アステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長:畑中 好彦、以下「アステラス製薬」)は、本日、Immunomic Therapeutics, Inc.(本社:米国ペンシルベニア州ハーシー、CEO:William Hearl、以下「Immunomic Therapeutics社」)と、あらゆるアレルギー疾患を対象としたLAMP-vax製品について、全世界における独占的なライセンス契約を締結しましたのでお知らせします。LAMP-vax技術は、DNAワクチンの治療効果を高め、プラスミドDNAにコードされるアレルゲンの種類を変えることにより、幅広いアレルギー疾患に対応できる創薬プラットフォームとして期待されています。
アステラス製薬は、今年1月にImmunomic Therapeutics社と、同社が創製し、スギ花粉症を対象疾患として開発している治療ワクチンASP4070(以前は、JRC2-LAMP-vaxと表記)について、日本における独占的な開発及び商業化のライセンス契約を締結しました。アステラス製薬は、日本においてASP4070の第I相試験を既に開始しています。なお、今回の新たな契約の締結に関わらず、ASP4070に関する日本における独占的な開発及び商業化のライセンス契約は有効に存続します。
今回の新たな契約に基づき、アステラス製薬は、あらゆるアレルギー疾患の治療又は予防を適応症としたLAMP-vax技術を用いた製品について、全世界における研究、開発、製造及び商業化の独占的な権利を取得します。対象製品には、ピーナッツアレルギーに対する治療又は予防ワクチンとして開発されているARA-LAMP-vax、及びその他の食物アレルギーや環境アレルギーを対象疾患とした研究段階の複数のプログラムが含まれます。
アステラス製薬は、Immunomic Therapeutics社に対して、本契約の締結時に契約一時金として3億米ドルを、また、本契約に基づきLAMP-vax製品が上市された場合、当該製品売上の10%のロイヤルティを支払います。
アステラス製薬の上席執行役員・経営戦略担当である安川 健司は、次のように述べています。「当社は、経営計画2015-2017において、イノベーション創出のために新たな機会へ挑戦していくことを掲げており、再生医療や次世代型ワクチンなどの新技術や新治療手段にも積極的に投資しています。また、重点研究疾患領域の一つとして免疫科学を選定し、複数の免疫疾患に共通する新規創薬ターゲットを探索するとともに、原因療法・根治を目指した新薬の創製に取り組んでいます。今回のImmunomic Therapeutics社との新たな提携は、当社の戦略の実現に向けた取り組みであり、免疫科学領域における新薬パイプラインの一層の充実につながることを期待しています。」
Immunomic Therapeutics社のCEOであるDr. William Hearlは、次のように述べています。「アステラス製薬が、アレルギー疾患に対する次世代型ワクチンとしてLAMP-vax技術の可能性を高く評価し、再び提携できることを大変嬉しく思います。なお、当社は引き続き、がん免疫などアレルギー疾患以外の疾病に対するLAMP-vax技術の応用について、研究・開発を続けていきます。」
なお、本提携によるアステラス製薬の当期(2016年3月期)業績への影響は軽微です。
以上
LAMP-vax技術について
LAMP-vax技術は、特定のタンパク質に対して免疫応答を活性化させる次世代型DNAワクチンで、アレルギーやがん免疫など潜在的に幅広い疾患領域に応用可能です。LAMP-vax技術を用いた製品を接種すると、そのプラスミドDNAは抗原提示細胞によって取り込まれ、細胞内でDNAにコードされた抗原とLysosomal Associated Membrane Protein(LAMP;リソソーム膜タンパク質)との融合タンパク質が発現します。従来のDNAワクチンは、主として細胞傷害性T細胞応答を誘導しますが、LAMP-vaxワクチンはリソソーム内でMHCクラスII分子と共局在するLAMPをコードしていることにより、細胞傷害性T細胞応答を減弱させることなく、さらにヘルパーT細胞応答も誘導するという特長があります。この特長により、従来のDNAワクチンと比べて、より完全な免疫応答、すなわち抗体産生の誘導やサイトカイン分泌、免疫記憶の成立が期待されます。
ARA-LAMP-vaxについて
米国において、食物アレルギーに起因するアナフィラキシー症状は毎年30,000件以上起こることが知られており、重篤なショック症状により死亡に至るケースが毎年100-200例報告されています。中でも、ピーナッツアレルギーは米国で150万人以上に影響を及ぼしている、最もよく知られた食物アレルギーの一つです。微量のアレルゲン曝露でもアナフィラキシー症状を引き起こす可能性が高いため、学校給食等による事故的なピーナッツ摂取を防ぐための対策が進むなど社会的な対策が進められています。しかし、ピーナッツアレルギーの治療又は予防を適応症とした医薬品は米国で未だ承認されていません。ARA-LAMP-vaxは、Immunomic Therapeutics社がJohns Hopkins Universityからライセンス許諾を受けているLAMP-vax技術を使って開発したピーナッツアレルギーに対する治療又は予防ワクチンで、ピーナッツの主要なアレルゲンをコードするDNAプラスミドを含有する製剤です。ピーナッツの主要なアレルゲンがLAMPとの融合タンパク質として発現するように設計されており、免疫系反応をTh2型のIgEを介したアレルギー性反応から、Th1型のIgGを介した反応(非アレルギー性反応)へとシフトさせることで、アレルギー症状を改善します。
Immunomic Therapeutics社について
Immunomic Therapeutics, Inc.(http://www.immunomix.com.)は、米国ペンシルベニア州ハーシーに本社を置き、メリーランド州ロックビルに研究所を構える非上場のバイオテクノロジー企業です。アレルギー疾患、がん、感染症等の幅広い治療領域にわたり、LAMP-vax技術に基づく次世代型ワクチンの研究・開発を行っています。LAMP-vax技術は、免疫応答を改善し、従来の治療法に比べ、より安全で費用効率が良い治療を可能とする創薬プラットフォームです。