アステラス製薬株式会社(本社:東京、社長:畑中 好彦、以下「アステラス製薬」)は、米国の医薬品会社アヴェオ社(英名:AVEO Oncology、本社:米国マサチューセッツ州)と共同で開発を進めている、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体1、2、3阻害剤チボザニブ(一般名、英語名称:tivozanib、開発コード:ASP4130)について、転移性腎細胞がんの患者のファーストライン治療においてチボザニブがソラフェニブと比較し、安全性および忍容性を示している第3相TIVO-1試験の新規データについてお知らせします。

 

ウィーン(オーストリア)における欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2012で発表された結果は、ソラフェニブ投与患者と比較して、チボザニブ投与患者では、グレード3の有害事象及び作用機序に起因しない有害事象の発現が少なく、長期にわたって治療を継続でき、用量低減および投与中断が少なかったことを示すものでした。また同学会では、腎細胞がんにおけるチボザニブの最初のバイオマーカーデータ解析の結果、及び先頃最初の患者が登録されたTAURUS (進行性腎細胞がんにおけるチボザニブ対スニチニブ)患者選好試験のデザインも発表されました。なお、アヴェオ社はチボザニブについて米国食品医薬品局(FDA)に製造販売承認申請を9月に提出しております。

  

「抗VEGF療法の副作用の発現を低減することは、腎細胞がん治療において重要な課題となっています。これら副作用は、抗VEGF療法において用量低減や投与の中断及び中止につながっています。TIVO-1試験のデータは、チボザニブの治療によって、ソラフェニブより副作用の発生頻度が少なく、用量調整の頻度が低くなることを示しています。このことは、患者が最大用量での治療をより継続し易いことを示唆しています。」と、Cambridge University Health Partnersの研究員であるTimothy Eisen, M.D. は述べています。

 

TIVO-1は、進行性腎細胞がん患者517人を対象にチボザニブの有効性及び安全性をソラフェニブと比較したグローバル無作為第3相試験です。TIVO-1試験の結果については今年の6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)において、チボザニブがソラフェニブと比較して、全患者集団における無増悪生存期間を統計学的に有意に延長(無増悪生存期間中央値 11.9ヵ月対9.1ヵ月; p=0.042、HR=0.797)したことを報告しました。さらに、特定の全身性の治療歴がない腎細胞がん患者層においても、チボザニブはソラフェニブと比較して、統計学的に有意な無増悪生存期間の延長を示し(無増悪生存期間中央値 12.7ヵ月対9.1ヵ月; p=0.037; HR=0.75)、本患者層において無増悪生存期間の中央値が1年を超えた最初の治療薬となりました。チボザニブは進行性腎細胞がん患者のファーストライン治療薬として開発中の治験薬です。

 

演題①
タイトル:進行性/転移性腎細胞がん患者における第3相試験においてのチボザニブとソラフェニブの安全性に関する詳細な比較
日時/ポスター/会場:10月1日、午後1時~2時(中央ヨーロッパ標準時)/午後7時~8時(米国東部標準時);ポスター#795PD;ホールF2

 

治験担当医師は、チボザニブの安全性プロファイルのさらなる理解のため、チボザニブの薬剤関連有害事象をソラフェニブと比較評価しました。安全性評価の結果を以下に示します。


• 治験担当医師によるチボザニブの副作用報告によると、ソラフェニブ投与群と比較して用量低減(11.6%対42.8%、p<0.001)、投与中断(17.8%対35.4%、p<0.001)及び中止(4.2%対5.4%)の頻度が低下していました。
• チボザニブ投与群では、ソラフェニブ投与群と比較して薬剤関連有害事象の発現頻度が低下していました(67.6%対83.3%)。
• チボザニブ投与群では、ソラフェニブ投与群と比較してグレード3以上の薬剤関連有害事象の発現頻度が低下していました(36.3%対51.0%)。チボザニブ投与群では、ソラフェニブ群と比較して、血管新生阻害剤の作用機序に起因することが知られるグレード3以上の高血圧が、より高頻度で認められました(23.6%対15.2%)。一方で、チボザニブ投与群と比較して、ソラフェニブ投与群ではグレード3以上の手足症候群(1.9%対16.7%)、下痢(1.9%対5.8%)及びリパーゼの上昇(0.8%対5.8%)がより高頻度に認められました。

