- 既存のがん免疫療法が有効でない患者さんに治療薬を届けることを目指して -

 アステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:安川 健司、以下「アステラス製薬」)は、Sutro Biopharma, Inc.(本社:米国カリフォルニア州、CEO: William J. Newell、以下「Sutro社」)と、抗体-薬物複合免疫賦活薬(immunostimulatory Antibody-Drug Conjugates, 以下「iADC」)の共同研究・開発に関する全世界における戦略的提携およびライセンスに関する契約を本日締結しました。Sutro社の抗体-薬物複合技術と、アステラス製薬のがん領域におけるグローバルな研究開発ケイパビリティを組み合わせ、次世代モダリティiADCの治療薬創製を目指します。

 免疫チェックポイント阻害剤を含む主要ながん免疫療法の課題は、免疫細胞が浸潤しづらいがん微小環境*1にある非炎症性腫瘍に対して効果を得にくいことです。承認されている免疫チェックポイント阻害剤が単剤投与で有効性を示すのは、様々ながん種においてわずか20%程度と言われています1

 今回の戦略的提携では、既存の治療法が有効でない患者さんに治療薬を届けるため、非炎症性腫瘍に効果的かつ効率的にアプローチできる可能性があると考えられる次世代モダリティのiADCの創製に取り組みます。免疫を活性化する免疫賦活剤に加え、免疫原性細胞死*2(immunogenic cell death)を誘導する抗がん剤を抗体に結合させたiADCは、より強力な抗がん作用を発揮する可能性を有します。

 本提携により、アステラス製薬とSutro社は両社の強みを生かし、3つの異なる標的に対するiADCの創製を加速します。Sutro社は候補化合物を特定するための研究および前臨床研究を行い、アステラス製薬はその後の臨床開発を実施します。Sutro社は、抗体と薬物を結合させる高度な技術と、候補となる抗体および結合可能な抗がん剤、免疫賦活剤を持ちます。アステラス製薬は、抗体および低分子化合物の領域における研究、開発および商業化に関するグローバルでのケイパビリティの強みを持ちます。iADCは、現在広く有効な治療法のないがん患者さんに対して新たな治療選択肢を提供する可能性を秘めています。

 Sutro社のCEOであるWilliam J. Newellは、「この新しいモダリティについて、がん免疫に豊富な専門性を持つ先端のバイオ医薬品企業であるアステラス製薬と協働できることを嬉しく思います。iADCは、既存の 抗体-薬物複合体(Antibody-Drug Conjugated: ADC) をはるかに超えた可能性を秘めています。 Sutro社独自の結合技術により、がん細胞を直接傷害できる強力な抗がん剤と、特定のがん細胞に対する免疫応答を局所的に刺激しうる免疫賦活剤の両薬剤を、抗体の特定の部位へ正確に結合することが可能になります。非炎症性腫瘍を治療するためにこのアプローチの可能性を共同で探求し、既存のがん免疫療法が有効ではない患者さんに新しい薬物療法をもたらすことを楽しみにしています」と述べています。

 アステラス製薬の代表取締役副社長 経営戦略担当の岡村直樹は、「アステラス製薬は、がん免疫を研究開発戦略上のPrimary Focusの一つに位置づけており、既存の免疫チェックポイント阻害剤に反応しない患者さんにも効果がある治療薬を届けることを目指しています。Sutro社は、新たなモダリティであるiADCに関する独自の技術を持ち、この領域を牽引する企業です。今回のSutro社との戦略的提携により、パイプラインがより充実し、がん免疫療法における選択肢をさらに広げることができるものと期待しています」と述べています。

 本契約に基づき、アステラス製薬は、契約一時金として9,000万米ドルをSutro社に支払います。さらにアステラス製薬は、臨床開発、商業化の進捗に応じたマイルストンとして製品ごとに最大4億2,250万米ドルを支払う可能性があり、また、グローバルでの売上に応じた10%台前半から10%台半ばのロイヤリティを支払う可能性があります。マイルストンとロイヤリティの支払い条件は、米国におけるコストと利益を分担するSutro社のオプション行使時に変動します。

 Sutro社には、米国で製品候補を開発および商業化するためのコストと利益を分担するオプションがあります。 Sutro社が特定の製品候補に対してこのオプションを行使した場合、アステラス製薬とSutro社は米国における共同開発と共同商業化のコストを均等に分担し、共同商業化から生じる利益と損失を均等に分配します。

 なお、本件によるアステラス製薬の通期(2023年3月期)連結業績への影響は織り込み済みです。

以上

 

*1: がんは、免疫から身を守ったり、増殖・転移を行いやすくしたり、自身が生存に有利な周辺環境をつくり出す。この環境のことを「がん微小環境」と呼ぶ。
*2: 化学療法によってがん抗原が放出され、樹状細胞ががん抗原を捕獲し提示、T細胞が活性化されがん細胞を死滅させるという「がん免疫サイクル」を引き起こすがん細胞死のこと。がん免疫サイクルについてはアステラス製薬のR&Dミーティング (2020年12月開催)の資料を参照。(https://www.astellas.com/system/files/rdmeeting2020_pre_jp.pdf)。

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