- 世界で初めて承認を受けた抗CLDN18.2モノクローナル抗体 -

 アステラス製薬株式会社(本社:東京、以下「アステラス製薬」)は本日、ビロイTM点滴静注用100mg(一般名:ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え))について、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌を効能・効果として、日本において製造販売承認を取得しました。ビロイTMは、上記適応症において、世界で初めて承認を受けた抗CLDN18.2モノクローナル抗体です。

 胃がんの初期ステージの症状は他の一般的な胃関連疾患の症状と似ているため、進行期または転移期になって、初めて胃がんと診断されることがよくあります1。胃がんに対する治療は大きな進歩を遂げているものの、依然として日本で3番目に死亡率の高いがんであり、2022年に126,724人が胃がんと診断されています2

 今回の承認申請は、CLDN18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療を目的とした第III相SPOTLIGHT試験およびGLOW試験の結果に基づいています3,4。SPOTLIGHT試験では、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法(オキサリプラチン、ホリナートおよびフルオロウラシルを組み合わせた化学療法)群とプラセボ+mFOLFOX6療法群を比較しました4。GLOW試験では、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法(カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせた化学療法)群と、プラセボ+CAPOX療法群を比較しました3。どちらの試験も、ゾルベツキシマブ+化学療法(mFOLFOX6あるいはCAPOX療法)群は、主要評価項目である無増悪生存期間(Progression-Free Survival:PFS)および重要な副次評価項目である全生存期間(Overall Survival:OS)のいずれにおいても、プラセボ+化学療法群と比較して、統計的に有意な延長を示しました。ゾルベツキシマブ+化学療法群において20%以上で発生した最も発現頻度の高かった治験薬投与下の有害事象(Treatment Emergent Adverse Events:TEAE)は、悪心、嘔吐、食欲減退、好中球減少症、体重減少でした。臨床試験では、制吐薬、投与の中断、投与速度のコントロールにより副作用を管理しました3,4

SPOTLIGHT試験およびGLOW試験において、スクリーニングされた患者の約38%が、CLDN18.2陽性と判定されました3,4。75%以上の腫瘍細胞において、細胞膜がCLDN18の免疫組織化学染色で中程度~強度の染色を示す場合CLDN18.2陽性と判定され、承認された免疫組織化学染色コンパニオン診断薬(Companion diagnostics:CDx)または医療機器を用いて、十分な経験を持つ病理医または検査機関によって確認される必要があります3,4。アステラス製薬はロシュ・ダイアグノスティックスと提携しており、ビロイTMによる治療が有益と考えられるCLDN18.2陽性の胃がん患者を同定するために、ビロイTMのCDxとしてロシュ・ダイアグノスティックスが開発し、承認を取得したベンタナ OptiView CLDN18(43-14A)を使用します5。この検査は、日本でも複数の検査機関を通じて利用可能となり、順次、他の検査機関にも拡大される予定です。

 アステラス製薬は、ビロイTMという新たな治療選択肢を提供することで、アンメットメディカルニーズの高い胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの治療に貢献していきます。
 アステラス製薬は複数の国と地域の規制当局にビロイTMの承認申請を提出しており、当局で審査中です。

 本件によるアステラス製薬の通期(2024年3月期)連結業績への影響は織り込み済みです。

以上

製品情報

製品名ビロイTM点滴静注用100mg
一般名ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え)
効能・効果CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌
承認取得日2024年3月26日

 

治癒切除不能な進行・再発の胃癌について
胃がんは、世界中で5番目に多く診断されるがんです6。2020年に日本では、胃がんにより43,807人が死亡しており、3番目に死亡率が高いがんとなっています2。徴候や症状には、消化不良や胸やけ、腹部の痛みや不快感、悪心や嘔吐、下痢や便秘、食後の胃の膨満感、食欲不振、食事中に食べ物がのどに詰まる感覚などがあります1。より進行した胃がんの徴候には、原因不明の体重減少、衰弱と疲労、吐血、血便などがあります7。胃がんに関連する危険因子には、高齢、男性、家族歴、ヘリコバクター・ピロリ感染、喫煙、胃食道逆流症などがあります8。早期の胃がんは、胃に関連する一般的な疾患と症状が重なることが多いため、進行期や転移期、すなわち腫瘍の発生部位から他の組織や臓器に広がってから診断されることが多いと言われています1。転移期の患者の5年相対生存率は6.6%です9

