- 欧州委員会で承認された場合、欧州でファーストインクラスの
抗CLDN18.2モノクローナル抗体となる可能性あり -
- 欧州委員会が2024年10月までに、最終的な承認可否を判断する見込み -
アステラス製薬株式会社(本社:東京、以下「アステラス製薬」)は、Claudin(CLDN)18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの治療薬として開発中のゾルベツキシマブについて、欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)の欧州医薬品委員会(Committee for Medicinal Products for Human Use:CHMP)が、7月26日(現地時間)に販売承認勧告を採択したことをお知らせします。ゾルベツキシマブは、CLDN18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療薬として、フッ化ピリミジンおよび白金製剤を含む化学療法との併用が推奨されています1。今後、欧州委員会(European Commission:EC)で承認された場合、ゾルベツキシマブは、欧州でファーストインクラスの抗CLDN18.2モノクローナル抗体となる可能性があります。
胃がんは、欧州においてがん関連死亡原因の第6位であり、2022年に95,000人以上が胃がんにより死亡しました2,3。早期胃がんの症状は、より一般的な胃に関連する疾患と重複することが多いため、進行期または転移期に胃がんと診断されることが多いと言われています4。欧州の胃がん患者の平均5年生存率は全段階で26%であり、進行を遅らせ、寿命を延ばすことができる新たな治療選択肢が求められています5。
今回のCHMPによる勧告は、CLDN18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療を目的とした第III相SPOTLIGHT試験およびGLOW試験の結果に基づいており、それぞれLancet誌および、Nature Medicine誌に掲載されています6,7。75%以上の腫瘍細胞において、細胞膜がCLDN18の免疫組織化学染色で中程度~強度の染色を示す場合CLDN18.2陽性と判定され、承認された免疫組織化学染色コンパニオン診断薬(Companion diagnostics:CDx)または医療機器を用いて確認される必要があります6,7。アステラス製薬はロシュと提携しており、ゾルベツキシマブによる治療が有益と考えられるCLDN18.2陽性の胃がん患者を同定するために、ゾルベツキシマブのCDxであるベンタナ OptiView CLDN18(43-14A)RxDxアッセイを使用します8。本CDxは、ノーティファイドボディ(認証機関)*で審査中です。
CHMPの販売承認勧告に従い、欧州連合(EU)に加盟している全27ヵ国の他、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーで医薬品を承認する権限を持つECが2024年10月までに、最終的な承認可否を判断する見込みです9。
2024年3月26日に、日本においてビロイ®点滴静注用100mg(一般名:ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え))は、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌を効能・効果として、製造販売承認を取得しました。ビロイ®は、上記適応症において、世界で初めて承認を受けた抗CLDN18.2モノクローナル抗体となりました10。アステラス製薬は、EMAに加えて複数の国と地域の規制当局にゾルベツキシマブの承認申請を提出しており、当局で審査中です。
アステラス製薬はグローバルで、アンメットメディカルニーズの高い胃腺がんおよび食道胃接合部腺がん患者さんに新たな治療選択肢を提供することを目指しています。
本件によるアステラス製薬の業績への影響は、通期(2025年3月期)連結業績予想に織り込み済みです。
以上
*ノーティファイドボディ(認証機関):EU各加盟国当局より適合性評価実施の技術的能力と適格性を有していると判定され、実際に評価を実施する第三者機関
ゾルベツキシマブについて
ゾルベツキシマブは、開発中の膜貫通型タンパク質CLDN18.2を標的として結合するキメラIgG1モノクローナル抗体です。ゾルベツキシマブは、がん細胞表面のCLDN18.2に結合することにより作用します。この結合相互作用は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)と補体依存性細胞傷害(CDC)という2つの異なる免疫系経路を活性化することにより、がん細胞死を誘導します11。腫瘍細胞の75%以上において、細胞膜がCLDN18の免疫組織化学染色で中等度から強度の染色を示す場合、CLDN18.2陽性と判定されます。75%以上の腫瘍細胞において、細胞膜がCLDN18の免疫組織化学染色で中程度~強度の染色を示す場合CLDN18.2陽性と判定され、承認された免疫組織化学染色コンパニオン診断薬(Companion diagnostics:CDx)または医療機器を用いて、十分な経験を持つ病理医または検査機関によって確認される必要があります6,7。SPOTLIGHT試験およびGLOW試験において、スクリーニングされた患者の約38%が、CLDN18.2陽性と判定されました6,7。
切除不能な局所進行性または転移性胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんについて
2022年、欧州全体で135,000件を超える胃がんの新規症例が診断されました3。胃がんは欧州においてがん関連死亡原因の第6位であり、2022年に95,431人以上が胃がんにより死亡しました2,3。食道胃接合部腺がんは、食道が胃に結合する領域から発生する腺がんです12。早期胃がんの症状は、より一般的な胃に関連する疾患と重複することが多いため、進行期または転移期、つまり腫瘍の発生源から他の組織や臓器に転移した後に胃がんと診断されることが多いと言われています4。
徴候や症状には、消化不良や胸やけ、腹部の痛みや不快感、悪心や嘔吐、食後の胃の膨満感、食欲不振があります4,13。より進行した胃がんの徴候には、原因不明の体重減少、衰弱と疲労、吐血、血便などがあります4,13,14。胃がんおよび食道胃接合部腺がんに関連する危険因子には、高齢、男性、家族歴、ヘリコバクター・ピロリ感染、喫煙、胃食道逆流症などがあります15,16。
第III相SPOTLIGHT試験について
SPOTLIGHT試験(NCT03504397)は、CLDN18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法(オキサリプラチン、ホリナート、フルオロウラシルを組み合わせた療法)群と、プラセボ+mFOLFOX6療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第III相試験です。この試験には、米国、英国、オーストラリア、欧州、南米、アジアの215カ所の医療機関で565人の患者が登録されました。主要評価項目は、プラセボ+mFOLFOX6療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+mFOLFOX6療法群の無増悪生存期間(Progression Free Survival: PFS)です。副次評価項目には全生存期間(Overall Survival: OS)、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、生活の質(Quality of Life: QOL)に関するパラメーターが含まれます6。SPOTLIGHT臨床試験のデータは、2023年1月19日の口頭発表で2023年米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(ASCO GI)中に発表され、その後2023年4月14日にLancet誌に掲載されました6。
第III相GLOW試験について
