- 進行性尿路上皮がん患者の一次治療を対象とした
ペムブロリズマブとの併用療法についてFDAが承認 -

 アステラス製薬株式会社(本社:東京、以下「アステラス製薬」)は、Pfizer Inc.(本社:米国ニューヨーク州、以下、「Pfizer」)*と共同で開発を進めている抗体-薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)であるPADCEV®(一般名:エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組換え))とMerck & Co., Inc.(以下「Merck」)のPD-1阻害剤KEYTRUDA®(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))の併用療法について、局所進行性または転移性尿路上皮がん(locally advanced or metastatic urothelial cancer:la/mUC)患者における一次治療として、12月15日(現地時間)、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)から適応追加に関する承認を取得しました。今回の承認により、この併用療法は、la/mUC患者の一次治療における現在の標準治療である白金製剤を含む化学療法に代わる最初の治療選択肢となります。

 今回の承認は、第III相EV-302試験(KEYNOTE-A39試験)の結果に基づくものです。治療歴のないla/mUC患者において、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法群(以下「併用療法群」)は白金製剤を含む化学療法群(以下「化学療法群」)と比較して、全生存期間(overall survival:OS)および無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の2つの主要評価項目を達成し、それぞれの中央値を約2倍に延長することが示されました。OSの中央値は、併用療法群で31.5カ月(95%信頼区間[Confidence Interval:CI]:25.4-未到達)、化学療法群で16.1カ月(95%CI:13.9-18.3)であり、死亡リスクを53%減少させました(ハザード比[Hazard Ratio:HR]=0.47, 95%CI:0.38-0.58, P<0.00001)。PFSの中央値は、併用療法群で12.5カ月(95%CI:10.4-16.6)、化学療法群で6.3カ月(95%CI:6.2-6.5)であり、併用療法群は化学療法群と比較して、がんの進行または死亡のリスクを55%減少させました(HR=0.45, 95%CI:0.38-0.54, P<0.00001)。シスプラチン適応の可否やPD-L1発現レベルなど、事前に定義したすべてのサブグループにおいて、一貫したOSおよびPFSの結果が得られました。シスプラチン適応(n=244)および不適応(n=198)のサブグループでは、死亡リスクが47%および57%減少し、がんの進行または死亡のリスクが52%および57%減少しました。また、PD-L1(n=184)およびPD-L1(n=254)高発現のサブグループでは、死亡リスクが56%および51%減少し、進行または死亡のリスクが50%および58%減少しました。

 併用療法群でみられた主な有害事象および検査値異常(全グレードでの発現率:20%以上)は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、クレアチニン増加、発疹、ブドウ糖増加、末梢性ニューロパチー、リパーゼ増加、リンパ球減少、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、ヘモグロビン減少、疲労、ナトリウム減少、リン酸塩減少、アルブミン減少、そう痒症、下痢、脱毛症、体重減少、食欲減退、尿酸増加、好中球減少、カリウム減少、ドライアイ、悪心、便秘、カリウム増加、味覚不全、尿路感染、血小板減少でした。EV-302試験の安全性は、以前にEV-103試験で報告した併用療法の結果と同様であり、新たな安全性の懸念は確認されませんでした。

 EV-302試験の結果は、2023年欧州臨床腫瘍学会で発表されました。EV-302試験は、シスプラチンを含む化学療法不適応のla/mUC患者を対象としたこの併用療法の米国での迅速承認(2023年4月に取得)の検証試験であり、シスプラチン適応の患者層への適応拡大も目的としています。また、グローバルでの承認申請用の基礎データとしても使用されます。

 アステラス製薬は、患者さんに新たな治療選択肢を提供することで、アンメットメディカルニーズの高い局所進行性または転移性尿路上皮がんの治療に一層の貢献をしていきます。

