アステラスは、健全な地球環境の維持は持続可能な社会の構築の重要な課題であると同時に、事業活動を継続する上での重要な課題であると考えています。アステラスが持続可能な成長を遂げるためには、気候変動問題や環境汚染、廃棄物処理など地域環境に影響する課題に対して、社会が企業に求める責任を果たす必要があります。長期的な時間軸とグローバルな視点から企業のあるべき姿を描くとともに、地域社会における課題に対しても継続的に取り組み、地球環境と調和した企業活動を進めていきます。
アステラスは、環境・安全衛生ガイドラインの主要な項目についての短期的・中期的な活動目標として「環境行動計画」を設定し、数値目標の達成に向けた取り組みを行っています。環境行動計画は、前年度の進捗状況や社会情勢などを踏まえた定期的な見直しにより新たな項目の追加やさらに高い目標への変更などを行うローリング方式で運用しています。
気候変動に関する環境行動計画は、2016年のパリ協定に沿った削減目標を企業が設定することを推奨するScience Based Targetsイニシアチブ(SBT, 科学的知見と整合した削減目標)よりSBT認証(2018年11月)を受け運用していましたが、1.5℃目標(スコープ1+2)およびwell-below 2℃目標(スコープ3)を達成するためにGHG削減目標を見直しました。2023年1月にSBTイニシアチブより科学的根拠に基づいた目標として認められたため、新たな行動計画(気候変動対策)を推進することにしました。資源対策および廃棄物管理の環境行動計画は、継続して良好な管理が出来ているため、2021年度よりさらに高い目標を設定し、継続した取り組みを推進しています。2024年度の実績は以下の通りです。
環境目標についての2024年度実績(概要)
項目 | 目標 | 2024年度実績 | |
---|---|---|---|
気候変動対策 | 温室効果ガスの排出量(スコープ1+2)を2030年度までに63%削減する(基準年:2015年度)「1.5℃目標」 (基準年度の排出量:201千トン) |
基準年度比:46%減 | |
(排出量:108千トン) | |||
温室効果ガスの排出量(スコープ3)を2030年度までに37.5%削減する(基準年:2015年度)「well-below 2℃目標」 | 基準年度比:7%減 (排出量:1,276千トン) |
||
資源対策 | 水資源生産性(WRP)*1を2025年度末までに、2016年度実績から20%程度向上する。 | 基準年度比:86%向上 | |
廃棄物管理 |
廃棄物発生量原単位*2を2025年度末までに、2016年度実績から10%程度改善する。 | 基準年度比:45%改善 | |
生物多様性 | 生物多様性指数を2025年度までに、2005年度の4倍に向上させる。 | 基準年度比:6.7倍 |
スコープ3 GHG関連のデータおよび生物多様性指数は8月下旬開示予定です。
*1WRP = 売上収益(十億円)/水資源投入量(千m3)(対象:国内外の研究、生産サイト)
*2廃棄物発生量原単位 = 廃棄物発生量(トン)/売上収益(十億円)(対象:国内外の研究、生産サイト)
天災や偶発的な事故により引き起こされる緊急事態による環境への影響や災害を防止し、被害を最小化するため、優先度の高いリスクについて具体的な対応手順を作成しています。また、定期的な教育・訓練を実施し、その有効性や連絡体制、役割分担の再確認・再検討を進め、環境リスクの低減に努めています。
特に河川の汚染、公共下水処理場のトラブルにつながる水域への有害物質の流出は、地域社会に対して重大な影響をもたらす恐れがあります。事故・緊急事態の発生に備え、バックアップ設備の設置など、環境汚染を防止できるシステムを計画的に整備し、汚染リスクの低減に努めています。また、事故やトラブルを回避するために、排水処理設備の運転管理の適正化と最終排水口での監視・測定の強化に努め、関連する排水基準への適合性を確認しています。
2024年度、排水基準を超えた事象はありませんでした。なお、過去5年間には自治体と結ぶ公害防止協定値を超える事象が2件ありましたが、行政への報告を行い指導に基づいた対処をしています。
過去5年間において、環境関連の事故はありません。なお、フロン類の漏洩排出については、CO2換算量をページ「環境への取り組み」で開示しています。過去5年間の環境関連の罰金・苦情の発生状況は、以下のとおりです。いずれのケースも適切に対応を行い、再発防止策を講じました。
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|---|---|
罰金 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1*1 |
苦情 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1*2 |
