グローバルヘルスへの取り組み
アステラスは、画期的な医薬技術ソリューションとパートナーシップを活用し、世界中の乳幼児の命を救う医薬品の提供に寄与しています。
住血吸虫症は、寄生虫によって引き起こされる感染症で、全世界で2億5,000万人以上１が罹患しており、特に清潔な水へのアクセスに課題を抱えているアフリカの熱帯・亜熱帯地域で蔓延しています。
アステラスは10年以上にわたり、小児用プラジカンテルコンソーシアムに参画し、就学前児童向けの住血吸虫症の治療法の共同開発に取り組んできました。そして、コンソーシアムは新しい治療薬の初期段階の投与を開始し、この医療ニーズに応えるための重要なマイルストーンを達成しました。
住血吸虫症 – 公衆衛生上の課題解決に向けて
住血吸虫症は、世界保健機関（WHO）によって分類される21の「顧みられない熱帯病」の一つです。この病気は、淡水に生息する幼虫が血管に入り込み、臓器を攻撃することで発症します。治療を受けずに放置すると、健康上の問題を引き起こし、命に関わることもあります。
かつては、約5,000万人の就学前児童向けの住血吸虫症２に対する適切な治療法がありませんでした。小児用プラジカンテルコンソーシアムはこの状況を改善するために、積極的に活動してきました。アステラスはこの医薬品開発の初期段階から、研究と製剤技術の専門知識を提供しています。その結果、150mgの水に溶ける分散性錠剤が開発されました。この新しい治療薬は、2023年12月に欧州医薬品庁（EMA）から肯定的な科学的見解を受け、2025年3月にウガンダで最初の投与が開始されたことが発表されました。
小島 宏行
CMCディベロップメント 製剤研究所長 博士（薬学）
アステラスCMCディベロップメント 製剤研究所長の小島宏行は、30年以上にわたって薬学に携わっており、このプロジェクトは小島のキャリアの中で最も記憶に残るものの一つだと述べています。グローバルヘルス技術振興基金（GHIT Fund）とのビデオインタビューで、このプロジェクトに参加できた喜びを語りました。
「薬学研究者として意味のある成果を上げたと感じています。充実感を得て、多くのことを学びました」
当時、アステラスにとって乳幼児向けの医薬品開発は新たな試みであり、小島はそれを「暗中模索の始まり」と表現しました。
新しい治療法を成功させるためには、錠剤のサイズを小さくし、苦味を抑えることが不可欠です。成功よりも失敗の方が多く、チームは開発中に何度も振り出しに戻らなければなりませんでした。
さまざまな製品の開発を通じて確立していた口腔内崩壊錠の知識とノウハウを、現地生産にも対応できる形で活用しました。個人の味覚は地域などさまざまな要因で違っているため、苦みを抑えるためには何度も試行錯誤が必要でした。さまざまな製剤技術を巧みに組み合わせ、最終的に成功を収めました。
「私たちにとって大きな学びの経験でした」と小島は言います。「例えば、候補として開発された小さな錠剤は、生後数ヶ月の赤ちゃんが服用すると、誤って気管に詰まらせて窒息するリスクがあるということがわかりました」
成功をもたらすためのパートナーシップ
アステラスの研究およびコンソーシアムチームは、パートナーと共通の目標に向かって進むことで成功を収めました。
アステラスのチームメンバーは、ボランティアベースで任命され、この重要な治療を幼児に提供することを約束してきました。コンソーシアムチームは、パートナー間で意見の相違があっても、プロジェクトの共通目標に対するコミットメントは揺らぐことはありませんでしたと小島は語ります。
「関係者全員が、アフリカの子どもたちに治療薬を届けたいという共通の想いで満たされていました。研究室で培った技術で薬を作れることは、私たち薬学研究者にとって大きな喜びです」
医薬品開発は成功よりも失敗が多いのが現実です。しかし、小島は、研究チーム全体で問題解決に取り組むことで、足並みを揃えることができたと述べています。そして、テクノロジー、情熱的なチームメンバー、関係者全員のサポートが、医薬品開発の成功において重要な3つの要因であると考えています。
「問題が発生したときは、チームとして協力します。チーム内での解決が難しい場合は、他の人たちと連携します。周囲の人たち、経営陣、同僚のサポートが、課題を克服し、成功に導いてくれました」
1 World Health Organization, 1 February 2023. Schistosomiasis Fact Sheet. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/schistosomiasis
2 Trends in Parasitology (Volume 36, Issue 7, July 2020)
関連リンク