 本件によるアステラス製薬の通期(2024年3月期)連結業績への影響は織り込み済みです。

 本件は、米国において12月15日(現地時間)に対外発表しています。

以上


*12月14日(現地時間)、PfizerはSeagen Inc.(以下. Seagen)の買収を完了しました。

膀胱がんと尿路上皮がんについて
尿路上皮がんまたは膀胱がんは、尿道、膀胱、尿管、腎盂、およびその他の臓器の内側を覆う尿路上皮細胞で発生します¹。膀胱がんが周囲の臓器や筋肉に転移している場合、それは局所進行疾患と呼ばれます。がんが体の他の部分に転移した場合、それは転移性疾患と呼ばれます²。世界では年間約573,000人が膀胱がんと診断され、年間約212,000人が死亡しています³。米国では、2023年に約82,290人が膀胱がんと診断されると推定されています。尿路上皮がんは、膀胱がんの90%を占め、腎盂、尿管および尿道にもみられます²。症例の約12%がla/mUCと診断され、その予後は不良です。

EV-302試験(NCT04223856)について
EV-302試験は、治療歴のないla/mUC患者を対象として、エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用療法と化学療法を比較評価する非盲検無作為化第III相試験です。PD-L1の発現程度に関係なく、シスプラチンまたはカルボプラチンを用いた化学療法に適応の未治療la/mUC患者886人が登録されました。被験者はエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法群、または化学療法群に無作為に割り付けられました。本試験の主要評価項目は、OSと盲検下独立中央判定(Blinded independent Central Review:BICR)によるRECIST v1.1に基づくPFSです。副次評価項目には、BICRによるRECIST v1.1に基づく客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)、および安全性が含まれます。

PADCEV®(エンホルツマブ ベドチン)について
エンホルツマブ ベドチンは、ほぼ全ての尿路上皮がん細胞に発現し、細胞間の接着に関連するタンパク質であるネクチン-4を標的とするファーストインクラスのADCです。非臨床試験データから、エンホルツマブ ベドチンの抗腫瘍活性は、がん細胞上でエンホルツマブ ベドチンがネクチン-4に結合して標的細胞内に取り込まれると細胞障害性物質であるモノメチルアウリスタチンE(Monomethyl auristatin E:MMAE)が放出され、細胞増殖抑制(細胞周期停止)および細胞死(アポトーシス)が生じることによることが示唆されています

Pfizer、Merckとの提携について
Seagenとアステラス製薬は、治療歴のない転移性尿路上皮がん患者を対象に、PADCEV®(エンホルツマブ ベドチン)とMerckのKEYTRUDA®(ペムブロリズマブ)の併用療法を評価するために、臨床開発の提携契約を締結しています。既に案内の通り、2023年12月14日にPfizerはSeagenの買収を完了しました。
KEYTRUDA®はMerckの子会社であるMerck Sharp & Dohme Corp.の登録商標です。

アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、世界70カ国以上で事業活動を展開している製薬企業です。最先端のバイオロジーやモダリティ/テクノロジーの組み合わせを駆使し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいます(Focus Areaアプローチ)。さらに、医療用医薬品(Rx)事業で培った強みをベースに、最先端の医療技術と異分野のパートナーの技術を融合した製品やサービス(Rx+®)の創出にも挑戦しています。アステラス製薬は、変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えていきます。アステラス製薬の詳細については、(https://www.astellas.com/jp/)をご覧ください。

注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。

1 National Cancer Institute. What is bladder cancer? https://www.cancer.gov/types/bladder#:~:text=Types%20of%20bladder%20cancer,bladder%20cancers%20are%20urothelial%20carcinomas.
2 American Society of Clinical Oncology. Bladder cancer: introduction (12-2021). 
https://www.cancer.net/cancer-types/bladder-cancer/introduction
3 International Agency for Research on Cancer. Cancer Today: bladder globocan 2020 fact sheet (12-2020). https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/30-Bladder-fact-sheet.pdf
4 Siegel RL, Miller KD, Wagle NS, Jemal A. Cancer statistics, 2023. CA Cancer J Clin 2023;73(1):17-48.
5 National Cancer Institute. Cancer stat facts: bladder cancer. 
https://seer.cancer.gov/statfacts/html/urinb.html
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6 Challita-Eid PM, Satpayev D, Yang P, et al. Enfortumab vedotin antibody-drug conjugate targeting nectin-4 is a highly potent therapeutic agent in multiple preclinical cancer models. Cancer Res 2016;76(10):3003-13.
7 PADCEV [package insert]. Northbrook, IL: Astellas Pharma US, Inc.

 

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