- エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法群で化学療法群と比較して
死亡リスクを53%減少、全生存期間の中央値を15カ月以上延長 -
アステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:岡村 直樹、以下「アステラス製薬」)は、Seagen Inc.(以下、「Seagen」)と共同で開発を進めている抗体-薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)であるPADCEV®(一般名:エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組換え))について、治療歴のない局所進行性または転移性尿路上皮がん(locally advanced or metastatic urothelial cancer:la/mUC)患者へのエンホルツマブ ベドチンとMerck & Co., Inc.(以下「Merck」)のPD-1阻害剤KEYTRUDA®(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))との併用療法と化学療法を比較する第III相EV-302試験(KEYNOTE-A39)において、併用療法は化学療法と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(Overall Survival:OS)および無増悪生存期間(Progression-Free Survival:PFS)の延長を示しました。結果の詳細は2023年欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology:ESMO)で発表されました(抄録番号 #LBA6)。
EV-302試験では、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法群(以下、「併用療法群」)は、白金製剤+ゲムシタビンを用いた化学療法群と比較して、OSおよびPFSの2つの主要評価項目を達成しました。試験結果の概要は以下のとおりです。
- OSの中央値は、併用療法群で31.5カ月(95%信頼区間[Confidence Interval:CI]:25.4-未到達)、化学療法群で16.1カ月(95% CI:13.9-18.3)でした
- 併用療法群でOSを有意に延長し、化学療法群と比較して死亡リスクを53%減少させました(ハザード比[Hazard Rateo:HR]=0.47, 95% CI:0.38-0.58, P<0.00001)
- 独立データモニタリング委員会は、OSの中間解析において、事前に規定した有効性の基準を満たしたと判断しました
- PFSの中央値は、併用療法群で12.5カ月(95% CI:10.4-16.6)、化学療法群で6.3カ月(95% CI:6.2-6.5)でした
- 併用療法群は、化学療法群と比較して、がんの進行または死亡のリスクを55%減少させました(HR=0.45, 95% CI:0.38-0.54, P<0.00001)
- シスプラチン適応の可否やPD-L1発現レベルなど、事前に定義したすべてのサブグループおいて、一貫したOSの結果が得られました
併用療法群と関連のあるグレード3以上の有害事象(3%以上)は、斑状丘疹状皮疹、高血糖、好中球減少症、末梢性感覚ニューロパチー、下痢、貧血でした。EV-302試験における併用療法群の安全性は、以前に報告したシスプラチン不適応のla/mUC患者を対象に実施したEV-103試験と同様の結果で、新たな安全性上の問題は確認されませんでした。
副次評価項目のうち、併用療法群における客観的奏効率(Objective Response Rate:ORR)は68%(95% CI:63.1-72.1, P<0.00001)であるのに対し、化学療法群のORRは44%(95% CI:39.7-49.2)でした。併用療法群では、完全奏効は29.1%、部分奏効は38.7%の患者で認められました。一方、化学療法群では、それぞれ12.5%および32.0%でした。奏効期間(Median Duration of Response:DOR)は、併用療法群では中央値に到達せず、化学療法群では7カ月(95% CI:6.2-10.2, P<0.00001)でした。
EV-302試験の結果は、グローバルでの承認申請用の基礎データ、および米国におけるPADCEV®とKEYTRUDA®併用療法の迅速承認の検証試験データとして使用されます。この併用療法は、EV-103試験の結果に基づいて、la/mUCでシスプラチン不適応の患者における一次治療として、2023年4月に米国食品医薬品局(FDA)から迅速承認を取得しました。本試験は、尿路上皮がんやその他の固形がんの複数のステージにおいて、この併用療法を評価する広範にわたるプログラムの一部です。EV-302試験のトップライン結果は2023年9月に発表されました。
アステラス製薬は、患者さんに新たな治療選択肢を提供することで、アンメットメディカルニーズの高い局所進行性または転移性尿路上皮がんの治療に一層の貢献をしていきます。
本件は、米国と欧州において現地時間10月22日に対外発表しています。
以上
膀胱がんと尿路上皮がんについて
尿路上皮がんまたは膀胱がんは、尿道、膀胱、尿管、腎盂、およびその他の臓器の内側を覆う尿路上皮細胞で発生します1。膀胱がんが周囲の臓器や筋肉に転移している場合、それは局所進行疾患と呼ばれます。がんが体の他の部分に転移した場合、それは転移性疾患と呼ばれます2。
世界では年間約573,000人が膀胱がんと診断され、年間約212,000人が死亡しています3。米国では2023年に82,290人、欧州では年間に約200,000人、日本では年間に約24,000人が膀胱がんと診断されると推定されています4,5,6。尿路上皮がんは、膀胱で最も多く発生するがんです(90%)2。腎盂、尿管および尿道にもみられます。診断時に約12%が局所進行性または転移性尿路上皮がんとされています7。
EV-302試験(NCT04223856)について
