2024.12.09

多様な交流が生み出すイノベーション〜米国東西の2拠点から医薬品研究の最先端へ

アステラスは2024年、バイオテクノロジー分野でのさらなる躍進を目指し、米国の東西に最先端のイノベーションセンターを設立しました。5月にはカリフォルニア州サウスサンフランシスコにあるバイオテクノロジー・エコシステムの中心にAstellas West Coast Innovation Center(アステラス ウェストコーストイノベーションセンター)を開設し、9月にはマサチューセッツ州ケンブリッジにAstellas Life Sciences Center(アステラス ライフサイエンスセンター)をオープンしました。両センターは、アステラスがコラボレーションを促進し、科学の限界を押し広げ、世界中の患者さんに新たな治療法という「価値」を届けることを目指す最先端の施設です。

Astellas Life Sciences Centerでパーナーシップ構築やデータ管理を担うDaniel Hoeppner(以下、ダン)と、Astella West Coast Innovation Centerで神経筋疾患の遺伝子治療研究をリードするMolly Ryan(以下、モリー)が、それぞれの拠点での日常や、新しい環境がどのように彼らの研究に革新をもたらしているかを紹介します。
 

Molly Ryan, Dan Hoeppner,

Innovation Center

 

 

パートナーシップ、そして実践的な研究を推進

From Partnerships to Hands-On Research: A Day in the Life

両センターでは、日々の業務において学際的なチームワークと自発的なイノベーションを重視しています。ダンはAstellas Engineered Small Molecules(アステラスエンジニアードスモールモレキュールズ)チームのパートナーシップ構築およびデータ管理責任者として、事業開発、データ、実践的な研究の橋渡しを行い、統合的な研究アプローチを推進しています。
「私の役割は、パートナーシップの構築と、研究を円滑に進めるためのデジタルデータの管理です」とダンは述べます。彼はかつて研究に従事していた経験を活かし、研究プロジェクトに直接関わることも多く、Astellas Life Sciences Centerでは新たなアイデアが共有スペースでの有機的な交流からも生まれると語ります。「対面での会議だけでなく、コーヒーブレイク中の何気ない会話からも新たな洞察を得ることが多いと感じています」と彼は続けます。

Astellas Gene Therapies(アステラスジーンセラピーズ)で神経筋疾患研究をリードするモリーも、ダンと同様の経験をしています。神経筋疾患の遺伝子治療プログラムの部門横断チームのリーダーとして、日々さまざまな分野の専門家と綿密に連携する彼女は、「メンバーが一堂に会することで大きな変化が生まれました」と強調します。
「探索研究や前臨床研究を担うチームからプロジェクト管理を行うチームまで、センター内のメンバーと容易に連携できることで、自発的なコラボレーションが円滑に行われています」
Astellas West Coast Innovation Centerも、エレベーターやカフェスペースなどでカジュアルに交流しやすいレイアウトとなっており、チームのつながりを強化し、イノベーションを促進するのに最適な環境です。

アイデアは、部門を超えた自発的なコラボレーションから生まれるという原則のもと、両センターは対面交流を促す構造で設計されています。Astellas Life Sciences Centerでは、この原則がSakuLabTM-Cambridge MA(マサチューセッツ州ケンブリッジ)の設置によって実現され、当社の米国初のオープンラボスペースとして、共創とイノベーションの拠点となっています。このオープンラボは、創薬探索活動の一環として、合成生物学に焦点を当て、バイオベンチャーやアカデミア、インキュベーターとのパートナーシップを積極的に模索しています。入居企業は、施設の利用に加え、製薬の専門家との相談や貴重なネットワーク構築の機会を得ることができます。

 

 

標的タンパク質分解誘導と遺伝子治療における統合的な研究アプローチ

Integrated Research Approach: Targeted Protein Degradation and Gene Therapy

両センターにおいて、アステラスは最先端の創薬研究に注力しています。

Astellas Life Sciences Centerでは、標的タンパク質分解誘導(従来アプローチできなかった疾患に関連するタンパク質を標的にする方法)などの新しい治療法を前臨床研究段階まで進めることで、アンメットメディカルニーズが高い疾患に対する創薬のイノベーションを加速しています。
「ここには、メディカル担当CMO(Chief Medical Officer)が率いる活気溢れる臨床研究者のコミュニティがあり、彼らと連携して研究戦略を策定し、研究結果が開発そして患者さんへの価値創出につながるよう支援しています」とダンは語ります。さらに「私たちは最先端の研究施設を活用して、研究プロセスを最適化し、実際の結果を目に見える形で得られるようになりました」と続けます。これは、アステラスが研究の優先順位を最適化し、タンパク質の恒常性を調節するなどの強力な新しい治療法の探索を加速していることを示しています。

