アステラスでは「Employer of Choice: 現在そして未来の社員に選ばれる会社」を目指し、さまざまな取り組みを進めています。将来の組織をかたちづくるための人材への投資、多様な価値観をもつ社員が心理的安全性を大切にしながら互いに高め合える環境づくり、安全な労働環境、心身ともに健康な状態の中でより高い生産性を追求できる組織風土の醸成など、全ての社員がより良い仕事ができる、環境整備に力を注いでいます。
当社の組織における価値観は、当社の行動を導く基本的な原則であり、当社の文化の基盤を成すものです。
これらの組織における価値観を日常の業務において実践するために、私たちは5つの行動原則を採用しています。これらの原則は行動に焦点を当てたもので、組織全体で効果的なパフォーマンスを実現するための要件を総合的に定義しています:
アステラスは、当社のグローバル従業員の経験が患者層と同様に多様であることを認識しています。違いを受け入れることで、全ての従業員が自身の多様な視点を持ち込み、仕事に活かすことを可能にします。これは組織の創造性を高めるだけでなく、優秀な人材の採用と定着を促進し、競争力を強化します。
エンゲージメント
一人ひとりが尊重され、その人間性や個性、才能を認め合うことで、想像や期待を超える素晴らしいアイデアを組織にもたらしてくれます。
インクルージョン
心理的安全性、エンゲージメント、エンパワーメントを生み出す一人ひとりが受け入れられ活かし合える組織を醸成すれば、質の高い・効果的な協働、問題解決、意思決定、イノベーション、最終的には「価値」創造を実現することができると信じています。日本では、社員一人ひとりの価値観や存在目的について「内省と対話」の機会を作り、一人ひとりが受け入れられ活かし合える企業文化の醸成を目指しています。米国においては、キャリア・企業文化・商業・コミュニティの側面でエンゲージメントを高める7つのEmployee Impact Group(障がい者、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、LGBTQ+、退役軍人、女性、アジア人)を展開・運営しています。
アステラスは、多様な働き方の支援と従業員の健康促進を通じて組織健全性を追求し、全従業員が身体的・精神的な健康を享受できるよう努めています。これにより、従業員がより高い生産性を追求できるようになります。全従業員が生産性と創造性を発揮し、自身の可能性を最大限に発揮できる働き方を実践することが、組織としての活力をもたらし、One Astellasとして企業成長を実現します。
~安全で健康的な職場環境を目指して~
企業活動における社員の安全確保は、経営にとって欠くことのできない要件です。働きやすい職場の提供とともに、ステークホルダーである社員に対するアステラスの大きな責任と考えています。
2005年の会社発足以来、従業員(契約社員、業務請負業者を含む)死亡事故は発生していませんが、重大災害につながりかねない事故やインシデントは少なからず発生しています。労働災害の未然防止、事故時の労働災害の最小化のために、過去からの知見を基にした活動や作業に伴うリスクの洗い出しと対応策の検討など、安全な職場を確保する取り組みを推進しています。
継続して労働安全や防災に関する情報をグループ全体で共有し、災害事例などを事業所間で活用することにより、リスク低減に継続的に努めていきます。
安全衛生行動計画
アステラスでは、安全な職場環境の維持確保、労働災害を未然防止し事故による労働災害を最小化することを目的に、安全衛生行動計画を定めています。環境および安全衛生への取り組みにおいて、アステラスが将来に目指すべき姿を統一の基準として示した環境・安全衛生ポリシーおよびガイドラインをベースに、事業場ごとに環境安全衛生マネジメントシステムを構築し、その活動を推進しています。
強度率 |
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リスクアセスメント |
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安全への取り組み
アステラスでは安全衛生、保安、防災などに関する管理システムを構築し、組織的、計画的に安全衛生管理活動を推進しています。アステラスの従業員は、すべての業務において安全を優先することが求められており、労使において確認がされています。業務請負業者の安全管理については、定期的な安全教育の実施をアステラス環境・安全衛生ガイドラインにおいて規定しており、また必要に応じて許可作業としています。更に、事業場内の業務を委託している会社に対し委託業務に関する危険・有害性情報を提供するなど、事故、トラブルを防止するための仕組みを構築し、アステラスで働くすべての作業者の安全確保に努めています。
また、専門的なスキルを持った安全衛生担当者の継続的な育成や、決められた手順を日常の行動レベルまで落とし込むための訓練も重要であるため、事業所や部門間の連携によるスキル向上や、さまざまな安全教育を充実させています。
法令により設置が義務付けられた事業所では、事業所長が長となす労使の代表者が参加する安全衛生委員会を設置し、安全衛生や安全な職場環境の維持に関する議論を目的に定期開催しています。危険源の特定、リスクアセスメント、安全衛生に関する情報の共有などを行っています。
