-中国、胃がん症例数・死亡数で世界最多1 -
- CLDN18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性胃腺がん
および食道胃接合部腺がんの治療薬として中国で承認された
ファーストインクラスの抗CLDN18.2モノクローナル抗体 –
- GLOW 試験および SPOTLIGHT 試験においてスクリーニングされた
中国人患者の約 35%が、CLDN18.2 陽性と判定2 -
アステラス製薬株式会社(本社:東京、以下「アステラス製薬」)は、VYLOYTM(ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え))について、中国の国家薬品監督管理局(National Medical Products Administration:NMPA)から、Claudin(CLDN) 18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がん患者に対する一次治療として、フルオロピリミジンおよびプラチナ製剤を含む化学療法との併用療法で、承認を取得しました。ゾルベツキシマブは、中国で上記対象疾患に承認されたファーストインクラスの抗CLDN18.2モノクローナル抗体です。
胃がんは中国におけるがん関連死亡原因の第3位であり、2022年には260,000人以上が胃がんにより死亡しました5。初期症状の発見が困難であるため、中国の患者の約60%が進行期で診断されています6。この段階では治療法が限られており、予後も不良です。中国における進行性胃がん患者の平均5年生存率は9.1%であり、病状の進行を遅らせ、寿命を延ばす新たな治療選択肢が求められています7。
今回の承認取得は、第III相GLOW試験およびSPOTLIGHT試験の結果に基づいています。GLOW試験では、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法(カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせた療法)群と、プラセボ+CAPOX療法群を比較しました3。本試験には中国人被験者145人が登録されました4。SPOTLIGHT試験では、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法(オキサリプラチン、ロイコボリンおよびフルオロウラシルを組み合わせた療法)群とプラセボ+mFOLFOX6療法群を比較しました3。本試験には、中国人被験者36人が登録されました3。どちらの試験も、ゾルベツキシマブ+化学療法(mFOLFOX6あるいはCAPOX療法)群は、無増悪生存期間(Progression-Free Survival:PFS)および全生存期間(Overall Survival:OS)のいずれにおいても、プラセボ+化学療法群と比較して、統計的に有意な改善を示しました3,4。GLOW試験では、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法群で、PFSの中央値が8.21カ月に達したのに対し、プラセボ+CAPOX療法群では6.80カ月でした4。OSの中央値は、それぞれの治療群で14.39カ月と12.16カ月でした4。SPOTLIGHT試験でも同様の有効性を示しており、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法群と、プラセボ+mFOLFOX6療法群を比較して、PFSの中央値が10.61カ月と8.67カ月、OSの中央値が18.23カ月と15.54カ月でした3。両試験において、重篤な治験薬投与下に認められた有害事象(treatment-emergent adverse event:TEAE)の発生率は、ゾルベツキシマブ治療群とプラセボ群で同程度でした。ゾルベツキシマブ治療群で見られた最も頻度の高いTEAEは、悪心、嘔吐および食欲減退でした3,4。
アステラス製薬はグローバルで、アンメットメディカルニーズの高い胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんに苦しむ患者さんに新たな治療選択肢を提供することを目指しています。
本件によるアステラス製薬の業績への影響は、通期(2025年3月期)連結業績予想に織り込み済みです。
以上
切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんについて
胃腺がんと食道胃接合部腺がんは組織学的に類似していることが知られており、治療ガイドラインにおいて、同じ方法で管理・治療することが推奨されており、治療効果が一致するケースが多いことも知られています8。中国全土で2022年には 358,000 人以上が新たに胃がんと診断されました5。胃がんは中国におけるがん関連死亡原因の第3位であり、2022年には260,000人以上が胃がんにより死亡しました5。食道胃接合部腺がんは、食道が胃に結合する領域から発生する腺がんです9。早期の胃がんは、胃に関連する一般的な疾患と症状が重なることが多いため、進行期や転移期、すなわち腫瘍の発生部位から他の体の組織や臓器に広がってから診断されることが多いと言われています10。徴候や症状には、消化不良や胸やけ、腹部の痛みや不快感、悪心や嘔吐、食後の胃の膨満感、食欲不振などがあります10,11。より進行した胃がんの徴候には、原因不明の体重減少、衰弱と疲労、吐血、血便などがあります10,11,12。胃がんに関連する危険因子には、高齢、男性、家族歴、ヘリコバクター・ピロリ感染、喫煙、胃食道逆流症などがあります13,14。
第III相GLOW試験について
GLOW試験(NCT03653507)は、CLDN18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ(IMAB362)+CAPOX療法(カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせた療法)群と、プラセボ+CAPOX療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第III相試験です。この試験には、米国、カナダ、英国、欧州、南米、アジアの166カ所で507人の患者が登録されました。主要評価項目は、プラセボ+CAPOX療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法群のPFSです。副次評価項目には、OS、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、QOL(生活の質)に関するパラメーターが含まれます4。GLOW試験のデータは、2023年3月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズで最初に発表され、2023年6月3日の2023年ASCO年次総会においても口頭発表され、その後2023年7月31日にNature Medicineに掲載されました4。
第III相SPOTLIGHT試験について
SPOTLIGHT試験(NCT03504397)は、CLDN18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法(オキサリプラチン、ロイコボリン、フルオロウラシルを組み合わせた療法)群と、プラセボ+mFOLFOX6療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第III相試験です。この試験には、米国、カナダ、英国、オーストラリア、欧州、南米、アジアの215カ所の医療機関で565人の患者が登録されました。主要評価項目は、プラセボ+mFOLFOX6療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法群の無増悪生存期間(Progression Free Survival: PFS)です。副次評価項目には全生存期間(Overall Survival: OS)、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、生活の質(Quality of Life: QOL)に関するパラメーターが含まれます3。SPOTLIGHT臨床試験のデータは、2023年1月19日の口頭発表で2023年米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(ASCO GI)中に発表され、その後2023年4月14日にLancet誌に掲載されました3。
VYLOYTM(ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え))について
