アステラス製薬株式会社(本社:東京、以下「アステラス製薬」)は、Frequency Therapeutics, Inc.(本社:米国マサチューセッツ州、以下「Frequency社」)と、Frequency社が有する感音難聴を対象としたプログラムであるFX-322の開発および商業化に関し、米国を除く全世界における独占的ライセンス契約を締結しました。

 本契約に基づき、アステラス製薬は契約地域においてFX-322の開発、商業化のための権利を取得し、これらに要する費用を負担します。Frequency社は米国における開発、商業化の権利を留保します。両社は共同で、グローバルでの臨床試験を行うほか、商業化のために必要な準備を進めます。アステラス製薬はFrequency社に対し、契約一時金80百万ドルを支払います。また、開発と商業化の進捗に応じたマイルストンとして最大総額545百万ドルに加え、契約地域での売上に応じたロイヤリティを支払う可能性があります。

 FX-322については、米国においてFrequency社による臨床第I/II相試験が終了しています。FX-322の単回鼓室内投与において重篤な有害事象はみられず、良好な忍容性が確認されました。また、複数の患者において聴覚機能の改善がみられました。Frequency社は、2019年第4四半期に前期第II相試験を開始する予定です。

 FX-322は低分子化合物を組み合わせた新薬候補物質で、内耳に存在する前駆細胞を有毛細胞へ分化させることにより、聴力の回復を促すことが期待されます。感音難聴は内耳の有毛細胞の損傷や欠落が主な原因で発症します。有毛細胞は一度障害を受けると自発的に再生することはできません。しかし、静止状態にある内耳の前駆細胞は有毛細胞に増殖・分化できる事がわかっています。

 世界保健機関(WHO)によると、全世界で8億人以上の成人が難聴であると推計されています。また、米国の国立衛生研究所(NIH)の推計では、難聴の約90%は感音難聴に起因するものとしています。現在、感音難聴に対して承認されている標準治療はありません。

 Frequency社のCEOであるDavid Lucchinoは「治療選択肢のない疾患に対して再生のアプローチによる革新的な医薬品を患者さんのもとに届けていくために、グローバルでの臨床開発と商業化において多くの知識と経験を持つパートナーと協働する機会を得ることができました。私たちは、アステラス製薬と協力してFX-322の開発を進めていくとともに、前駆細胞を活性化させる私たちのプラットフォーム技術の可能性を証明していくことを大変楽しみにしています」と述べています。

 アステラス製薬の代表取締役副社長 経営戦略担当である岡村直樹は、「FX-322は再生の仕組みに注目したプログラムであり、本提携は、最先端の科学、技術を積極的に取り込み、患者さんの価値に変えていくというアステラス製薬の戦略に基づく取り組みです。私たちは今後、世界中の難聴患者さんのアンメットメディカルニーズに応える新たな治療法となり得るFX-322の開発を進めてまいります」と述べています。

 なお、本件による業績への影響は、2020年3月期連結業績予想に織り込み済みです。

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