ビロイTM(ゾルベツキシマブ)について
ビロイTM(ゾルベツキシマブ)は、開発中の膜貫通型タンパク質CLDN18.2を標的として結合するキメラIgG1モノクローナル抗体であり、化学療法との併用療法で、「CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌」を効能・効果として、日本において製造販売承認を取得しました。ビロイTMは、上記適応症において、世界で初めて承認を受けた抗CLDN18.2モノクローナル抗体です。CLDN18.2陽性は、承認されたコンパニオン診断薬、または医療機器を使用した十分な経験を持つ病理医、または検査機関によって確認される必要があります。ビロイTMは、がん細胞表面のCLDN18.2に結合することにより作用します。この結合相互作用は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)と補体依存性細胞傷害(CDC)という2つの異なる免疫系経路を活性化することにより、がん細胞死を誘導します3,4

第III相SPOTLIGHT試験について
SPOTLIGHT試験(NCT03504397)は、CLDN18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法(オキサリプラチン、ホリナート、フルオロウラシルを組み合わせた化学療法)群と、プラセボ+mFOLFOX6療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第III相試験です。この試験には、米国、英国、オーストラリア、欧州、南米、アジア(日本を含む)の215カ所の医療機関で565人の患者が登録されました。主要評価項目は、プラセボ+mFOLFOX6療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法群のPFSです。副次評価項目にはOS、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、生活の質(Quality of Life: QOL)に関するパラメーターが含まれます。SPOTLIGHT試験のデータは、2023年米国臨床腫瘍学会消化管癌シンポジウム(ASCO GI 2023)において2023年1月19日に口頭発表され、その後4月14日にLancet誌に掲載されました4

第III相GLOW試験について
GLOW試験(NCT03653507)は、CLDN18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法(カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせた療法)群と、プラセボ+CAPOX療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第III相試験です。この試験には、米国、カナダ、英国、欧州、南米、アジア(日本を含む)の166カ所の医療機関で507人の患者が登録されました。主要評価項目は、プラセボ+CAPOX療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法群のPFSです。副次評価項目には、OS、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、QOLに関するパラメーターが含まれます。GLOW試験のデータは、2023年3月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズで最初に発表され、6月3日のASCO2023の年次総会においても口頭発表され、その後7月31日にNature Medicine誌に掲載されました3

アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、世界70カ国以上で事業活動を展開している製薬企業です。最先端のバイオロジーやモダリティ/テクノロジーの組み合わせを駆使し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいます(Focus Areaアプローチ)。さらに、医療用医薬品(Rx)事業で培った強みをベースに、最先端の医療技術と異分野のパートナーの技術を融合した製品やサービス(Rx+®)の創出にも挑戦しています。アステラス製薬は、変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えていきます。アステラス製薬の詳細については、(https://www.astellas.com/jp/)をご覧ください。

注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。

参考文献
1. American Cancer Society. Signs and symptoms of stomach cancer (01-22-2021). Available at https://www.cancer.org/cancer/stomach-cancer/detection-diagnosis-staging/signs-symptoms.html. Accessed 01-09-2024.
2. Ferlay J, Ervik M, Lam F, Laversanne M, Colombet M, Mery L, Piñeros M, Znaor A, Soerjomataram I, Bray F (2024). Global Cancer Observatory: Cancer Today. Lyon, France: International Agency for Research on Cancer. Available at https://gco.iarc.fr/today. Accessed 02-06-2024
3. Shah, M.A., Shitara, K., Ajani, J.A. et al. Zolbetuximab plus CAPOX in CLDN18.2-positive gastric or gastroesophageal junction adenocarcinoma: the randomized, phase 3 GLOW trial. Nat Med (2023). https://doi.org/10.1038/s41591-023-02465-7.
4. Shitara K, et al. Zolbetuximab plus mFOLFOX6 in patients with CLDN18.2-positive, HER2-negative, untreated, locally advanced unresectable or metastatic gastric or gastro-oesophageal junction adenocarcinoma (SPOTLIGHT): a multicentre, randomised, double-blind, phase 3 trial. The Lancet. Published online April 14, 2023; S0140-6736(23)00620-7.
5. DATA ON FILE.
6. Sung H, et al. Global cancer statistics 2020: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries. CA Cancer J Clin. 2021;71(3):209-49.
7. National Cancer Institute. Gastric cancer treatment (PDQ®): patient version (08-24-2021). Available at https://www.cancer.gov/types/stomach/patient/stomach-treatment-pdq. Accessed 01-18-2024.
8. American Cancer Society. Stomach cancer risk factors (01-22-2021). Available at https://www.cancer.org/cancer/types/stomach-cancer/causes-risks-prevention/risk-factors.html. Accessed 01-09-2024.
9. National Cancer Institute. Surveillance, Epidemiology, and End Results Program. Cancer stat facts: stomach cancer. Available at https://seer.cancer.gov/statfacts/html/stomach.html. Accessed 01-16-2024.


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