アステラスの健康経営の取り組みが評価され、経済産業省の健康経営優良法人2024(大規模法人部門)に3年連続認定されました。
健康経営推進の重点項目(日本の取り組み)
健康支援
*1勤務はしているものの、健康問題が理由で生産性が低下している状態をいいます。
安心・安全な職場づくり
働き方改革
年間10日以上の付与者に対する年度内5日以上の確実な取得を前提に、従業員全員一人ひとりが年次有給休暇取得率70%以上(年間20日付与で14日以上)を目標とし、より一層の取得を推進していきます。
健康経営推進体制
日本でのアステラスの健康経営推進体制は、人事・コンプライアンス担当(CPO & CECO)を責任者とし、人事部(保健スタッフ含)と健康保険組合、労働組合が主体となって企画・運営しています。
実績値 | 目標値 | |||||
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大項目 | 小項目 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2023年度 | 2024年度 |
生活習慣の改善率 | 運動習慣の定着(検診の問診) | 18.9% | 26.5% | 27.4% | 28% | 30% |
従業員の生産性向上 (プレゼンティーズム) |
WHO-HPQ:世界保健機関 健康と仕事のパフォーマンスに関する調査(生産性損失割合) | 33.5% | 32.9% | 33.1% | 32% | 31% |
従業員のワークエンゲージメント | ストレスチェックにおけるワークエンゲージメント(偏差値) | 54.0 | 54.0 | 54.3 | - | 55.0 |
健康支援 | 定期健診受診率 | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% |
二次健診受診率 | 90.7% | 93.8% | 92.8% | 100% | 100% | |
特定保健指導実施率 ※任意継続被保険者・被扶養者等を含む | 65.0% | 75.0% | - | 60% | 80% | |
働き方改革 | 年次有給休暇取得率 (全社平均の数値) |
74.3% | 78.4% | 85.6% | 85% | 85% |
年次有給休暇取得率 (個人で70%以上取得している人の比率) |
66.3% | 69.2% | 71.1% | 100% | 100% |
<参考①>健康経営推進の取り組みによる成果(数値)
<参考②>アステラス健康経営の戦略マップ
健康経営の戦略マップは、企業が健康経営を実施するための計画書です。下の図をクリック(タップ)して、拡大してご覧ください。
2023年度は、戦略マップにある「生活習慣改善プログラム(禁煙対策含む)」「健康増進施策(メンタル含む)」「ハラスメント対策」「過重労働対策」「有給休暇取得推進」を注力項目として、具体的な施策を推進しました。施策内容の詳細や成果については、2023年度 具体的な施策と結果をご覧ください。
ワークライフバランス
多様な労働時間制度
アステラス製薬では、社員一人ひとりの役割と成果に基づく評価が基本であり、職務に応じてスーパーフレックスタイム制度、裁量労働制度など、多様な働き方を認める労働時間制度を導入しています。
2020年度4月からアステラス製薬および国内グループ会社ではコアタイムを廃止し、フレックスタイム制度からスーパーフレックスタイム制度に移行、2020年11月からはMR職にもスーパーフレックスタイム制度を導入しました。
子育て支援の取り組み
少子化が進行するなか、社会全体で子育て家庭を応援し、子どもを生み育てやすい環境づくりを進めるため、企業に対しても仕事と子育ての調和への取り組みが求められています。
アステラス製薬は、2007年、2012年、2014年および2018年に次世代育成支援対策推進法に基づく基準適合一般企業として認定を受け、くるみんマークを取得し、2019年にはプラチナくるみんも取得しました。
子育て支援の取り組みとして、産前・産後や育児休業者の復職を容易にするため、希望者に対して休職中の会社情報の提供や自己啓発の機会提供のほか、新制度の周知や利用促進などを目的とした復職支援施策を実施するなど、コミュニケーションを促進するための対策を推進しています。
また、ベビーシッター派遣会社との法人契約や利用時の補助、育児休業復職時の託児費用補助などの支援策に加え、育児短時間勤務制度の期間延長や、在宅勤務制度、MR職の勤務地限定制度の導入など、さまざまな子育て支援制度を導入しています。
女性の活躍の推進
人材の多様性には、人種、国籍、性別、年齢等いろいろな視点があり、国や地域の状況によって課題はさまざまです。日本では性別による多様性が十分ではないと認識し、「女性の活躍」を推進することを出発点に活動を開始しました。2007年度に社長直轄プロジェクトとしてWIND(Women's Innovative Network for Diversity)プロジェクトを発足し、職場・上司・女性の意識や行動の変革を促進していく「チェンジ・マネジメント」と、業務プロセスや人事制度の仕組み・運用などの「枠組み改革」の両方を同時に推進してきました。全てのポジション・グレードにおいて、アステラスで働く全ての社員がいきいきとやりがいをもって働き、ジェンダーに関わらず活躍している状態を目指し、多様な人材の能力発揮につなげるための課題を解決していくことが、アステラス全体の競争力強化につながると考え、今後も取り組みを推進していきます。