*1外部委託した水質試験において委託項目の一つが実施されていなかったことが判明し145 USDの罰金を支払いました。
*2消防設備点検時のサイレン音(非常放送)について、近隣住民より苦情連絡がありました。
過去5年間の土壌調査の結果、新たに汚染が発見された事例はありませんでした。
気候変動対策
気候変動はその緩和と適応に国、自治体、企業、市民などの積極的な参加が求められています。アステラスは、気候変動が持続可能な企業活動の制限要因になると認識し、経営の重要課題のひとつに位置づけて取り組んでいます。
アステラスは、気候変動対策への長期のコミットメントとして、スコープ1+2およびスコープ3ともに、2015年を基準に2050年までにGHG排出量90%の削減と10%の残余排出量の中和化によるネットゼロの達成を目指すことを決めました。なお、2030年までのGHG排出量削減目標についてSBT(Science Based Targets)イニシアチブから承認を取得しています。
気候変動を経営課題として取り組む際の指標は、パリ協定における「1.5℃目標」をスコープ1+2、「well-below 2℃目標(2℃を十分に下回る目標)」をスコープ3に採用しています。
環境行動計画(気候変動対策)<2023年1月SBT再認証>
行動計画(SBT)の進捗状況
GHGプロトコルに基づき算出したSBT目標の進捗は次の通りです。
環境行動計画の進捗(スコープ1+2)
環境行動計画の進捗(スコープ3)
2015年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|---|
スコープ3 GHG排出量(t-CO2e) | 1,378,972 | 893,617 | 1,121,350 | 1,276,323 |
2015年度比(%) | -- | -35% | -19% | -7% |
エリア別GHG排出量の推移
(単位:トン)
2015年度 | 構成比 (%) | 2022年度 | 構成比 (%) | 2023年度 | 構成比 (%) | 2024年度 | 構成比 (%) | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日本 | 154,447 | 77 | 89,709 | 78 | 92,325 | 77 | 82,224 | 76 | ||
スコープ1 | 56,674 | 44,253 | 40,601 | 35,558 | ||||||
スコープ2 | 97,774 | 45,456 | 51,724 | 46,666 | ||||||
海外 | 46,506 | 23 | 25,815 | 22 | 27,846 | 23 | 25,609 | 24 | ||
スコープ1 | 28,082 | 14,798 | 16,523 | 16,654 | ||||||
スコープ2 | 18,424 | 11,017 | 11,323 | 8,955 | ||||||
グローバル | 200,953 | - | 115,524 | - | 120,171 | - | 107,833 | - | ||
スコープ1 | 84,756 | 59,051 | 57,124 | 52,212 | ||||||
スコープ2 | 116,197 | 56,473 | 63,047 | 55,621 |
非エネルギー起源GHG排出量は全体排出量の5%未満のため、開示データに含まれていません。
エリアごとの詳細なデータはEHS報告書2025をご覧ください。
GHG排出量の削減には、中期的にグループ全体で取り組むマネジメントが必要です。生産部門や研究部門、営業部門、オフィス部門で気候変動の緩和に向けたさまざまな取り組みを行っています。
ハード面では、高効率機器の導入や燃料転換などはエネルギー使用に伴い発生するGHG排出削減に大きな効果が期待できます。ソフト面では、日々の活動のなかでの工夫や社員全員の参加による省エネルギー活動も大切な取り組みです。各事業所では、これらハード面・ソフト面の取り組みを進めています。
2024年度は、各事業所での再生可能エネルギー利用推進(太陽光パネル設置など)、省エネルギー対策(冷凍機・空調関連の省エネルギー機器への更新、LED照明の導入など)を中心に、約22億円の投資が完了し、GHG削減効果として2,905トンとなりました。
再生可能エネルギー導入などの投資計画について、継続的な検討を行うこととしています。
アステラスは、サプライチェーン全体での排出(スコープ3)の把握にも努めています。スコープ3の重要な排出源からのGHG排出についてもSBTを設定し、その削減に取り組んでいます。また、生産委託先をはじめ取引先にもGHG排出削減に向けた取り組みに賛同・協力いただく働きかけを行っています。スコープ3 GHG排出量の詳細は、間接的な関わりによるGHG排出(スコープ3)に掲載しています。
