コラボレーションによるサステナビリティの向上

サステナビリティの向上は、今や企業にとって欠かせません。アステラスでは、2050年までに温室効果ガス排出(GHG)を実質ゼロにすることを目指す「ネットゼロ」を目指しています。この目標を達成するために、経営の意思決定や企業活動において、サステナビリティを向上し、気候変動対策への長期的なコミットメントを示しています。
この目標を達成するためには、アステラスの事業に直接的および間接的に関連するスコープ 1 と 2 の排出量を削減する包括的なアプローチが必要です。また、サプライヤーまたはパートナーなど、バリュー チェーンに関わる外部活動からの排出、つまりアステラスのGHG排出量の 90% を占めるスコープ 3に対応することが重要です。バリュー チェーン全体でのパートナーとの協働が目標達成の鍵となります。アステラスは、イノベーションを追求し、社会に良い影響を与える好循環を生み出すために、このコラボレーションが不可欠であると考えています。
私たちは「アステラス・サステナブル・ビジネスパートナーサミット」を初めて開催しました。このサミットでは、主要な外部ステークホルダーと共に、サステナブルな社会の実現に向けた理解を深めるための対話を行いました。アステラスの総支出の80%を占めるサプライヤーにご参加いただき、コラボレーションの重要性やイノベーション共有について話し合い、相互理解を深める貴重な機会となりました。
アステラスのシニアバイスプレジデント兼グローバル調達部門長であるPaul O’Neill(以下、ポール)は、プレゼンターの一人としてサミットに参加しました。ポールは、サミットを振り返り、その目的やアステラスの具体的なサステナビリティ向上の取り組み、そして目標達成に向けた積極的なコラボレーションについて語ります。
サステナビリティ向上の中核となるコラボレーション
アステラスは、事業を通じてサステナブルな社会に貢献しています。また、コラボレーションを重視する組織文化のもとで、環境負荷軽減の取り組みを強化しています。ポールは「サステナビリティを向上するには、チームワークが欠かせない」と強調します。アステラスは「社内外の関係者と協力することで、サステナビリティを向上できる」と語ります。
サミットはこの精神を体現し、主要なサプライヤーやパートナーを集めて、協力が不可欠であるという共通の理解を共有しました。私たちは参加者に対して、アステラスの現状を明確に示し、高い目標を提示しながら、目標達成に向けた積極的なコラボレーションを呼びかけました。
サミットには、サステナビリティ向上において優れた実績を持つサプライヤーを招聘しました。私たちはサステナブルな社会の実現に向けて、サプライヤーやパートナーと共に、長期的な気候変動対策におけるパートナーシップの重要性を再認識しました。
パートナーシップの影響力を最大化する
スコープ3のGHG排出量削減は、アステラスのサステナビリティ戦略において非常に重要な要素であり、これらの間接排出量の削減目標を達成するためには、戦略的な視点と革新的なソリューションが必要です。ポールは次のように語ります。
「私たちのグローバルネットワークには17,000社以上のサプライヤーがいますが、すべてをコントロールすることは難しいです。そこで、効率良く最大の変化を促すために、影響力の大きい事業領域やサプライヤーに重点を置いて取り組んでいます」
成功事例の1つとして、触媒として使用するパラジウムなどのレアメタルを供給するサプライヤーとの重点戦略製品の製造プロセスにおけるコラボレーションがあります。私たちは、レアメタルに関する環境的および倫理的責任に基づき、技術チームや外部パートナーと緊密に連携し、パラジウムの回収率を評価し、改善しました。
「当時の回収率は業界基準を下回っていました。地球環境への負荷軽減を考慮し、コスト面を見直すだけではなく、限りある資源の使用をできるだけ減らしました」とポールは語ります。
こうした努力が実を結び、回収率は35%から55%に改善し、75%を目指す道筋も見えてきました。
「特定のプロセスを改善するために始めたことが、結果的に関係者全員の意識向上と行動変容を促し、さらに大きな改善に向けた基盤を築くことに成功しました」
革新的なサステナビリティを推進
イノベーションは、サステナビリティへの取り組みの原動力です。私たちは、事業を通じて環境負荷を軽減する方法を常に探求しています。物流から製品の包装に至るまで、検証や学習を重ねています。
例えば、医薬品の一次包装であるPTP(Press Through Pack)シートにバイオマスプラスチックを採用し、環境に優しい包装を実現しました。また、温度に敏感な製品の品質を保ちながら、包装材の重量を減らすことにも成功しました。これらの取り組みにより、環境パフォーマンスを向上させるとともに、未来に向けた新しいアプローチを促進しています。

物流のイノベーションでも大きな成果が見られます。EVトラックの試験導入や、輸送手段を空輸から海上輸送に切り替えることで、二酸化炭素の排出量を大幅に削減しました。
ポールは「目標達成に向けて、どんなに小さな変化も歓迎します。関係者が一丸となり、イノベーションを積極的に取り入れる文化を築くことが重要です」と強調します。
この文化は、アステラスのデータ活用法にも表れています。二酸化炭素排出量のヒートマップを作成する技術を試験的に導入し、最も削減効果の高い分野にリソースを集中させました。ポールは「数字を単に追跡するだけではなく、データを活用することで、意味のある変化をもたらすことができます」と説明します。
業界全体だけではなく地域とも連携
サステナビリティの向上を実現するためには、万能な方法はありません。アステラスでは、ヘルスケア業界内での連携を進めるだけでなく、地域の状況に応じて戦略を調整しています。例えば、スペインではプラスチック素材を廃止し、製品輸送を統合することでGHG排出量の削減を目指すプロジェクトを進めており、現地チームが中心となり推進しています。
「地域の特性を考慮して計画することで、効果がより広範囲に広がると実感しています。組織全体で可能性を探り、方向性を定め、行動することが重要です」とポールは述べます。
また、他社とのコラボレーションも重要です。私たちは、小売業や製造業など異なる業種の企業と連携し、サステナブルな事業推進に役立つ貴重なアイデアや洞察を得ています。ポールは「企業間でデータ要件が異なるなど、連携を妨げる要因を回避するために、共通のフレームワークを確立する必要がある」と強調します。
サステナブルな未来の実現に込めた個人の想い
ポールは、サステナビリティの向上を単なる企業の目標ではなく、個人の重要な責任と考えています。
「今行動しなければ、未来が失われてしまうと考えています。父親として、また科学者として、私は今こそ個人が未来のために行動すべきだと感じています」
この考えは、アステラスが企業として果たすべき使命とも深く結びついています。企業が環境負荷を軽減することで、次世代の人々が健康に過ごし、健全な社会で生活できることを目指しています。
より良い未来を共に築く
アステラスは、今後もコラボレーションとイノベーションを追求し、透明性の確保に努めます。
アステラス・サステナブル・ビジネスパートナーサミットは、サプライヤーを含む外部パートナーと共に、サステナビリティの向上を目指す有意義な場となりました。サミットでプレゼンターを務めたアステラスの経営戦略担当CStO(Chief Strategy Officer)であるAdam Pearsonも、サステナビリティ向上に向けたコラボレーションの重要性が今後ますます高まることを強調しました。
アステラスは、本業を通じて社会とアステラスのサステナビリティの好循環を目指しています。私たちは具体的な目標を設定し、学び合いながら、コラボレーションの文化を強化し、サステナブルな未来を築いていきます。イノベーションの創出と企業としての責任を効果的に結び付け、次世代にわたり持続が可能なサステナビリティ向上の取り組みを継続していきます。
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