気候変動はその緩和と適応に国、自治体、企業、市民などの積極的な参加が求められています。アステラスは、気候変動が持続可能な企業活動の制限要因になると認識し、経営の重要課題のひとつに位置づけて取り組んでいます。
アステラスは、気候変動対策への長期のコミットメントとして、スコープ1+2およびスコープ3のそれぞれ、2015年を基準に2050年までにGHG排出量90%の削減と10%の残余排出量の中和化によるネットゼロの達成を目指すことを決めました。なお、2030年までのGHG排出量削減目標についてSBT(Science Based Targets)イニシアチブから承認を取得しています。
気候変動を経営課題として取り組む際の指標は、パリ協定における「1.5℃目標」をスコープ1+2、「well-below 2℃目標(2℃を十分に下回る目標)」をスコープ3に採用しています。
環境行動計画(気候変動対策)<2023年1月SBT再認証>
■ GHG排出量(スコープ1+2)を2030年度までに63%削減する
(基準年:2015年度、 基準年の排出量:202千トン) 指標:「1.5℃目標」
■ GHG排出量(スコープ3)を2030年度までに37.5%削減する
(基準年:2015年度) 指標:「well-below 2℃目標」
新たな行動計画(SBT)の進捗状況
GHGプロトコルに基づき算出したSBT目標の進捗は次の通りです。
環境行動計画の進捗(スコープ3)
2015年度 (基準年) |
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
GHG排出量(スコープ3)(トン) | 458,173 | 268,113 | 312,998 | 445,007 |
基準年度比(%) | -- | -40.8 | -30.9 | -1.8 |
スコープ3 カテゴリー2の算定で一部旧来の算定方法を適用していたため、再算定を実施しました。(詳細は、下記リンク「間接的な関わりによるGHG排出(スコープ3)」をご参照ください。)
GHG実排出量の推移
アステラスの2022年度のGHG実排出量は、118千トン(スコープ1:61千トン、スコープ2:56千トン)でした。
エリア別GHG実排出量の推移
2015年度 | 構成比 (%) |
2020年度 | 構成比 (%) |
2021年度 | 構成比 (%) |
2022年度 | 構成比 (%) |
|
日本 | 166,857 | 75 | 94,522 | 77 | 89,725 | 76 | 89,709 | 76 |
スコープ1 | 61,036 | 46,217 | 46,662 | 44,253 | ||||
スコープ2 | 105,821 | 48,305 | 43,063 | 45,456 | ||||
米国 | 31,185 | 14 | 13,880 | 11 | 12,448 | 10 | 12,673 | 11 |
スコープ1 | 20,742 | 7,139 | 5,686 | 6,418 | ||||
スコープ2 | 10,443 | 6,741 | 6,762 | 6,256 | ||||
エスタブリッシュド マーケット |
16,725 | 8 | 8,601 | 7 | 9,913 | 8 | 8,917 | 8 |
スコープ1 | 13,073 | 7,799 | 9,115 | 8,324 | ||||
スコープ2 | 3,652 | 802 | 798 | 593 | ||||
グレーターチャイナ | 3,349 | 2 | 3,623 | 3 | 3,956 | 3 | 3,697 | 3 |
スコープ1 | 14 | 29 | 47 | 29 | ||||
スコープ2 | 3,335 | 3,594 | 3,909 | 3,668 | ||||
インターナショナル マーケット |
4,628 | 2 | 2,695 | 2 | 2,636 | 2 | 2,647 | 2 |
スコープ1 | 3,635 | 2,092 | 2,181 | 2,147 | ||||
スコープ2 | 994 | 603 | 455 | 499 | ||||
合計 | 222,744 | - | 123,320 | - | 118,679 | - | 117,644 | - |
スコープ1 | 98,500 | 63,276 | 63,691 | 61,171 | ||||
スコープ2 | 124,244 | 60,044 | 54,988 | 56,473 |
非エネルギー起源GHG排出量は全体排出量の5%未満のため、開示データに含まれていません。
GHG排出削減に向けた取り組み
GHG排出量の削減には、中期的にグループ全体で取り組むマネジメントが必要です。生産部門や研究部門、営業部門、オフィス部門で気候変動の緩和に向けたさまざまな取り組みを行っています。
ハード面では、高効率機器の導入や燃料転換などはエネルギー使用に伴い発生するGHG排出削減に大きな効果が期待できます。ソフト面では、日々の活動のなかでの工夫や社員全員の参加による省エネルギー活動も大切な取り組みです。各事業所では、これらハード面・ソフト面の取り組みを進めています。
気候変動対策投資計画
2022年度は、各事業所での省エネルギー対策、空調関連機器の更新、LED照明の導入などを中心に、約9億円の投資を計画し、実際に6億円の投資が完了し、GHG削減効果として5,236トンとなりました。