アステラスの研究および生産拠点では、燃焼時に発生するGHGが少ない都市ガスやLPG、LNG(液化天然ガス)を燃料としたボイラーを使用しています。GHG排出削減のほか、大気汚染物質であるSOxの削減にも貢献しています。
エネルギーの使用状況を細かく把握することは、新たな施策立案に有用です。「見える化」を実現するエネルギー監視システムを、各事業所に導入しています。
アステラスは、2008年度から営業用車両の利用に伴うGHG排出量の削減に取り組んでいます。各地域で、環境負荷の小さな車両(例:ハイブリッド車、電気自動車)への切り替えを継続的に進めています。ハイブリッド車の導入率が高い日本およびアメリカでは、車両台数に対するGHG排出量が他の地域よりも抑制されています。 営業車の利用に伴うGHG排出量は、スコープ1(燃料使用)およびスコープ2(電気自動車での電気使用量)として報告しています。
(単位:トン)
2015年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|---|
営業車利用による排出量 | 28,725 | 12,378 | 13,380 | 13,323 |
実燃料使用量を把握できない場合は、燃料購入費用、社用車・自家用車(営業活動に利用している場合)での平均的な年間燃料使用量などからCO2排出量を推定算出しています。アジア・オセアニア(一部を除く)のデータは含みません。
アステラスでは第19期(2024年3月期)から、監査等委員でない取締役(社外取締役を除く)の賞与(短期インセンティブ報酬)の業績評価指標に、新たにサステナビリティ指標を組み入れました。経営戦略とインセンティブ報酬を連動させることで、着実に環境への取り組みを推進していくことを目的としています。
役員報酬制度の詳細は、第20期定時株主総会招集ご通知 65頁をご参照ください。。
再生可能エネルギーの利用は、最も有効な気候変動対策の一つです。アステラスは、太陽光や風力発電、バイオマスボイラーなどの設備導入、または再生可能エネルギー由来の電気の購入によるGHG排出抑制に取り組んでいます。ネットゼロの達成の助けとなる再生可能エネルギーの利用を拡げる取り組みを継続していきます。
2015年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|---|
総エネルギー使用量(GWh) | 1,091 | 570 | 558 | 495 |
再生可能エネルギー由来エネルギー使用量(GWh) | 58 | 108 | 104 | 93 |
再エネ率(%) | 5 | 19 | 19 | 19 |
総電力量(GWh) | 279 | 227 | 229 | 208 |
再生可能エネルギー由来電力量(GWh) |
48 | 95 | 91 | 80 |
再エネ率(%) | 17 | 42 | 40 | 39 |
2020年4月から茨城県内の3つの事業場(つくば事業場、つくば東光台事業場、および高萩事業場)が購入する全ての電力を、水力100%とみなされる電力料金プラン(※)の電力に切り替えました。(2024年の削減インパクトは、温室効果ガス約26,000トンに相当。)
また、日本以外でも可能なエリアから再生可能エネルギー由来の電源への切り替えを推進しており、再生エネルギーの利用が可能な機会の探索は今後も継続します。今後、再生可能エネルギー利用についての目標を策定する検討を進めています。
※東京電力エナジーパートナー株式会社が提供する「アクアプレミアム」
アステラスは、経団連の要請に基づいて日本製薬団体連合会(日薬連)が策定した「カーボンニュートラル行動計画 *」に参加しています。2023年2月に、事業を通じて排出される温室効果ガスを2050年までに実質ゼロにすることを目指す方針を決定しています。
*「2050 年 CO₂排出量ネットゼロ」を長期ビジョンとし、「CO₂排出量を 2030 年度に 2013 年度比で、46%削減(研究所・工場・オフィス・営業車両)」をフェーズⅡ目標(2030 年目標)とする
エネルギー使用量の状況
2024年度のエネルギー使用量は、496 GWh であり前年より11%(62 GWh)減少しました。各地域とも空調機器の運転による電気の使用量が多いため、エネルギー使用量に占める電気の割合が高くなっています。
継続的な省エネルギー活動、高効率機器の導入などによりエネルギー使用量の削減に努めています。
エネルギー使用量の内訳については、ESGデータをご覧ください。
(単位:MWh)
2021 年度 |
構成比 (%) |
2022 年度 |
構成比 (%) |
2023 年度 |
構成比 (%) |
2024 年度 |