一方、Astellas West Coast Innovation Centerでは、モリーのチームが神経筋疾患に焦点を当てた複雑な遺伝子治療の研究を進めています。
「遺伝子治療は従来、機能喪失型変異による希少な疾患に対する遺伝子置換療法に重点を置いてきましたが、将来を見据えて、より困難な疾患を対象にした治療法の確立を目指しています」とモリ―は語ります。彼女のチームは、現在、遺伝子置換療法に加えて、機能獲得型変異による疾患に対する治療法の研究に注力しています。これは、欠損した遺伝子を置き換えるのではなく、毒性を持つようになった変異遺伝子を制御する治療アプローチです。モリーは、「遺伝子治療の領域で次のステップを進めるには、従来のアプローチを再考する必要があります」と述べ、また、革新的な治療法の確立にはクロスファンクショナルなコラボレーションが必要不可欠であると強調します。

このように両センターは、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えるというアステラスのコミットメントに基づき日々研究に邁進しています。アステラスは引き続き、標的タンパク質分解誘導や遺伝子治療など、当社がPrimary Focus(プライマリーフォーカス)として選定する領域へ重点的に投資し、アンメットメディカルニーズが高い疾患を克服する新たなヘルスケアソリューションを開拓していきます。

 

米国東西のサイエンスエコシステムにおける立地条件の活用

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両センターの立地条件も、最先端の科学やイノベーションにアプローチする上で重要な役割を果たしています。Astellas Life Sciences Centerがあるマサチューセッツ州ケンブリッジ・クロッシングには、大手製薬企業やバイオテック企業、アカデミアが密集しており、活発なサイエンスコミュニティが形成されています。「多様な組織が集まるエリアなので、近隣で開催される会議やイベントには徒歩や自転車で参加できます」とダンは語ります。また、同センターのユニークな特徴として、公共ピアノが設置されており、従業員と近隣住民が交流し、懇親を深めるきっかけとなっています。こうした地域とのつながりにより、私たちは多彩なイノベーションのエコシステムに参加し、組織の枠を越えた有意義なパートナーシップを育むことができます。


一方、サウスサンフランシスコにあるAstellas West Coast Innovation Centerは5 階建ての施設で、研究室とオフィスが互い接続された構造となっており、コラボレーションが生まれやすい環境が整っています。「多様な研究者が密接に連携できる環境を整えることで、それぞれのノウハウや知見、ツールを共有できるようになりました。こうした好循環は、研究者たちがベイエリアの各地に散らばっていた状況では得られなかったでしょう」とモリーは語ります。
「研究者が一堂に会することで、まとまりのあるユニットとして機能し、互いに学び合い、それぞれの研究プロセスにおいてより効果的に協働できるようになりました」
 

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さらなるイノベーションの基盤強化に向けて

ダンとモリーは、アステラスがバイオテクノロジー・エコシステムに深く根ざすことで、コラボレーションがさらに強化されることを期待しています。「ケンブリッジに新たな仲間が加わり、この地域がより活性化することを楽しみにしています」とダンは語ります。

またモリーは、遺伝子治療や細胞医療の複雑な課題に挑戦し続けることで、Astellas West Coast Innovation Centerで協働する多様なチームのつながりがより強固になることを期待しています。
「さまざまな機能をもつチームが一つ屋根の下に集まった結果、センター内で循環するエコシステムを構築できています」とモリ―は強調します。

ダンとモリ―の経験を通じて、両センターは、コラボレーションを活性化し、画期的な研究活動を支える環境であることが伝わります。アステラスは、米国東西の2拠点は単なる施設ではなく、新たなイノベーションと共創を生み出し、ヘルスケアを進化させるというグローバルな使命を実現するうえで中心的な存在になると確信しています。

 


 

研究開発の詳細は、以下をご覧ください。

Targeted Protein Degradation

Primary Focus 標的タンパク質分解誘導

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genetic-regulation

Primary Focus 遺伝子治療

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cell therapy

細胞医療

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