- 40年近くにわたり進行性尿路上皮がんの標準治療であった
白金製剤を含む化学療法に代わる、欧州で最初の治療選択肢1 -
アステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:岡村 直樹、以下「アステラス製薬」)は、Pfizer Inc.(本社:米国ニューヨーク州、以下、「Pfizer」)と共同で開発を進めている抗体-薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)であるPADCEVTM(一般名:エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組換え))と、Merck & Co., Inc., Rahway, N.J., USA(米国とカナダ以外ではMSD)の抗PD-1抗体KEYTRUDA®(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))との併用療法について、欧州委員会(European Commission:EC)が、白金製剤適応の切除不能または転移性の尿路上皮がん患者における一次治療の適応追加に関して承認したことをお知らせします。
本承認取得は、エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用群が、白金製剤を含む化学療法群と比較して、全生存期間(overall survival:OS)の中央値を約2倍に延長し、無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)を有意に延長することを示した第III相EV-302試験(KEYNOTE-A39試験)の結果に基づくものです1。
欧州では、膀胱がんは5番目に多いがんです2。欧州連合(EU)において165,000人以上が毎年新たに膀胱がんと診断され、50,000人以上が死亡しています3。がんが進行した状態や転移した状態で診断される患者が多く、生存率が特に低くなっています4,5。
治療歴のない局所進行性または転移性の尿路上皮がん(locally advanced or metastatic urothelial cancer:la/mUC)患者を対象としたEV-302試験において、OSの中央値は、併用療法群で31.5カ月(95%信頼区間[Confidence Interval:CI]:25.4-未到達)、化学療法群で16.1カ月(95%CI:13.9-18.3)であり、併用療法群は化学療法群と比較して死亡リスクを53%減少させました(ハザード比[Hazard Ratio:HR]=0.47、95% CI:0.38-0.58、P<0.00001)。PFSの中央値は、併用療法群で12.5カ月(95%CI:10.4-16.6)、化学療法群で6.3カ月(95%CI:6.2-6.5)でした。併用療法群は、化学療法群と比較して、がんの進行または死亡のリスクを55%減少させました(HR=0.45、95%CI:0.38-0.54、P<0.00001)。EV-302試験において、約30%の患者が化学療法を完了した後に、抗PD-L1抗体のアベルマブによる維持療法に移行しました。これは実際の臨床診療を反映しています1。本試験の結果は2023年欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology:ESMO)で発表され、New England Journal of Medicineに掲載されました1。
ECからの販売承認は、EUに加盟している全27ヵ国の他、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーにも適用されます。最近更新された欧州医学臨床腫瘍学会と欧州泌尿器科学会の臨床ガイドラインに準拠しており、ガイドラインでは、局所進行性または転移性尿路上皮がんの一次治療としてエンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用を推奨しています6,7。アステラス製薬は、本併用療法を、必要とする患者さんに一日も早く届けるために、EU内の各国の規制当局や医療技術評価機関と緊密に連携しています。
本併用療法に関して、2023年12月に、米国食品医薬品局(FDA)から承認を取得しました。欧州では2022年4月に、白金製剤を含む化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤による治療歴のある局所進行性または転移性尿路上皮がん患者における単剤療法として、エンホルツマブ ベドチンはECから販売承認を取得しました8,9。
本件によるアステラス製薬の業績への影響は、通期(2025年3月期)連結業績予想に織り込み済みです。
詳細は2024年7月29日に開示したプレスリリース「抗体-薬物複合体PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン) 進行性尿路上皮がん患者の一次治療を対象としたペムブロリズマブとの併用療法について欧州CHMPが販売承認勧告を採択」をご覧ください。
以上
EV-302試験(NCT04223856)について
EV-302試験は、治療歴のないla/mUC患者を対象として、エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用療法と化学療法を比較評価する非盲検無作為化第III相試験です。PD-L1の発現程度に関係なく、シスプラチンまたはカルボプラチンを用いた化学療法に適応の未治療la/mUC患者886人が登録されました。被験者はエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法群、または化学療法群に無作為に割り付けられました。本試験の主要評価項目は、OSと盲検下独立中央判定(Blinded independent Central Review:BICR)によるRECIST v1.1に基づくPFSです。副次評価項目には、BICRによるRECIST v1.1に基づく客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)、および安全性が含まれます1。
併用療法群と関連のあるグレード3以上の有害事象(3%以上)は、斑状丘疹状皮疹、高血糖、好中球減少症、末梢性感覚ニューロパチー、下痢、貧血でした。EV-302試験における併用療法群の安全性は、以前に報告したシスプラチン不適応のla/mUC患者を対象に実施したEV-103試験と同様の結果で、新たな安全性上の問題は確認されませんでした1。
本試験は、尿路上皮がんやその他の固形がんの複数のステージにおいて、この併用療法を評価する広範にわたるプログラムの一部です。本試験の結果は、2023年欧州臨床腫瘍学会で発表され、New England Journal of Medicineに掲載されました1。
EV-302試験の詳細は、www.clinicaltrials.gov.を参照ください。
膀胱がんと尿路上皮がんについて
尿路上皮がんまたは膀胱がんは、尿道、膀胱、尿管、腎盂、およびその他の臓器の内側を覆う尿路上皮細胞で発生します10。尿路上皮がんは、膀胱がんの90%を占め、腎盂、尿管および尿道にもみられます11,12。がんが手術によって切除できない場合、それは切除不能と呼ばれます13。がんが周囲の臓器や筋肉に転移している場合、それは局所進行疾患と呼ばれます14。がんが体の他の部分に転移した場合、それは転移性疾患と呼ばれます15。症例の約12%が切除不能なla/mUCと診断されています4。
世界では年間約614,000人が膀胱がんと診断され、年間約220,000人が死亡しています16。欧州では、膀胱がんは5番目に多いがんで、EUにおいて165,000人以上が毎年新たに膀胱がんと診断されます2,3。継続的な治療と観察が必要になるため、他のがん腫と比べて治療費が高額になると言われています17。
PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン)について
エンホルツマブ ベドチンは、ほぼ全ての尿路上皮がん細胞に発現し、細胞間の接着に関連するタンパク質であるネクチン-4を標的とするファーストインクラスのADCです9,18。非臨床試験データから、エンホルツマブ ベドチンの抗腫瘍活性は、がん細胞上でエンホルツマブ ベドチンがネクチン-4に結合して標的細胞内に取り込まれると細胞障害性物質であるモノメチルアウリスタチンE(Monomethyl auristatin E:MMAE)が放出され、細胞増殖抑制(細胞周期停止)および細胞死(アポトーシス)が生じることによることが示唆されています9。
PADCEVTMはEUにおいて、白金製剤を含む化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤による治療歴のある局所進行性または転移性尿路上皮がん患者への単剤療法、ならびに白金製剤適応の切除不能または転移性の尿路上皮がん患者における一次治療を対象としたKEYTRUDA®との併用療法について、適応を取得しています9。
アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、世界70カ国以上で事業活動を展開している製薬企業です。最先端のバイオロジーやモダリティ/テクノロジーの組み合わせを駆使し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいます(Focus Areaアプローチ)。さらに、医療用医薬品(Rx)事業で培った強みをベースに、最先端の医療技術と異分野のパートナーの技術を融合した製品やサービス(Rx+®)の創出にも挑戦しています。アステラス製薬は、変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えていきます。アステラス製薬の詳細については、(https://www.astellas.com/jp/)をご覧ください。
Pfizer、Merck & Co., Inc., Rahway, N.J., USAとの提携について
Pfizerとアステラス製薬は、治療歴のない転移性尿路上皮がん患者を対象に、PADCEVTM(エンホルツマブ ベドチン)とMerck & Co., Inc., Rahway, N.J., USAのKEYTRUDA®(ペムブロリズマブ)の併用療法を評価するために、臨床開発の提携契約を締結しています。KEYTRUDA®はMerck & Co., Inc., Rahway, N.J., USA(米国とカナダ以外ではMSD)の子会社であるMerck Sharp & Dohme Corp.の登録商標です。
注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。
参考文献
1 Powles T, et al. Enfortumab vedotin and pembrolizumab in untreated advanced urothelial cancer. N Engl J Med. 2024;390:875-888.
2 International Agency for Research on Cancer. Global Cancer Observatory. WHO Europe Region (EURO) Factsheet. Available at: https://gco.iarc.who.int/media/globocan/factsheets/populations/994-who-europe-euro-fact-sheet.pdf. Last accessed: August 2024.
3 International Agency for Research on Cancer. Global Cancer Observatory. Cancer Today: 2022. Available at: https://gco.iarc.who.int. Last accessed: August 2024.
4 National Cancer Institute. Cancer stat facts: bladder cancer. Available at: https://seer.cancer.gov/statfacts/html/urinb.html. Last accessed: August 2024.
5 National Cancer Institute. Bladder Cancer Prognosis and Survival Rates. Available at: https://www.cancer.gov/types/bladder/survival. Last accessed: August 2024.
6 Powles T, et al. ESMO Clinical Practice Guideline interim update on first-line therapy in advanced urothelial carcinoma. Annals of Oncology. 2024;35(6):485-490.
7 Masson-Lecomte A, et al. EAU guidelines on upper urinary tract urothelial carcinoma. (April 2024) Available at: https://uroweb.org/guidelines/upper-urinary-tract-urothelial-cell-carcinoma. Last accessed: August 2024.
8 U.S. Food & Drug Administration. FDA approves enfortumab vedotin-ejfv with pembrolizumab for locally advanced or metastatic urothelial cancer. Available at: https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-enfortumab-vedotin-ejfv-pembrolizumab-locally-advanced-or-metastatic-urothelial-cancer. Last accessed: August 2024.
9 European Medicines Agency. PADCEV EMA SmPC. Available at: https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/padcev-epar-product-information_en.pdf. Last accessed: August 2024.
10 National Cancer Institute. What is bladder cancer? (February 2023) Available at: https://www.cancer.gov/types/bladder. Last accessed: August 2024.
11 Leow JJ, et al. Optimal management of upper tract urothelial carcinoma: Current perspectives. Onco Targets Ther. 2020;13:1-15.
12 Petros FG. Epidemiology, clinical presentation, and evaluation of upper-tract urothelial carcinoma. Transl Androl Urol. 2020;9(4):1794-8.
13 National Cancer Institute. NCI dictionary of cancer terms: Unresectable. Available at: https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/unresectable. Last accessed: August 2024.
14 National Cancer Institute. NCI dictionary of cancer terms: Locally advanced cancer. Available at: https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/locally-advanced-cancer. Last accessed: August 2024.
15 American Cancer Society. If you have bladder cancer. (March 2024). Available at: https://www.cancer.org/cancer/types/bladder-cancer/if-you-have-bladder-cancer.html. Last accessed: August 2024.
16 International Agency for Research on Cancer. Global Cancer Observatory. Bladder Factsheet. Available at: https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/30-Bladder-fact-sheet.pdf. Last accessed: August 2024.
17 Aly A, et al. The Real-World Lifetime Economic Burden of Urothelial Carcinoma by Stage at Diagnosis. J Clin Pathw. 2020;6(4):51-60.
18 Challita-Eid PM, et al. Enfortumab vedotin antibody-drug conjugate targeting nectin-4 is a highly potent therapeutic agent in multiple preclinical cancer models. Cancer Res. 2016;76(10):3003-13.