構成比 (%) |
||
グローバル | 800,563 | - | 569,850 | - | 558,039 | - | 495,653 | - | |
購入電力 (うち再エネ由来分 |
277,366 46,454 |
39 | 225,526 93,048 |
40 | 226,691 88,530 |
41 | 205,352 77,433 ) |
41 | |
気体燃料 | 382,356 | 48 | 267,124 | 47 | 252,061 | 45 | 210,279 | 42 | |
液体燃料 | 120,928 | 10 | 53,894 | 9 | 56,069 | 10 | 56,777 | 11 | |
購入熱 | 8,005 | 2 | 8,722 | 2 | 8,244 | 1 | 7,790 | 2 | |
自然エネルギー | 12,009 | 2 | 14,584 | 3 | 14,974 | 3 | 15,455 | 3 |
(単位:MWh)
2021 年度 |
構成比 (%) |
2022 年度 |
構成比 (%) |
2023 年度 |
構成比 (%) |
2024 年度 |
構成比 (%) |
||
日本 | 421,691 | - | 407,447 | - | 387,641 | - | 349,301 | - | |
購入電力 (再エネ由来分 |
167,760 66,993 |
40 | 167,420 64,049 |
41 | 167,043 60,576 |
43 | 160,803 59,281 ) |
46 | |
気体燃料 | 241,391 | 57 | 226,994 | 56 | 209,395 | 54 | 177,842 | 51 | |
液体燃料 | 12,139 | 3 | 12,903 | 3 | 10,969 | 3 | 9,795 | 3 | |
購入熱 | 349 | 0.1 | 82 | 0.0 | 60 | 0.0 | 4 | 0.0 | |
自然エネルギー | 52 | 0.0 | 48 | 0.0 | 174 | 0.0 | 858 | 0.2 |
(単位:MWh)
2021 年度 |
構成比 (%) |
2022 年度 |
構成比 (%) |
2023 年度 |
構成比 (%) |
2024 年度 |
構成比 (%) |
||
海外 | 159,741 | - | 162,403 | - | 179,398 | - | 146,352 | - | |
購入電力 (再エネ由来分 |
56,335 28,889 |
35 | 58,107 28,999 |
36 | 59,648 27,954 |
35 | 44,549 18,153 ) |
30 | |
気体燃料 | 36,652 | 23 | 40,130 | 25 | 42,665 | 25 | 32,437 | 22 | |
液体燃料 | 43,635 | 27 | 40,991 | 25 | 45,100 | 26 | 46,982 | 32 | |
購入熱 | 10,031 | 6 | 8,639 | 5 | 8,184 | 5 | 7,786 | 5 | |
自然エネルギー | 13,088 | 8 | 14,536 | 9 | 14,800 | 9 | 14,597 | 10 |
生物多様性への取り組み
アステラスは、生物の多様なつながりがもたらす恩恵に感謝し、すべての事業領域で事業活動が生態系に及ぼす影響を把握し、その低減に努めることにより、生物多様性の維持・保全に積極的に貢献します。また、生物多様性が維持・保全され、生態系からの恵みを持続可能な状態で利用できる自然と共生した社会づくりに貢献します。経団連の「生物多様性宣言」に賛同し、経団連自然保護基金に寄付を行っています。
生物多様性の劣化をもたらす危機を環境汚染、資源消費、気候変動に分類し、アステラスの生物多様性への影響を評価する指標としています。
項目ごとの環境負荷量の基準年度との相対値に指標ウエイトを乗じた値を「生物多様性負荷指数」とし、すべての項目の生物多様性負荷指数の合計値で評価年度連結売上高を除した値を「生物多様性指数」と設定しました。この指数を基準年度と比較することで、改善の程度を把握しています。
生物多様性指数を2025年度までに、2005年度の4倍に向上させる(グローバル)
2023年度の生物多様性指数は、2005年度の4.9倍となりました。気候変動に関する行動計画の対象範囲拡大に合わせ、生物多様性指数の算出に用いる各指標の対象範囲も拡大しました。過去の指標から再算出したものが、次のグラフです。引き続き、現在の活動を継続していきます。
地域を超えて事業が環境に与える影響を最小化することで、生物多様性の劣化を抑制し、事業が持続可能であり続ける環境が実現すると考えています。
生物多様性指数の推移
