2024.10.18

閉経を取り巻く沈黙と偏見を打ち破る

閉経を取り巻く沈黙と偏見を打ち破る

閉経は女性のライフステージにおける自然な変化の一つです。2025年までに、推定11億人の女性が閉経または閉経後の周期を迎えると言われています1。しかし、閉経について話されることは少なく、偏見や誤解が根強く残っています。このため、女性の健康と生活の質に大きな影響が及んでいます。私たちは、このような状況を変えるため、女性たちが安心して暮らせる社会の実現を目指しています。

閉経に伴う症状は人によってさまざまで、日常生活や生活の質に深刻な影響を及ぼす重度の症状を抱える女性もいます。これらの症状は数年にわたって続くこともあり2、代表的なものとして、ホットフラッシュ(顔のほてり・のぼせなど)、頭痛、膣の乾燥、関節痛、体重増加、薄毛、乾燥肌が挙げられます3,4,5。特に、ホットフラッシュや寝汗のような最も一般的な血管運動症状は、睡眠、集中力、人間関係など、生活のさまざまな局面に影響を及ぼします6,7。こうした身体的症状はよく知られていますが、不安やうつなど、感情的および心理的な影響は見過ごされがちです。これらの症状は、大きな経済的負担にもつながることがあり、働く女性の約3分の1が職場での対応に苦慮していると言われています。重度の症状を抱える女性の中には、疲労感からキャリア変更や勤務時間の短縮、さらには退職を考える人もいます8

 

偏見が治療への大きな障壁に

家族や職場、医療従事者、メディア、そして社会全体における偏見や誤解が、女性が適切なサポートや治療を受ける際の大きな障壁となっています。ある調査では、女性の83%が閉経に関する偏見を感じたと報告されています7。こうした偏見はオープンな議論を妨げ、この問題の認知や教育の機会を狭めてしまうため、多くの女性が沈黙の中で苦しみ、適切な治療に至ることができません9,10

閉経は国によって考え方が異なるため、アステラスは各国での偏見がどのように治療に影響を与えているかを理解するための研究を行っています。これによりコミュニティと連携して、偏見に伴う影響を緩和し、より適切なサポートが提供できるような戦略を開発しています。

 

閉経を迎える女性の健康向上への取り組み

閉経を迎える女性に対する偏見をさらに理解するため、アステラスは「閉経体験と態度に関する研究」を実施しています。この研究では、オーストラリア、ブラジル、カナダ、ドイツ、米国における閉経に対する偏見を定量化し、追跡します。2025年初頭までに結果を発表する予定です。この研究では、各国の代表的な女性サンプルを対象に、知識、認識、態度、信念、行動を調査し、社会全体での偏見のレベルを測定します。

Karla Martins

Karla Martins

Global Medical Affairs Lead, Women’s Health

「『閉経体験と態度に関する研究』は、現代の女性が体験する閉経を新たな視点で捉え、女性の真のニーズを理解するための重要な手掛かりとなります。この知見を活かし、女性の健康のさらなる向上のための取り組みにも役立てることができます。私たちは、閉経に関する認識や教育のギャップを埋め、コミュニティと協力し、閉経についての議論を活性化させることが重要と考えています。これにより、数多くの女性が偏見に立ち向かい、ライフステージで必要なケアを受けられるようになることを心から願っています。」


正しい知識と情報、そしてサポートがあれば、女性は閉経以降も自分らしく活躍できます。私たちは、女性が健康に自信を持ち、医療従事者と正しい情報に基づき積極的に話し合えるよう、必要なサポートと教育プログラムを提供していきます。そして、閉経といった女性のライフステージについて正しい理解を促進し、女性が安心して生活できる社会を実現するために、これからも活動を続けていきます。

閉経を迎える女性の健康向上への取り組み

 


参考資料

1 Shifren, J. L., & Gass M. L. S., NAMS Recommendations for Clinical Care of Midlife Women Working Group. (2014). The North American Menopause Society recommendations for clinical care of midlife women. Menopause, 21(10), 1-25. https://journals.lww.com/menopausejournal/citation/2014/10000/the_north_american_menopause_society.5.aspx.
2 World Health Organization. (2022, October 17). Menopause. World Health Organization (WHO). https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/menopause.
3 Kronenberg F. Hot flashes: epidemiology and physiology. Ann N Y Acad Sci 1990;592:52-86.
4 Monteleone, P., Mascagni, G., Giannini, A., Genazzani, A. R., & Simoncini, T. (2018). Symptoms of menopause – global prevalence, physiology and implications. Nature Reviews Endocrinology, 14(4), 199-215.
5 Ripa, P., Ornello, R., Degan, D., Tiseo, C., Stewart, J., Pistoia, F., Carolei, A., & Sacco, S. (2015). Migraine in menopausal women: A systematic review. International Journal of Women’s Health, 7, 773-782.
6 Williams, R. E., Kalilani, L., DiBenedetti, D. B., Zhou, X., Fehnel, S. E., & Clark, R. V. (2007). Healthcare seeking and treatment for menopausal symptoms in the United States. Maturitas, 58(4), 348-358.
7 Dahlgren et al (2023). Identifying Variables Associated with Menopause-Related Shame and Stigma: Results from a National Survey Study. Journal of women's health (2002), 32(11), 1182–1191.
8 Whiteley, J., DiBonaventura, M. dC., Wagner, J-S., Alvir, J., & Shah, S. (2013). The impact of menopausal symptoms on quality of life, productivity, and economic outcomes. Journal of Women’s Health, 22(11), 983-990. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3820128
9 Attitudes towards menopause: time for change (2022). The Lancet, 399, 2243. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(22)01099-6
10 Parish, S. J., Nappi, R. E., & Kingsberg, S. (2018). Perspectives on counseling patients about menopausal hormone therapy: strategies in a complex data environment. Menopause, 25(8), 937-949.


 

 

 

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