GLOW試験(NCT03653507)は、CLDN18.2陽性、HER2陰性、切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんおよび食道胃接合部腺がんの一次治療として、ゾルベツキシマブ(IMAB362)+CAPOX療法(カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせた療法)群と、プラセボ+CAPOX療法群を比較して有効性および安全性を検証する、グローバル、多施設、二重盲検無作為化第III相試験です。この試験には、米国、カナダ、英国、欧州、南米、アジアの166カ所で、507人の患者が登録されました。主要評価項目は、プラセボ+CAPOX療法群と比較した、ゾルベツキシマブ+CAPOX療法群のPFSです。副次評価項目には、OS、客観的奏効率、奏効期間、安全性と忍容性、QOLに関するパラメーターが含まれます7。GLOW試験のデータは、2023年3月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズで最初に発表され、2023年6月3日の2023年ASCO年次総会においても口頭発表され、その後2023年7月31日にNature Medicineに掲載されました7。
アステラス製薬株式会社について
アステラス製薬は、世界70カ国以上で事業活動を展開している製薬企業です。最先端のバイオロジーやモダリティ/テクノロジーの組み合わせを駆使し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいます(Focus Areaアプローチ)。さらに、医療用医薬品(Rx)事業で培った強みをベースに、最先端の医療技術と異分野のパートナーの技術を融合した製品やサービス(Rx+®)の創出にも挑戦しています。アステラス製薬は、変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの「価値」に変えていきます。アステラス製薬の詳細については、(https://www.astellas.com/jp/)をご覧ください。
注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。
参考文献
1. European Medicines Agency. VYLOY (zolbetuximab). Available at: www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/vyloy. Last accessed: July 2024.
2. Digestive Cancers Europe. What are Gastric and Oesophageal Cancers? Available at: https://digestivecancers.eu/gastric-esophageal-what/. Last accessed: July 2024.
3. Ferlay J, et al. World Health Organization. International Agency for Research on Cancer. Global Cancer Observatory. Cancer Factsheet – Stomach. Available at: https://gco.iarc.who.int/media/globocan/factsheets/cancers/7-stomach-fact-sheet.pdf. Last accessed: July 2024.
4. American Cancer Society. Stomach Cancer Early Detection, Diagnosis, and Staging (01-22-2021). Available at https://www.cancer.org/cancer/stomach-cancer/detection-diagnosis-staging/signs-symptoms.html. Last accessed: July 2024.
5. Rawla P and Barsouk A. Epidemiology of gastric cancer: global trends, risk factors and prevention. Gastroenterology Rev. 2019;14(1):26-38.
6. Shitara K, et al. Zolbetuximab plus mFOLFOX6 in patients with CLDN18.2-positive, HER2-negative, untreated, locally advanced unresectable or metastatic gastric or gastro-oesophageal junction adenocarcinoma (SPOTLIGHT): a multicentre, randomised, double-blind, phase 3 trial. Lancet. 2023;401(10389):1655-1668.
7. Shah MA, et al. Zolbetuximab plus CAPOX in CLDN18.2-positive gastric or gastroesophageal junction adenocarcinoma: the randomized, phase 3 GLOW trial. Nat Med. 2023;29(8):2133-2141.
8. Astellas data on file.
9. European Medicines Agency. Authorisation of medicines. Available at: https://www.ema.europa.eu/en/about-us/what-we-do/authorisation-medicines. Last accessed: July 2024.
10. Astellas press release issued 26 March 2024: Astellas’ VYLOY™ (zolbetuximab) Approved in Japan for Treatment of Gastric Cancer. Available at: https://www.astellas.com/en/news/29026. Last accessed: July 2024.
11. Sahin U, et al. FAST: a randomised phase II study of zolbetuximab (IMAB362) plus EOX versus EOX alone for first-line treatment of advanced CLDN18.2-positive gastric and gastro-oesophageal adenocarcinoma. Ann Oncol. 2021;32(5):609-19.
12. American Cancer Society. About esophagus cancer (03-20-2020). Available at: https://www.cancer.org/content/dam/CRC/PDF/Public/8614.00.pdf. Last accessed: July 2024.
13. National Cancer Institute. Stomach Cancer Symptoms (05-31-2023). Available at: https://www.cancer.gov/types/stomach/symptoms. Last accessed: July 2024.
14. The Royal Marsden. Stomach cancer symptoms: What are the signs of gastric cancer? (May 2022). Available at: https://www.royalmarsden.nhs.uk/private-care/news-and-blogs/stomach-cancer-symptoms-what-are-signs-gastric-cancer. Last accessed: July 2024.
15. American Cancer Society. Stomach cancer causes, risk factors and prevention (01-22-2021). Available at: https://www.cancer.org/content/dam/CRC/PDF/Public/8839.00.pdf. Last accessed: July 2024.
16. American Cancer Society. Esophageal cancer causes, risk factors, and prevention (06-09-2020). Available at: https://www.cancer.org/content/dam/CRC/PDF/Public/8615.00.pdf. Last accessed: July 2024.