生物多様性負荷指数と売上収益の推移
資源循環に向けた取り組み
持続可能な資源の利用は事業活動を継続する上での必須要件であり、循環型社会の構築に向けて積極的に参画していく必要があると認識しています。循環型社会に貢献する取り組みとして、水資源の有効な利用、廃棄物の循環利用(再使用、再生利用、熱回収)に環境行動計画を定め活動を推進しています。
水資源の有効利用
水資源の有効利用は、生物多様性に与える影響を測る指標の一つです。アステラスは、水資源と経済活動との関連を「水資源生産性」という指標で評価し、その改善に取り組んでいます。2024年度の水資源生産性は、基準年度(2016年度)の86%の向上となりました。
水資源投入量と売上収益の推移についてはESGデータをご参照ください
水のリサイクルおよび使用量削減の取り組み
アステラスの操業では、上水・工業用水および地下水から取水した水のみを利用しています。操業で使用した水は排水基準に応じて処理をし、水環境へ戻しています。また、プロセス排水の最小化などを行いながら、継続して水使用量削減に取り組んでいます。
リスクの評価
アステラスの研究・生産活動では水の利用が欠かせません。各事業所では水の利用に必要な許可を行政から取得し、認められた排水基準を満足するよう処理をしたうえで排水しています。
また、アステラスでは、World Resources Instituteが提供するAqueduct を用いて、工場などを置く操業地域固有の水リスクを分析しています。
現在、グローバルでの活動において枯渇が懸念される地域での水利用はありません。しかし将来、気候変動などの環境変化で水リスクが顕在化する可能性もあることから、リスク分析を行いつつ、できるだけ水への依存の程度を小さくしておくことが事業継続にも有利であると考えています。
廃棄物管理
アステラスでは、廃棄物の積極的なリサイクルやリユースによって、最終処分量を限りなくゼロに近づける取り組みを推進しています。また、廃棄物発生量と経済活動との関連を「廃棄物発生量原単位」という指標で評価し、その改善に向けた取り組みを行っています。
2024年度の廃棄物発生原単位は、基準年度(2016年度)から45%改善しています。
廃棄物発生量と売上収益の推移については、ESGデータをご覧ください。
バリューチェーンでの廃棄物管理
研究所や工場で発生する有害廃棄物による環境汚染や、廃棄物の不法投棄を防止することも廃棄物管理では重要です。これらを防止するために適切な処分方法を検討するとともに、委託先での処理が適切に行われていることを定期的な現地調査により確認しています。
高濃度ポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物の処理
アステラスでは、保管していた高濃度PCB含有機器などの無害化処理を計画的に行い、2023年度中にすべてのPCB廃棄物の処理を完了しました。
汚染予防に向けた取り組み
アステラスでは、地球環境汚染予防活動を推進しています。大気・水質における主要な環境管理項目について、法規制や協定値よりも厳しい自主管理値を設定し管理しています。また、化学物質の大気排出量の自主的な削減活動を推進しています。
VOC排出量の削減
アステラスは、生産や研究で使用する溶媒類に起因するVOC排出量の削減に自主的な数値目標を設定し、排出削減に取り組んでいます。また、化学物質による環境汚染、労働災害、健康被害を未然に防止する手段として、リスクの高い化学物質を使用しない製造方法の開発など、社員や地域社会、さらには地球環境への影響を可能な限り少なくする努力を継続しています。
NOx排出量の削減
NOx(窒素酸化物)の大気排出量の削減のため、アステラスでは気体燃料(都市ガス、LNG、LPG)を使用するボイラーを導入しています。日本の全事業拠点からのNOx排出量は、下表の通りです。2024年度の日本以外の生産拠点からのNOx排出量は、3トンでした。
排出量の推移
排出量の推移については、ESGデータをご覧ください。
アステラスは、水環境への環境負荷の大きさを日本はBOD負荷量、海外はCOD負荷量として把握し情報公開しています。日本のBOD負荷量は8トンとなり、前年度より11%増加しました。日本以外のCOD負荷量は14トンでした。
製造工程から水環境中に排出された化学物質は生態系に悪影響を与える可能性があるため、環境中への排出量を可能な限り低減する手段を研究・開発の段階から検討しています。また、自社で創製する将来の医薬品候補物質については自然界での分解の容易性(生分解性)を評価するなど、医薬品が生態系に及ぼす影響を確認しています。
BOD負荷量と排水量の推移については、ESGデータをご覧ください。
PRTRシステムの詳細