2014年3月には、これまでの取組みが評価され、経済産業省が表彰する「ダイバーシティ経営企業100選」に選出されました。
2016年および2019年の3月には、女性活躍推進に優れた上場企業として、経済産業省および東京証券取引所より「なでしこ銘柄」に選定されました。
また、2024年3月末時点での取締役における女性比率は46%、アステラス国内の女性社員の割合は32%、経営基幹職に占める女性社員の割合は18%でした。
女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画
全てのポジション・グレードにおいて、アステラスで働く全ての社員が、いきいきとやりがいをもって働き、ジェンダーに関わらず活躍している状態を目指すため、以下の通り行動計画を策定します。
目標①:経営基幹職に占める女性割合を20%以上とする(2030年度までに30%を目指す)
目標②:男性の育児休暇・休業取得率を100%にする
経団連30% Challengeへの賛同
アステラスは、経団連が呼び掛ける「2030年30%へのチャレンジ」に賛同しています。
「2030年30%へのチャレンジ」は、2020年11月に経団連が公表した「。新成長戦略」において掲げられている「多様な人々の活躍推進」のうち、「2030 年までに役員に占める女性比率を30%以上にする」という目標を推進するための取り組みです。
当社は、これまでも女性活躍推進に取り組んでいますが「2030年30%へのチャレンジ」へ賛同することで、さらなるダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを推進し、企業価値向上を目指してまいります。
経団連 「2030年30%へのチャレンジ」
グリーンサプライ支援室
アステラスは、障がい者がその能力や適性に応じて、自立した日常生活や社会生活を営むことができる社会の実現に向けて活躍できる場を提供することが自らの社会的責任のひとつであると認識しており、各種制度や就労環境の整備を行いながら、障がい者雇用の促進に努めています。
具体的な取り組みとしては、2011年4月にグリーンサプライ支援室を初めてつくば研究センター内に開設し、2014年10月には焼津製剤研究センターに、2016年4月には本社に3番目の拠点としてグリーンサプライ支援室を開設しました。
ここで働く「グリーンスタッフ」と呼ばれる障がいのある社員が、それぞれの障がい特性や事業場の特性に応じ、機密文書の回収・処理業務、緑化維持管理や花卉の栽培、従業員のユニフォーム・靴のクリーニングや清掃業務、またリユース品の利用促進に向けた活動等を日々行っています。その特性に応じた職務の開発と提供を行いながら、「グリーンスタッフ」の皆さんが活躍できる環境を整え、各人の自立に向けた取り組みを進めています。
また、2013年度より、一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE)に参画し、「企業の成長に資する、新たな障がい者雇用のモデルを社会とともに確立する」ことを目指しています。
障がい者雇用率の推移
Main Category | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
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雇用率 | 2.15% | 2.18% | 2.31% | 2.30% | 2.11% | 2.37% | 2.49% | 2.78% | 2.73% |
労働組合との関係
アステラス製薬の社員は、アステラス労働組合を構成し、上部団体として医薬化粧品産業労働組合連合会に加盟しています。2024年3月31日現在における組合員数は2,861名です。労使協議の場として経営協議会や職場協議会、(安全)衛生委員会などがあり、それぞれの立場からの提案・意見交換を進め、労使双方のテーマの理解と認識を共有しています。
健康管理
健康診断
健康診断の結果、2023年度はアステラス国内グループ全体の20.1%の社員が再検査・精密検査が必要であると診断され、そのうち再検査未受診者は6.4%でした。今後も健康リスク者のフォローを強化し、再検査などの早期で確実な受診を促していきます。なお、健康保険組合が推進する健康増進策として、ウォーキングやダイエット、ライフスタイル改善へのチャレンジを促すプログラムが毎年行われており、2023年度は2,267名が実施しました。
メンタルヘルスケア
職場や生活でのストレスなど、さまざまな原因で引き起こされるメンタルヘルスケアの問題については、社内精神科医や社外EAP※1を利用した健康相談の体制を構築しています。
2008年より、厚労省『職業性ストレス簡易調査票』に基づいた心の健康診断を実施しています。.