EV-302試験は、治療歴のないla/mUC患者を対象として、エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用療法と化学療法を比較評価する非盲検無作為化第III相試験です。PD-L1の発現程度に関係なく、シスプラチンまたはカルボプラチンを用いた化学療法に適応の未治療la/mUC患者886人が登録されました。被験者はエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法群、または化学療法群に無作為に割り付けられました。本試験の主要評価項目は、OSと盲検下独立中央判定(Blinded independent Central Review:BICR)によるRECIST v1.1に基づくPFSです。副次評価項目には、BICRによるRECISTv1.1に基づくORR、および疼痛進行までの時間(Time to Pain Progression:TTPP)が含まれます。
PADCEV®(エンホルツマブ ベドチン)について
エンホルツマブ ベドチンは、ほぼ全ての尿路上皮がん細胞に発現し、細胞間の接着に関連するタンパク質であるネクチン-4を標的とするファーストインクラスのADCです8。非臨床試験データから、エンホルツマブ ベドチンの抗腫瘍活性は、がん細胞上でエンホルツマブ ベドチンがネクチン-4に結合して標的細胞内に取り込まれると細胞障害性物質であるモノメチルアウリスタチンE(Monomethyl auristatin E:MMAE)が放出され、細胞増殖抑制(細胞周期停止)および細胞死(アポトーシス)が生じることによることが示唆されています9。
Seagen、Merckとの提携について
Seagenとアステラス製薬は、治療歴のない転移性尿路上皮がん患者を対象に、PADCEV®(エンホルツマブ ベドチン)とMerckのKEYTRUDA®(ペムブロリズマブ)の併用療法を評価するために、臨床開発の提携契約を締結しています。KEYTRUDA®はMerckの子会社であるMerck Sharp & Dohme Corp.の登録商標です。
アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、世界70カ国以上で事業活動を展開している製薬企業です。最先端のバイオロジーやモダリティ/テクノロジーの組み合わせを駆使し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいます(Focus Areaアプローチ)。さらに、医療用医薬品(Rx)事業で培った強みをベースに、最先端の医療技術と異分野のパートナーの技術を融合した製品やサービス(Rx+®)の創出にも挑戦しています。アステラス製薬は、変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えていきます。アステラス製薬の詳細については、(https://www.astellas.com/jp/)をご覧ください。
注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。
1 National Cancer Institute. What is bladder cancer? https://www.cancer.gov/types/bladder#:~:text=Types%20of%20bladder%20cancer,bladder%20cancers%20are%20urothelial%20carcinomas. Accessed 08-10-2023.
2 American Society of Clinical Oncology. Bladder cancer: introduction (12-2021). https://www.cancer.net/cancer-types/bladder-cancer/introduction. Accessed 08-10-2023.
3 International Agency for Research on Cancer. Cancer Today: bladder globocan 2020 fact sheet (12-2020). https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/30-Bladder-fact-sheet.pdf. Accessed 08-10-2023.
4 Siegel RL, Miller KD, Wagle NS, Jemal A. Cancer statistics, 2023. CA Cancer J Clin 2023;73(1):17-48.
5 Cancer Information Service, Cancer Statistics in Japan. Published 2022. https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2023_data_E.pdf. Accessed September 15, 2023.
6 Bladder cancer: The forgotten cancer. Uroweb. (n.d.). https://uroweb.org/news/bladder-cancer-the-forgotten-cancer. Accessed September 15, 2023.
7 National Cancer Institute. Cancer stat facts: bladder cancer. https://seer.cancer.gov/statfacts/html/urinb.html. Accessed 08-10-2023.
8 Challita-Eid PM, Satpayev D, Yang P, et al. Enfortumab vedotin antibody-drug conjugate targeting nectin-4 is a highly potent therapeutic agent in multiple preclinical cancer models. Cancer Res 2016;76(10):3003-13.
9 PADCEV [package insert]. Northbrook, IL: Astellas Pharma US, Inc.