PRTR法では、人への有害性があり、環境中に広く存在すると認められる物質が対象として指定されています。この法律は、自社の排出量や移動量の位置づけを確認し、自主的な化学物質管理活動の評価・改善に結びつけることが主な目的です。PRTR法指定物質のうち2023年度における届け出対象物質の移動・排出状況は下表のとおりでした。なお、2023年度は、対象となる化学物質の環境への合計排出量は1トンとなり、2019年度以降、僅少な排出量を維持しています。
PRTR:日本の「特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善に関する法律(PRTR法)」による指定化学物質を指す。Pollutant Release and Transfer Register Lawの略。
2023年度のPRTR法による届出対象物質の集計結果
(対象:日本の製造施設と研究開発施設)
(トン) | ||||||
物質名 | 製造量 使用量 | 排出量 | 移動量 | |||
大気 | 水域 | 土壌 | 廃棄物 | 下水道 | ||
クロロホルム | 10.770 | 0.538 | 0.000 | 0.000 | 10.231 | 0.000 |
N, N-ジメチルホルムアミド | 1.906 | 0.000 | 0.000 | 0.000 | 1.894 | 0.000 |
ヘキサン | 2.203 | 0.110 | 0.000 | 0.000 | 2.093 | 0.000 |
(トン) | ||||||
物質名 | 製造量 使用量 | 排出量 | 移動量 | |||
大気 | 水域 | 土壌 | 廃棄物 | 下水道 | ||
ヘプタン | 13.806 | 0.155 | 0.000 | 0.000 | 13.651 | 0.000 |
N-メチル-2ピロリドン | 21.200 | 0.000 | 0.000 | 0.000 | 21.200 | 0.000 |
2023年4月1日施行のPRTR法施行令で示された対象物質リストを基に集計
製品が環境へ及ぼす影響と対応
アステラスではハイドロフルオロカーボン(HFC)を充填剤に使用している製品はありません。
アステラスの製品は、医療機関を通じて患者さんに処方され、使用されたあとの包装材料が病院、薬局、一般家庭から廃棄されます。一般家庭からは主に錠剤やカプセルに使用されるブリスター包装(プラスチック)が廃棄されます。病院、薬局からはブリスター包装に加えて、ボトルやチューブなどのプラスチック類や金属、注射器に使用されるガラス、個装ケースや段ボールなどの紙類が廃棄されます。
医薬品の包装には、製品の安定性の保持や医薬品医療機器等法など各国法規で定められた事項の記載などの機能が必要です。アステラスではこれらに加え、環境に配慮した材質の選択や、廃棄の際にリサイクルを促す材質表示などの取り組みを行っています。
取り組みの一環として、ブリスターシートに植物由来の原料から作るバイオマスプラスチックの採用を開始しました。本ブリスターシートは、バイオマスプラスチックであるサトウキビ由来のポリエチレンを原料の50%に使用しており、環境に優しい包装です。ブリスターシートには高い錠剤保護機能およびユーザビリティ(使いやすさ)が求められますが、長年にわたり培ってきた包装技術を駆使することで、これらの要件を満たしつつ大量生産が可能なブリスターシートの製造を実現しました。2021年度から、植物由来の原料から作ったブリスターシートの利用が日本向け一部製品で始まりました。
日本では、家庭から廃棄される容器包装のリサイクルを進めるため、製品の販売者が容器包装リサイクル法(容器包装に関わる分別収集および再商品化の促進等に関する法律)に従い、廃棄物のリサイクル費用を負担しています。2023年度に家庭から排出されるプラスチック、紙容器の合計量の見積もりはおよそ218トンとなり、リサイクル費用の申込金額はおよそ822万円となりました。
アステラスでは各種製品にプラスチックを使用しているほか、事業活動で発生するプラスチック廃棄物の取り扱いを環境課題として認識し、プラスチックの資源循環に努めています。日本では、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律が2022年4月に施行されました。2023年度に日本国内で排出されたプラスチック廃棄物は230トンでした。プラスチック資源の利用の抑制やリサイクル率の向上などを通じ、日本国内で発生するプラスチック廃棄物発生量を250トン未満にする取り組みを進めています。
ガバナンス
アステラスは、「先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する」ことを存在意義とし、企業価値の持続的向上のため、すべてのステークホルダーから選ばれ、信頼されることを目指しています。アステラスのガバナンスに関する情報は、下記ページよりご覧ください。