 

「我々は、腎細胞がんを適応症としたチボザニブ開発プログラムを総合的に進めています。TIVO-1で得られた肯定的な安全性、及び有効性データに加え、臨床医による腎細胞がん治療の最適化を手助けすることを究極の目標として、バイオマーカーの解析とチボザニブの患者選好についての探索を続けています。」と、アヴェオ社の最高メディカル責任者であるWilliam Slichenmyer, M.D., Sc.M.は述べています。「進行中のバイオマーカー探索プログラムにおける追加解析結果は、学会において将来発表する予定であり、スーテント®(スニチニブ)との比較によるTAURUS患者選好試験も現在進行中です。」

 

ESMOでは、詳細な安全性評価の結果の発表に加え、TIVO-1における薬物動態学/薬力学的評価プログラムで得られたデータも発表されています。

 

演題②
タイトル:進行性腎細胞がん患者における血圧、及び可溶性血管内皮細胞増殖因子受容体 2(sVEGFR2)に関するチボザニブの薬物動態学的/薬力学的評価
日時/ポスター/会場:10月1日、午後1時~2時(中央ヨーロッパ標準時)/午後7時~8時(米国東部標準時);ポスター#796PD;ホールF2

 

アヴェオ社により実施された腎細胞がんにおけるチボザニブの無作為プラセボ対照第2相試験、ならびにTIVO-1の患者から得られたデータを用いてチボザニブへの暴露、血圧、及びsVEGFR2の相関関係を探索する解析を実施しました。

 

解析ではチボザニブ投与患者において、ベースラインと比較して5mm Hgの拡張期血圧の中央値の上昇が認められ、またチボザニブへの暴露と相関して、sVEGFR2の低下がみられました。なお、高血圧とsVEGFRは、VEGF阻害剤の作用機序に起因する薬剤活性、及び臨床効果を示唆するバイオマーカーであることが知られています。

 

「がん領域におけるグローバル・カテゴリー・リーダーになるための我々の目標の一つは、がん患者の治療に際して用いられる診断方法に変革をもたらすようなプレシジョン・メディシンの開発です。」とアステラス製薬グローバル ディベロップメント、Medical OncologyのVice President、Stephen Eck, M.D., Ph.D. は述べています。「チボザニブのデータが示す統計的に有意な無増悪生存期間と忍容性プロファイルの組み合わせは、進行性腎細胞がんの治療における重要な進歩を示すものになると信じています。」

 

演題③
タイトル:転移性腎細胞がん治療におけるチボザニブ塩酸塩またはスニチニブの患者選好: TAURUS試験
日時/ポスター/会場:9月29日、午後1時~2時(中央ヨーロッパ標準時)/午後7時~8時(米国東部標準時);ポスター#892TiP;ホール XL

 

TAURUS試験の臨床試験デザインの概要が学会で発表されました。TAURUS試験は無作為(1:1)抽出二重盲検クロスオーバー多施設第2相試験であり、これまで全身治療を受けていない進行性腎細胞がん患者約160名において、チボザニブとスニチニブの比較を行うものです。この試験の主目的は、チボザニブとスニチニブの患者選好の比較です。

 

TAURUS試験では、最初の患者の組み入れがすでに開始されており、米国、及び西ヨーロッパ全土の各施設において患者の組み入れを継続してゆきます。

  

本件については、欧州及び米国において、現地時間10月1日に対外発表しています。

 

                                                   以上

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