アステラス製薬株式会社(本社:東京、以下「アステラス製薬」)は、Pfizer Inc.(本社:米国ニューヨーク州、以下、「Pfizer」)と共同で開発を進めている抗体-薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)であるパドセブTM(一般名:エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組換え))とMSD株式会社の抗PD-1抗体キイトルーダ®(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))の併用療法について、本日、日本で根治切除不能な尿路上皮癌に対する一次治療として、適応追加に関する承認を取得しました。本併用療法は、根治切除不能な尿路上皮癌に対する一次治療における標準治療である、白金製剤を含む化学療法に代わる、日本で最初の治療選択肢となります。本適応追加に関する承認申請に対し、厚生労働省から優先審査品目の指定を受けていました1。
日本では、膀胱がんは9番目に多いがんであり、2022年には34,500人以上が新たに膀胱がんと診断され、11,000人以上が死亡しています2。特にがんが進行した状態や転移した状態の転帰は不良であり、グローバルのデータに基づく5年生存率は、局所進行性尿路上皮がんで39%、転移性尿路上皮がんで8%と、特に低くなっています3。
本承認取得は、治療歴のない局所進行性または転移性尿路上皮がん(locally advanced or metastatic urothelial cancer:la/mUC)患者を対象に、エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用療法群(以下、「併用療法群」)の有効性と安全性を、白金製剤を含む化学療法群(以下、「化学療法群」)と比較した第III相EV-302試験(KEYNOTE-A39試験)の結果に基づいています4。
全生存期間(overall survival:OS)の中央値は、併用療法群で31.5カ月(95%信頼区間[Confidence Interval:CI]:25.4-未到達)、化学療法群で16.1カ月(95%CI:13.9-18.3)であり、併用療法群は化学療法群と比較して死亡リスクを53%減少させました(ハザード比[Hazard Ratio:HR]=0.47、95%CI:0.38-0.58、P<0.00001)。無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の中央値は、併用療法群で12.5カ月(95%CI:10.4-16.6)、化学療法群で6.3カ月(95%CI:6.2-6.5)でした。併用療法群は、化学療法群と比較して、がんの進行または死亡のリスクを55%減少させました(HR=0.45、95%CI:0.38-0.54、P<0.00001)。併用療法群と関連のあるグレード3以上の有害事象(3%以上)は、斑状丘疹状皮疹、高血糖、好中球減少症、末梢性感覚ニューロパチー、下痢、貧血でした。EV-302試験における併用療法群の安全性は、以前に報告したシスプラチン不適応の治療歴のないla/mUC患者を対象に実施したEV-103試験と同様の結果で、新たな安全性上の問題は確認されませんでした。EV-302試験において、約30%の患者が化学療法を完了した後に、抗PD-L1抗体のアベルマブによる維持療法に移行しました。これは実際の臨床診療を反映しています4。本試験の結果は2023年欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology:ESMO)で発表され、New England Journal of Medicineに掲載されました4。
本併用療法に関して、米国では2023年12月に米国食品医薬品局(FDA)から承認を取得し、欧州では2024年8月に欧州委員会(European Commission:EC)から販売承認を取得しました。
アステラス製薬は今回の承認取得を通じて、患者さんに新たな治療選択肢を提供することにより、アンメットメディカルニーズの高い尿路上皮がんの治療に一層貢献していきます。
本件によるアステラス製薬の業績への影響は、通期(2025年3月期)連結業績予想に織り込み済みです。
以上
EV-302試験(NCT04223856)について
EV-302試験は、治療歴のないla/mUC患者を対象として、エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用療法と化学療法を比較評価する非盲検無作為化第III相試験です。PD-L1の発現程度に関係なく、シスプラチンまたはカルボプラチンを用いた化学療法に適応の、治療歴のないla/mUC患者886人が登録されました。被験者はエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法群、または化学療法群に無作為に割り付けられました。本試験の主要評価項目は、OSと盲検下独立中央判定(Blinded independent Central Review:BICR)によるRECIST v1.1に基づくPFSです。副次評価項目には、BICRによるRECIST v1.1に基づく客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)、および安全性が含まれます4。
本試験は、尿路上皮がんやその他の固形がんの複数のステージにおいて、この併用療法を評価する広範にわたるプログラムの一部です。本試験の結果は、2023年欧州臨床腫瘍学会で発表され、New England Journal of Medicineに掲載されました4。
膀胱がんと尿路上皮がんについて
尿路上皮がんまたは膀胱がんは、尿道、膀胱、尿管、腎盂、およびその他の臓器の内側を覆う尿路上皮細胞で発生します5。尿路上皮がんは、膀胱がんの90%を占め、腎盂、尿管および尿道にもみられます6,7。がんが周囲の臓器や筋肉に転移している場合、それは局所進行疾患と呼ばれます8。がんが体の他の部分に転移した場合、それは転移性疾患と呼ばれます9。診断時に約12%の症例が局所進行性または転移性尿路上皮がんと診断されています10。
PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組み換え))について
エンホルツマブ ベドチンは、ほぼ全ての尿路上皮がん細胞に発現し、細胞間の接着に関連するタンパク質であるネクチン-4を標的とするファーストインクラスのADCです11,12。非臨床試験データから、エンホルツマブ ベドチンの抗腫瘍活性は、がん細胞上でエンホルツマブ ベドチンがネクチン-4に結合して標的細胞内に取り込まれると細胞障害性物質であるモノメチルアウリスタチンE(Monomethyl auristatin E:MMAE)が放出され、細胞増殖抑制(細胞周期停止)および細胞死(アポトーシス)が生じることによることが示唆されています11。
