力いただく働きかけを行っています。
スコープ3の詳細は、間接的な関わりによるGHG排出(スコープ3)に掲載しています。

間接的な関わりによるGHG排出(スコープ3)
 

気体燃料の優先的な利用

アステラスの研究および生産拠点では、燃焼時に発生するGHGが少ない都市ガスやLPG、LNG(液化天然ガス)を燃料としたボイラーを使用しています。GHG排出削減のほか、大気汚染物質であるSOxの削減にも貢献しています。

エネルギー監視システムの導入

エネルギーの使用状況を細かく把握することは、新たな施策立案に有用です。「見える化」を実現するエネルギー監視システムを、各事業所に導入しています。

営業活動によるGHG排出低減independent limited assurance

アステラスは、2008年度から営業用車両の利用に伴うGHG排出量の削減に取り組んでいます。各地域で、環境負荷の小さな車両(例:ハイブリッド車、電気自動車)への切り替えを継続的に進めています。ハイブリッド車の導入率が高い日本およびアメリカでは、車両台数に対するGHG排出量が他の地域よりも抑制されています。 営業車の利用に伴うGHG排出量は、スコープ1として報告しています。

(単位:トン)
ARC
  2019年度 2020年度 2021年度
営業車利用による排出量(全社) 20,333 12,980 12,697

実燃料使用量を把握できない場合は、燃料購入費用、社用車・自家用車(営業活動に利用している場合)での平均的な年間燃料使用量などからCO2排出量を推定算出しています。アジア・オセアニア(一部を除く)のデータは含みません。

COVID-19の影響

2021年度の事業活動は2020年度に引き続きCOVID-19 (新型コロナウイルス)による影響を受けました。研究・生産拠点では医薬品開発・供給のための活動は継続されましたが、営業活動や従業員の出張に大きな制限が生じました。2021年度からは新たな環境下での働き方が定着し、営業や研究開発でも出張を伴わない事業活動が行われています。COVID-19以前の活動と比べると、営業活動の変化により7,600トン程度、飛行機利用の抑制により32,000トン程度の排出抑制効果になりました。(2019年度比)

再生可能エネルギーの利用

再生可能エネルギーの利用は、最も有効な気候変動対策の一つです。アステラスは、太陽光や風力発電、バイオマスボイラーなどの設備導入、または再生可能エネルギー由来の電気の購入によるGHG排出抑に取り組んでいます。今後も再生可能エネルギーの利用を拡げる取り組みを継続していきます。

再生可能エネルギーの利用状況independent limited assurance

Renewable vs energy
 
Renewable vs electricity

利用した再生可能エネルギーの内訳

再生エネルギーの種類 エネルギー量
再生可能エネルギー由来電気の購入 95,882MWh
風力発電     1,486MWh
太陽光発電 163MWh
木質バイオマスボイラー利用 40,761 GJ
地中熱利用 604 GJ


2020年4月から日本国内の3つの研究・製造拠点(つくば研究センター、つくばバイオ研究センターおよび高萩合成技術センター)が消費する全ての電力を、温室効果ガスを排出しない水力発電由来の電力(※)に切り替えました。これにより、温室効果ガス約29,700トンが排出抑制されたことになります。
また、日本以外でも順次可能なエリアから再生可能エネルギー由来の電源への切り替えを推進しており、再生エネルギーの利用が可能な機会の探索は今後も継続します。今後、再生可能エネルギー利用についての目標を策定する検討を進めています。

※東京電力エナジーパートナー株式会社が提供する「アクアプレミアム」
 

経団連「カーボンニュートラル行動計画」への参画

アステラスは、経団連の要請に基づいて日本製薬団体連合会(日薬連)が策定した「カーボンニュートラル行動計画 *」に参加しており、新たな目標の設定を検討中です。 

*「2050 年 CO2排出量ネットゼロ」を長期ビジョンとし、「CO2排出量を 2030 年度に 2013 年度比で、46%削減(研究所・工場・オフィス・営業車両)」をフェーズⅡ目標(2030 年目標)とする