再生可能エネルギー導入などの投資計画について、継続的な検討を行うこととしています。
サプライチェーンでの温室効果ガス排出量の把握
気候変動に関する環境行動計画は自社の事業活動による排出(スコープ1、2)を対象にしていますが、アステラスは、サプライチェーン全体での排出(スコープ3)の把握にも努めています。スコープ3の重要な排出源からのGHG排出についてもSBTを設定し、その削減に取り組んでいます。また、生産委託先をはじめ取引先にもGHG排出削減に向けた取り組みに賛同・協力いただく働きかけを行っています。
スコープ3の詳細は、間接的な関わりによるGHG排出(スコープ3)に掲載しています。
気体燃料の優先的な利用
アステラスの研究および生産拠点では、燃焼時に発生するGHGが少ない都市ガスやLPG、LNG(液化天然ガス)を燃料としたボイラーを使用しています。GHG排出削減のほか、大気汚染物質であるSOxの削減にも貢献しています。
エネルギー監視システムの導入
エネルギーの使用状況を細かく把握することは、新たな施策立案に有用です。「見える化」を実現するエネルギー監視システムを、各事業所に導入しています。
営業活動によるGHG排出低減
アステラスは、2008年度から営業用車両の利用に伴うGHG排出量の削減に取り組んでいます。各地域で、環境負荷の小さな車両(例:ハイブリッド車、電気自動車)への切り替えを継続的に進めています。ハイブリッド車の導入率が高い日本およびアメリカでは、車両台数に対するGHG排出量が他の地域よりも抑制されています。 営業車の利用に伴うGHG排出量は、スコープ1(燃料使用)およびスコープ2(電気自動車での電気使用量)として報告しています。
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
営業車利用による排出量(全社) | 12,980 | 12,697 | 12,378 |
実燃料使用量を把握できない場合は、燃料購入費用、社用車・自家用車(営業活動に利用している場合)での平均的な年間燃料使用量などからCO2排出量を推定算出しています。アジア・オセアニア(一部を除く)のデータは含みません。
役員報酬へのサステナビリティ指標の組み込み
アステラスでは第19期(2024年3月期)から、監査等委員でない取締役(社外取締役を除く)の賞与(短期インセンティブ報酬)の業績評価指標に、新たにサステナビリティ指標を組み入れました。経営戦略とインセンティブ報酬を連動させることで、着実に環境への取り組みを推進していくことを目的としています。
役員報酬制度の詳細は、第18期定時株主総会招集ご通知 51頁をご参照ください。
再生可能エネルギーの利用
再生可能エネルギーの利用は、最も有効な気候変動対策の一つです。アステラスは、太陽光や風力発電、バイオマスボイラーなどの設備導入、または再生可能エネルギー由来の電気の購入によるGHG排出抑に取り組んでいます。ネットゼロの達成の助けとなる再生可能エネルギーの利用を拡げる取り組みを継続していきます。
再生可能エネルギーの利用の推移
2015年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
総エネルギー使用量(TJ) | 3,010 | 2,087 | 2,089 | 2,048 |
再生可能エネルギー由来エネルギー使用量(TJ) | 342 | 397 | 392 | 387 |
再エネ率(%) | 11 | 19 | 19 | 19 |
総電力量(GWh) | 279 | 228 | 226 | 227 |
再生可能エネルギー由来電力量(GWh) | 48 | 97 | 98 | 95 |
再エネ率(%) | 17 | 43 | 43 | 42 |
*)2022年度の開示より、購入電力および再生可能エネルギー(太陽光、風力発電など)を用いて自ら発電した電力の使用に伴うエネルギー量は、1 kWhあたり3.6 MJ で換算をしています。
2022年度 利用した再生可能エネルギーの内訳
2020年4月から日本国内の3つの研究・製造拠点(つくば研究センター、つくばバイオ研究センターおよび高萩合成技術センター)が消費する全ての電力を、温室効果ガスを排出しない水力発電由来の電力(※)に切り替えました。これにより、温室効果ガス約29,300トンが排出抑制されたことになります。
また、日本以外でも可能なエリアから再生可能エネルギー由来の電源への切り替えを推進しており、再生エネルギーの利用が可能な機会の探索は今後も継続します。今後、再生可能エネルギー利用についての目標を策定する検討を進めています。
※東京電力エナジーパートナー株式会社が提供する「アクアプレミアム」
経団連「カーボンニュートラル行動計画」への参画
アステラスは、経団連の要請に基づいて日本製薬団体連合会(日薬連)が策定した「カーボンニュートラル行動計画 *」に参加しています。2023年2月に、事業を通じて排出される温室効果ガスを2050年までに実質ゼロにすることを目指す方針を決定しています。
*「2050 年 CO2排出量ネットゼロ」を長期ビジョンとし、「CO2排出量を 2030 年度に 2013 年度比で、46%削減(研究所・工場・オフィス・営業車両)」をフェーズⅡ目標(2030 年目標)とする