PADCEVTMは日本において、がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌への単剤療法、ならびに根治切除不能な尿路上皮癌に対する一次治療としてのKEYTRUDA®との併用療法について、適応を取得しています13。
アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、世界70カ国以上で事業活動を展開している製薬企業です。最先端のバイオロジーやモダリティ/テクノロジーの組み合わせを駆使し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいます(Focus Areaアプローチ)。さらに、医療用医薬品(Rx)事業で培った強みをベースに、最先端の医療技術と異分野のパートナーの技術を融合した製品やサービス(Rx+®)の創出にも挑戦しています。アステラス製薬は、変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えていきます。アステラス製薬の詳細については、(https://www.astellas.com/jp/)をご覧ください。
Pfizer、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAとの提携について
Pfizerとアステラス製薬は、治療歴のない転移性尿路上皮がん患者を対象に、PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン)とMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAのKEYTRUDA®(ペムブロリズマブ)の併用療法を評価するために、臨床開発の提携契約を締結しています。KEYTRUDA®はMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(米国とカナダ以外ではMSD)の子会社であるMerck Sharp & Dohme Corp.の登録商標です。
注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。
参考資料
1 Pharmaceuticals and Medical Devices Agency. Drug Reviews. Available at:
https://www.pmda.go.jp/english/review-services/reviews/0001.html. Last accessed: September 2024.
2 International Agency for Research on Cancer. Global Cancer Observatory. Cancer Today: 2022. Available at: https://gco.iarc.who.int. Last accessed: August 2024.
3 National Cancer Institute. Bladder Cancer Prognosis and Survival Rates. Available at: https://www.cancer.gov/types/bladder/survival. Last accessed: September 2024.
4 Powles T, et al. Enfortumab Vedotin and Pembrolizumab in Untreated Advanced Urothelial Cancer. N Engl J Med. 2024;390:875-888.
5 National Cancer Institute. What is bladder cancer? (February 2023) Available at:
https://www.cancer.gov/types/bladder. Last accessed: September 2024.
6 Leow JJ, et al. Optimal management of upper tract urothelial carcinoma: Current perspectives. Onco Targets Ther. 2020;13:1-15.
7 Petros FG. Epidemiology, clinical presentation, and evaluation of upper-tract urothelial carcinoma. Transl Androl Urol. 2020;9(4):1794-8.
8 National Cancer Institute. NCI dictionary of cancer terms: Locally advanced cancer. Available at:
https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/locally-advanced-cancer. Last accessed: September 2024.
9 American Cancer Society. If you have bladder cancer. (March 2024). Available at:
https://www.cancer.org/cancer/types/bladder-cancer/if-you-have-bladder-cancer.html. Last accessed: September 2024.
10 National Cancer Institute. Cancer stat facts: bladder cancer. Available at:
https://seer.cancer.gov/statfacts/html/urinb.html. Last accessed: September 2024.
11 European Medicines Agency. PADCEV EMA SmPC. Available at:
https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/padcev-epar-product-information_en.pdf. Last accessed: September 2024.
12 Challita-Eid PM, Satpayev D, Yang P, et al. Enfortumab vedotin antibody-drug conjugate targeting nectin-4 is a highly potent therapeutic agent in multiple preclinical cancer models. Cancer Res. 2016;76(10):3003-13.
13 Astellas Press Release. Japan’s MHLW Approves PADCEV® (enfortumab vedotin) for Advanced Urothelial Cancer. Available at:
https://www.astellas.com/en/news/17206. Last accessed: September 2024.