アステラス製薬株式会社(本社:東京、以下「アステラス製薬」)は、地図状萎縮(Geographic Atrophy:GA)を伴う加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration:AMD)の治療薬として開発中の補体因子C5阻害剤(avacincaptad pegol(以下「ACP」)について、欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)に提出していた販売承認申請を取り下げる決定をしました。
本決定はEMAの欧州医薬品委員会(Committee for Medicinal Products for Human Use:CHMP)との議論の結果に基づきます。
アステラス製薬は、ACPがGA病変の進行速度を抑制した試験結果は臨床的に意義のある治療効果を示しており、その便益がリスクを上回るとの認識を変えていません。アステラス製薬は、ACPの臨床プロファイルに引き続き自信を持っており、GA病変の進行速度を抑制する効果が、患者さんにとって便益があると考えています。
現在、米国以外の国ではGAを伴うAMDに対して承認された治療法がありません。アステラス製薬は、欧州を含む世界中の患者さんにACPを届けるため、各国の規制当局と議論を継続し、利用可能な選択肢を検討していきます。
アステラス製薬のVice President, Head of BioPharma & Ophthalmology DevelopmentであるMarci Englishは、「アステラス製薬は、ACPの臨床プロファイルと、ACPが疾患の進行速度を抑制することで患者さんに利益をもたらす可能性に、自信を持っています。GAは進行性の重篤な疾患であり、不可逆な視覚障害や失明をもたらす可能性があります。GAに関する科学的知見と理解が深まる中、アステラス製薬を含め製薬企業は、GA患者に新たな治療選択肢を提供するために最先端の取り組みを進めています。私たちはCHMPの対応に失望していますが、ACPが米国の患者さんに大きな変化をもたらしていることを目の当たりにしており1、米国および世界中のアンメットメディカルニーズを満たすために引き続き尽力します」と述べています。
本件によるアステラス製薬の通期(2025年3月期)連結業績への影響は精査中です。
以上
avacincaptad pegol(ACP)について
ACPは、GAを伴うAMDの治療薬として開発中の補体因子C5阻害剤です。EMAにより安全性と有効性が評価されています2。ACPは、GAを伴うAMDの治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)から2023年8月に承認を取得しています3。補体系の過剰な活性化とC5タンパク質は、GAを伴うAMDの発症や悪化、視力低下に重要な影響を及ぼすと考えられています3。ACPは、C5タンパク質を標的とすることによって、網膜細胞の変性を引き起こす補体系の活性を低下させ、GAの進行を遅らせる可能性があります3。
地図状萎縮(Geographic Atrophy: GA)を伴う加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration: AMD)について
AMDは、高齢者における中等度から重度の中心視力低下の主な原因であり、患者さんの大半は両目を侵されています4。黄斑は網膜の中心部にあるわずかな領域で、中心視力をつかさどっています。AMDが進行すると、黄斑部の網膜色素上皮細胞とその下部にある血管が失われ、網膜組織が著しく薄くなったり、萎縮したりします2。GAを伴うAMDは、患者さんの視力を不可逆的に低下させます5。GAを伴うAMD患者は、グローバルで500万人以上いると推定されています6。
アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、世界70カ国以上で事業活動を展開している製薬企業です。最先端のバイオロジーやモダリティ/テクノロジーの組み合わせを駆使し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいます(Focus Areaアプローチ)。さらに、医療用医薬品(Rx)事業で培った強みをベースに、最先端の医療技術と異分野のパートナーの技術を融合した製品やサービス(Rx+®)の創出にも挑戦しています。アステラス製薬は、変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えていきます。アステラス製薬の詳細については、(https://www.astellas.com/jp/)をご覧ください。
注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。
参考文献
1. IZERVAY™ (avancincaptad pegol intravitreal solution) Prescribing Information. February 2024.
2. Jaffe, G.J., et al. C5 Inhibitor avacincaptad pegol for geographic atrophy due to age-related macular degeneration: a randomized pivotal phase 2/3 trial. Ophthalmology. 2021; 128(4):576–586.
3. Desai, D and Dugel, PU. Complement cascade inhibition in geographic atrophy: a review. Eye. 2022; 36(2):294–302.
4. Ayoub, T and Patel, N. Age-related macular degeneration. J R Soc Med. 2009; 102(2):56–61.
5. Patel, PJ, et al. Burden of illness in geographic atrophy: a study of vision-related quality of life and health care resource use. Clin Ophthalmol. 2020; 14:15–28.
6. Boyer, DS, et al. The pathophysiology of geographic atrophy secondary to age-related macular degeneration and the complement pathway as a therapeutic target. Retina. 2017; 37(5):819–835.