アステラスのDX戦略シリーズ Vol.1:患者さんの「価値」を創造し、最大化するためのDXを実践
製薬業界は、創薬(研究)・開発・製造・販売・市販後の製品価値の最大化、というバリューチェーン全体で膨大なデータを取り扱っている情報産業です。ゆえに、デジタルトランスフォーメーション(DX)によってもたらされるインパクトは大きいと、コンサルティングファームでは試算しています。こうした環境のなか、アステラスはDXを経営計画2021達成の要(Critical Enabler)の1つとして位置づけ、患者さんの「価値」を創造し、届けるためにグローバル全体で推進しています。
製薬業界で期待されるDXの効果
製薬業界ではDXが進むことで、15~20年後に、研究開発の費用を約60%削減、期間を約2.4年短縮できる*1という試算があります。
*1出典:デロイトトーマツコンサルティング「テクノロジーの進化による新たな創薬パラダイム」“(デジタル)テクノロジーの進展により、(中略)15~20年後をめどに医薬品研究開発において約60%の費用削減、約2.4年の期間短縮が可能”
市場がますますグローバル化する現代において、世界70カ国以上でビジネスを展開するアステラスでは、創薬(研究)・開発・製造・販売・コーポレートのほぼ全てを機能別組織として運営しています。当然、DXの取り組みもグローバルプロジェクトとして実行し、その成果がグループ全体に大きな影響を与えることを目指しています。
アステラスのVISION実現のために
アステラスのDXは、単なるデジタルによる業務の効率化ではありません。「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの『価値』に変える」という私たちのVISIONを実現するための取り組みであり、経営計画2021達成の要(Critical Enabler)の1つとして位置づけています。
従来の医療用医薬品(Rx)事業は言うまでもなく、最先端の医療技術と異分野の先端技術を融合させることで、Patient Journey(診断、予防、治療および予後管理を含む医療シーン全般)全体において患者さんに「価値」をもたらすソリューションを開発するRx+®事業においても、DXはその要を担っています。(詳しくはこちら)
私たちは、研究開発や製造・販売など、バリューチェーンのあらゆる領域およびRx+®事業においてDXを推進することで、患者さんにとってのアウトカム(成果や状況)を最大化し、医療シーン全般のコストを軽減できるソリューションの開発を積極的に進めています。
※アステラスでは、「価値」を下の図のように定義しています。(詳しくはこちら)
* “What Is Value in HealthCare?” Porter, M.E. (2010). New England Journal of Medicineより抜粋
実効性の高いDX戦略を組織全体で実現
アステラスは「デジタル革新を加速して科学の進歩を患者さんの『価値』に変えるワールドクラスの Intelligent Enterprise となる」というDX Visionを掲げています。このDX Visionを実現するために、Digital×Dataの持つ4つのレバー(価値の源)を設定しています。
Sense(あらゆる事象をデータとして収集する)
Analyze(データ分析に基づいて予測し、早期に大胆な意思決定を行う)
Automate(高品質かつ高速なオペレーションを実現する)
Engage(時間と場所を超えて人同士の深いつながりを促す)
これらの4つのレバーに加え、長年にわたって培ってきたサイエンスの知見を組み合わせることで、より優れた医薬品の研究開発を実現し、競争優位性を獲得していきます。
私たちは、AIが人にとって代わるということでなく、「人」とデジタルがお互いに得意な部分で補完し合える環境を作りあげることこそ、実践すべきDXと考えています。
具体的には、必要なデータの収集・分析、繰り返し実施する作業ではAI やロボットなどデジタル技術を徹底的に活用し、そのうえで各分野の専門家がそれらの情報をもとに、いわゆる「人」でなければできない発想の飛躍やひらめき、強い意思に基づく転換、方向性の決定を行う、というものです。 すなわち、患者さんのために社員一人ひとりが存分に活躍できる環境を整えることを目指しています。
アステラスでは、情報システム部(IT部門)が医療用医薬品(Rx)の既存業務に ITやデジタル技術を導入して業務の変革を推進し、コミュニケーションやデータ利活用の基盤を継続的に刷新しています。またデータ分析の専門家を集めたAIA(アドバンスドインフォマティクス&アナリティクス)部門において、高度なデータ分析を実施し、AIや機械学習など最先端のデジタルケイパビリティの活用を推進しています。この2つの部門が中心となり、各部門と協同しながら、全社レベルのDXを進めています。
私にとってDXとは、業務のやり方を進化させて患者さんの「価値」を飛躍的に向上させるものであり、そのためにデジタル技術を活用することと考えています。小さなシステムの導入であっても患者さんの「価値」向上に繋がれば立派なDXであり、反対に最先端技術の利用や大きなシステムの導入であっても、業務のやり方を進化させられず患者さんの「価値」向上に繋がらなければDXとは言えません。アステラスでは2018年にDX推進のためのコアチームを経営企画、AIA、情報システムの3部門で立ち上げました。現在では部門横断のコアチームを拡大し、バリューチェーンのあらゆる領域でDXプロジェクトを進めています。全てのプロジェクトにおいて、推進者(社員)の「出来るだけ早く、出来るだけ多くの『価値』を患者さんに届けたい」という熱い想いを、DXで形にしていく、ということを大切にしています。
アステラスはすべての事業領域で社員が一丸となって、DXを推進しています。幅広い取り組みのなかで、特に代表的な取り組みをシリーズで紹介します。
アステラスのDX戦略シリーズ
Vol.2 創薬(研究)「人、AI、ロボットによって強化される創薬プラットフォーム」
Read moreVol.3 患者さんの声とテクノロジーを融合した新たな臨床試験のアプローチ
Read moreVol.4 モノづくりのイノベーション〜医薬品生産の品質管理を向上する新システムを構築
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