アプローチ
疾患に関連するタンパク質のうち、従来の低分子化合物による阻害に適した活性結合部位(深いポケット)を持っているのは約20%と言われています。残りの80%は結合ポケットが浅く、十分に薬がその機能を制御できないため、標的になりにくいと考えられています。そのことから、アンドラッガブル(アプローチ出来ない)標的と呼ばれています。私たちは、アンドラッガブル標的にアプローチする方法として、標的タンパク質分解誘導を活用しています。タンパク質分解誘導剤は、アンドラッガブル標的へのアクセスが可能であるだけでなく、細胞膜や血液脳関門を通過できる(生体バリア透過性がある)、標的への特異性に優れている、といった利点があります。私たちはこの標的タンパク質分解誘導技術によって、患者さんに革新的な治療効果をもたらすことができるよう研究開発に取り組んでいきます。
タンパク質分解誘導剤の作用機序についてはこちらをご覧ください。
私たちは、以下のケイパビリティを持っています。
- 化学合成の専門家による、タンパク質分解誘導剤を合成する技術
- 独自の標的タンパク質バインダーおよび次世代E3バインダー
- AI、ロボティクスを活用した効率的な最先端の化合物モデリング技術
- がんをはじめとした、様々な疾患領域における開発および商業化の経験および専門性
標的タンパク質分解誘導は、確立されたテクノロジープラットフォームを活用することによって、様々な応用展開の可能性を持っています。例えば、標的タンパク質を変換することにより、複数の適応症や疾患領域への展開が可能になります。また、他のテクノロジーと組み合わせることにより、特異性に優れた次世代のタンパク質分解誘導剤の創出にも取り組んでいます。
パイプライン
リードプログラムであるASP3082は、アステラスが独自に創製したKRAS G12D変異体を標的としたタンパク質分解誘導剤です。がんを引き起こす遺伝子変異の中で、KRASの変異は高頻度に発生し、その中でもKRAS G12Dは重要ながん関連遺伝子変異として知られています。現在固形がんを適応症として、第Ⅰ相臨床試験を実施しています。アステラスは、ゾスパタ®(ギルテリチニブ)などの分子標的薬の研究開発と商業化に関する高い専門性を有しています。がん患者さんに一日でも早く有効な治療法をお届けできるよう、情熱をもって研究開発に取り組んでいます。
また、アンドラッガブル標的を中心に、強固で競争力のあるパイプラインを有しています。
パートナリング
私たちは、標的タンパク質分解誘導の技術プラットフォームを最大限活用し、イノベーションを追求しています。
外部パートナーに期待するアセット、ケイパビリティ新しいタンパク質分解の技術
- 標的タンパク質分解誘導のアプローチに適した創薬標的(がん、およびがん以外)
- アンドラッガブルな標的タンパク質に対するバインダーを獲得する技術
- 新規標的タンパク分解誘導プラットフォームおよびE3バインダー
【人材】
- 最先端のサイエンスに精通し、情熱をもって革新的医薬品の研究開発にとり組める人材
Primary Focusリードからのメッセージ
Primary Focusリード(標的タンパク質分解誘導)
部門長 博士(薬学)
坂田 千夏
アンドラッガブル標的をドラッガブルに変え、患者さんおよび患者さんをケアする周囲の人たちの未来をより良いものに変えていくことが私たちの目標です。この目標を達成するために、私たちは研究、開発、製造、商業化の専門性を有するダイバーシティに富んだチームで日々革新的医薬品の創出に取り組んでいます。また、本目標を達成するためには外部の素晴らしい専門家とのコラボレーションが不可欠です。
私たちは社内外の叡智を結集し、一日でも早く、様々な病気に苦しむ患者さんへ革新的治療をお届けできるよう、研究開発に取り組んでいきます。
関連研究ユニット