アステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:岡村 直樹、以下「アステラス製薬」)は、Pfizer Inc.(本社:米国ニューヨーク州、以下、「Pfizer」)と共同で開発を進めている抗体-薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)であるPADCEVTM(一般名:エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組換え))とMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(米国とカナダ以外ではMSD)の抗PD-1抗体KEYTRUDA®(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))の併用療法について、治療歴のない局所進行性または転移性尿路上皮がん(locally advanced or metastatic urothelial cancer:la/mUC)に対する有効性と安全性を評価した第III相EV-302試験(KEYNOTE-A39試験)の追跡調査結果を発表しました。主要解析から12カ月の追加調査後(追跡期間の中央値:29.1カ月)の解析結果は,主要解析の結果と一致しており、全生存期間(overall survival:OS)と無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の持続的な改善を示しました1,2。これらのデータは、カリフォルニア州サンフランシスコで開催される2025年米国臨床腫瘍学会 泌尿生殖器がんシンポジウム(American Society of Clinical Oncology Genitourinary Cancers Symposium:ASCO GU)において、2月14日午後4時10分(現地時間)に口頭発表される予定です(抄録番号664)。
エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用療法群(以下、「併用療法群」)では、化学療法群と比較して、死亡リスクが49%減少しました(ハザード比[Hazard Ratio:HR]=0.51、95%信頼区間[Confidence Interval:CI]:0.43-0.61)。OSの中央値は、併用療法群で33.8カ月、化学療法群で15.9カ月であり、シスプラチン適応、不適応のサブグループを含む、全てのサブグループにおいて、OSが延長しました。併用療法群は化学療法群と比較して、がんの進行または死亡のリスクを52%減少させました(HR=0.48、95%CI:0.41-0.57)。PFSの中央値は、併用療法群で12.5カ月、化学療法群で6.3カ月でした。併用療法群の安全性は、以前に報告した試験の結果と同様であり、新たな安全性の懸念は確認されませんでした1。
追跡調査結果に加え、完全奏効が認められた患者における有効性と安全性を評価した探索的解析についても、今回発表予定です。評価可能な患者における客観的奏効率は併用療法群で67.5%、化学療法群で44.2%でした。奏効期間の中央値は、併用療法群で23.3カ月(95%CI:17.8-算出不能)、化学療法群で7カ月(95%CI:6.2-9.0)でした。完全奏効率は、併用療法群で30.4%、化学療法群で14.5%でした。併用療法群では完全奏効期間の中央値は未達、化学療法群では15.2カ月でした(95%CI:10.3-算出不能)。完全奏効が認められた患者における、薬剤に関連のあるグレード3以上の有害事象の発生率は、併用療法群で61.7%、化学療法群で71.9%でした。完全奏効が認められたサブグループでは、治療に関連する死亡例は認められませんでした1。
本併用療法は、局所進行性または転移性尿路上皮がんに対する治療法として、米国、欧州、日本をはじめとする世界各地で承認されています。また、エンホルツマブ ベドチンは、米国においては白金製剤を含む化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤による治療歴のあるla/mUC患者、もしくはシスプラチン不適応で治療歴のあるla/mUC患者に対する単剤療法としても承認されています3。
以上
EV-302試験(NCT04223856)について
EV-302試験は、治療歴のないla/mUC患者を対象として、エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用療法と化学療法を比較評価する非盲検無作為化第III相試験です。PD-L1の発現程度に関係なく、シスプラチンまたはカルボプラチンを用いた化学療法に適応の、治療歴のないla/mUC患者886人が登録されました。被験者はエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法群、または化学療法群に無作為に割り付けられました。本試験の主要評価項目は、OSと盲検下独立中央判定(Blinded independent Central Review:BICR)によるRECIST v1.1に基づくPFSです。副次評価項目には、BICRによるRECIST v1.1に基づく客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)、および安全性が含まれます4。
本試験は、尿路上皮がんやその他の固形がんの複数のステージにおいて、この併用療法を評価する広範にわたるプログラムの一部です。本試験の結果は、2023年欧州臨床腫瘍学会で発表されました。
PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組換え))について
エンホルツマブ ベドチンは、ほぼ全ての尿路上皮がん細胞に発現し、細胞間の接着に関連するタンパク質であるネクチン-4を標的とするファーストインクラスのADCです5。非臨床試験データから、エンホルツマブ ベドチンの抗腫瘍活性は、がん細胞上でエンホルツマブ ベドチンがネクチン-4に結合して標的細胞内に取り込まれると細胞障害性物質であるモノメチルアウリスタチンE(Monomethyl auristatin E:MMAE)が放出され、細胞増殖抑制(細胞周期停止)および細胞死(アポトーシス)が生じることによることが示唆されています3。
アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えることを目指すグローバルライフサイエンス企業です。私たちは、がんや、眼科・泌尿器疾患、免疫、ウィメンズヘルスなどの多様な領域において、革新的な治療法を提供しています。研究開発プログラムを通じて、アンメットメディカルニーズの高い疾患領域において新たなヘルスケアソリューションを開拓しています。
アステラス製薬の詳細については、www.astellas.comをご覧ください。
Pfizer、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAとの提携について
Seagenとアステラス製薬は、治療歴のない転移性尿路上皮がん患者を対象に、PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン)とMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(米国とカナダ以外ではMSD)のKEYTRUDA®(ペムブロリズマブ)の併用療法を評価するために、臨床開発の提携契約を締結しています。既にご案内した通り、2023年12月14日にPfizerはSeagenの買収を完了しました。KEYTRUDA®はMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの子会社であるMerck Sharp & Dohme Corp.の登録商標です。
注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。
参考文献
1 Powels T, et al. EV-302: Updated analysis from the phase 3 global study of enfortumab vedotin in combination with pembrolizumab (EV+P) vs chemotherapy (chemo) in previously untreated locally advanced or metastatic urothelial carcinoma (la/mUC). J Clin Oncol 43, 2025 (suppl 5; abstr 664)
2 Powels T, Valderrama BP, Gupta S, et al. Enfortumab Vedotin and Pembrolizumab in Untreated Advanced Urothelial Cancer. N Engl J Med 2024;390:875-888.
3 PADCEV [package insert]. Northbrook, IL: Astellas Pharma US, Inc.
4 National Cancer Institute. Enfortumab Vedotin and Pembrolizumab vs Chemotherapy Alone in Untreated Locally Advanced or Metastatic Urothelial Cancer (EV-302). ClinicalTrials.gov identifier: NCT04223856. Published January 6, 2020. Updated September 27, 2024. Accessed January 6, 2025.
https://clinicaltrials.gov/study/NCT04223856?tab=results#results-overview.
5 Challita-Eid PM, Satpayev D, Yang P, et al. Enfortumab vedotin antibody-drug conjugate targeting nectin-4 is a highly potent therapeutic agent in multiple preclinical cancer models. Cancer Res 2016;76(10):3003-13.