ゾルベツキシマブは、膜貫通型タンパク質CLDN18.2を標的として結合するキメラIgG1モノクローナル抗体です。CLDN18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がん患者に対する一次治療として、フルオロピリミジンおよびプラチナ製剤を含む化学療法との併用療法で承認を取得されたファーストインクラスの抗CLDN18.2モノクローナル抗体です。
ゾルベツキシマブは、日本、英国、韓国、米国、カナダ、ブラジル、中国を含む世界中の多くの国と地域で承認を取得しており、さらに欧州連合(EU)に加盟している全27カ国の他、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーで有効な欧州委員会から販売承認を取得済みです。
上記の承認取得は、第III相GLOW試験およびSPOTLIGHT試験の結果に基づいています。
GLOW 試験および SPOTLIGHT 試験において、スクリーニングされた全患者の38%、および中国人患者の約 35%が、CLDN18の免疫組織化学染色において腫瘍細胞の 75%以上で中等度から強度の染色強度を示し3,4、CLDN18.2 陽性と判定されました。ゾルベツキシマブによる治療が有益と考えられるCLDN18.2陽性の胃がん患者を同定するために、免疫組織化学染色コンパニオン診断薬(Companion diagnostics:CDx)VENTANA® CLDN18 (43-14A) RxDx アッセイを使用します3,4。ゾルベツキシマブは、がん細胞表面のCLDN18.2に結合することにより作用します。この結合相互作用は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)と補体依存性細胞傷害(CDC)という2つの異なる免疫系経路を活性化することにより、がん細胞死を誘導します15。
アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えることを目指すグローバルライフサイエンス企業です。私たちは、がんや、眼科・泌尿器疾患、免疫、ウィメンズヘルスなどの多様な領域において、革新的な治療法を提供しています。研究開発プログラムを通じて、アンメットメディカルニーズの高い疾患領域において新たなヘルスケアソリューションを開拓しています。アステラス製薬の詳細については、www.astellas.comをご覧ください。
注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。
参考文献
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2. Shitara K, Xu R-H, Moran DM, et al. Global prevalence of CLDN18.2 in patients with locally advanced (LA) unresectable or metastatic gastric or gastroesophageal junction (mG/GEJ) adenocarcinoma: Biomarker analysis of two zolbetuximab phase 3 studies (SPOTLIGHT and GLOW). J Clin Oncol. 2023;41:4035.
3. Shitara K, Lordick F, Bang Y-J, et al. Zolbetuximab plus mFOLFOX6 in patients with CLDN18.2-positive, HER2-negative, untreated, locally advanced unresectable or metastatic gastric or gastro-oesophageal junction adenocarcinoma (SPOTLIGHT): a multicentre, randomised, double-blind, phase 3 trial. The Lancet. 2023;401(10389):1655-1668.
4. Shah MA, Shitara K, Ajani JA, et al. Zolbetuximab plus CAPOX in CLDN18.2-positive gastric or gastroesophageal junction adenocarcinoma: the randomized, phase 3 GLOW trial. Nat Med. 2023;29(8):2133-2141.
5. World Health Organization, International Agency for Research on Cancer. Globocan China Factsheet. Available at: https://gco.iarc.who.int/media/globocan/factsheets/populations/160-china-fact-sheet.pdf Last accessed: January 2025.
6. Astellas data on file. CancerMPact® Treatment Architecture - Gastric Cancer, China. Published May 2023. Based on fieldwork conducted in March 2023.
7. Li H, Zhang H, Zhang H, et al. Survival of gastric cancer in China from 2000 to 2022: A nationwide systematic review of hospital-based studies. J Glob Health. 2022;12:11014.
8. Barra WF, Moreira FC, Pereira Cruz AM, et al. GEJ cancers: gastric or esophageal tumors? Searching for the answer according to molecular identity. Oncotarget. 2017;8(61):104286-104294.
9. American Cancer Society. About esophagus cancer (03-20-2020). Available at: https://www.cancer.org/content/dam/CRC/PDF/Public/8614.00.pdf. Last accessed: January 2025.
10. American Cancer Society. Stomach Cancer Early Detection, Diagnosis, and Staging. Signs and Symptoms of Stomach Cancer (10-02-2024). Available at https://www.cancer.org/cancer/stomach-cancer/detection-diagnosis-staging/signs-symptoms.html. Last accessed: January 2025.
11. National Cancer Institute. Stomach Cancer Symptoms (10-30-2024). Available at: https://www.cancer.gov/types/stomach/symptoms. Last accessed: January 2025.
12. The Royal Marsden. Stomach cancer symptoms: What are the signs of gastric cancer? (05-23-2022). Available at: https://www.royalmarsden.nhs.uk/private-care/news-and-blogs/stomach-cancer-symptoms-what-are-signs-gastric-cancer. Last accessed: January 2025.
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15. Sahin U, Türeci Ö, Manikhas G, et al. FAST: a randomised phase II study of zolbetuximab (IMAB362) plus EOX versus EOX alone for first-line treatment of advanced CLDN18.2-positive gastric and gastro-oesophageal adenocarcinoma. Ann Oncol. 2021;32(5):609-19.