2016年からは法令に基づくストレスチェックを実施し、調査結果を考慮した職場の環境調整などを行っています。
*1従業員支援プログラム(Employee Assistance Program)。メンタル面から社員を支援するプログラム
長時間労働の防止
長時間労働は身体的、精神的な健康障害に結びつくと言われています。アステラスの過重労働対策は、時間管理システムにより適切に把握しています。2015年より、社員一人ひとりの豊かな生活と生産性・創造性の高い働き方の両立を目指して「働き方改革」に取り組んでおり、様々な施策を推進しています。
ボランティア活動支援
社員が自発的に取り組むボランティア活動を支援する制度を設けています。
ボランティア休暇制度は、社会福祉、自然環境保護、災害援助、国際協力活動などの活動のための技術・知識取得などを支援するため、年間5日を限度に休暇を取得できます。
また、ボランティア休業制度は、長期のボランティア活動を支援する制度で、最長3年までの休業が認められます。
骨髄ドナー特別休暇制度は、社員の骨髄提供者としての自発的意思を尊重し支援するための制度であり、骨髄登録や骨髄提供を行う際に必要な期間を休暇とする制度です。
2010年度に開始したアステラス全社のボランティア活動の取り組みであるChanging Tomorrow Day により、社員のボランティア活動に対する意識が高まっています。
傷病休業時の制度と補償
ライフイベントの中でも、思いがけなく起こる病気やけがは、短期間の場合は年次有給休暇で対応できますが、長期の療養が必要になる場合にも安心できる制度が必要となります。
特別療養休暇制度は、1ヶ月以上の療養後も継続して入院・自宅療養を必要とする場合、1ヶ月が経過した翌日より操業日30日を限度として休暇が取得できる制度であり、2023年度は24名の利用がありました。
なお、特別療養休暇の期間を過ぎた場合は、共済会からの療養給付、健康保険組合からの傷病手当金やその後の団体長期障害所得補償保険などが用意されています。
また、治療と仕事の両立支援として、特別療養休暇の分割取得や時短勤務制度等を2018年より導入し、社員が病気の治療と仕事を柔軟に両立し、安心して働くことのできる環境整備を行っています。
アステラスの報酬制度では、当社のミッションと企業価値向上に対する社員の貢献に対して報酬を決定しています。- この報酬制度では私たちがビジネスを展開している地域(もしくは「マーケット」)の、すべての社員が確実にその各地域(もしくは「マーケット」)における最低賃金水準を上回る生活賃金を得られるようにするための取り組みが含まれています。
アステラスは、ビジネスを展開している各地域(もしくは「マーケット」)の賃金水準を毎年調査し、最低賃金を確実に上回る賃金水準および社員の報酬を設定しています。各地域(もしくは「マーケット」)で競争力のある給与を支給するための取り組みを継続し、すべての社員(従業員)に生活賃金を上回る賃金を提供することを目指しています。
同一労働同一賃金の実現
アステラスでは、私たちのミッションと企業価値への貢献に対して報酬を決定しています。- 同一労働同一賃金を原則としています
アステラスでは、性別、ジェンダーアイデンティティ、マイノリティグループ(人種、性的指向、障がいなど)よって社員の選考や賃金の決定に影響を及ぼすことはなく、グローバルですべての社員に平等な機会を提供するように取り組んでいます。
私たちは、今後もダイバーシティ、公平性、インクルージョン(受容・包括)を満たす職場環境をグローバルで確保するとともに、性別や人種、その他のマイノリティグループにかかわらない、同一労働同一賃金の取り組みを継続していきます。
アステラスは2011年に国連グローバルコンパクト (UNGC)の支持を表明しました。また、2023年からスタートした “Forward Faster”*にもいち早く参加しています。
*Forward Faster
UNGC主導のイニシアティブ。持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、5つのカテゴリー(ジェンダー平等、気候変動対策、生活賃金、水レジリエンス、ファイナンスと投資)で合計9つの目標を設定している。