アステラス製薬株式会社(本社:東京、社長:畑中 好彦、以下「アステラス製薬」)は、Proteostasis Therapeutics, Inc.(本社:米国マサチューセッツ州、以下「Proteostasis社」)と、小胞体ストレス応答を調節する治療薬について、研究、開発及び商業化に関する提携契約を締結しましたので、お知らせします。
細胞内小器官の一つである小胞体は、生命活動に必要なタンパク質の生産工場であり、新しく合成されたタンパク質を正しい立体構造に折り畳むとともに、不適切な高次構造の不良品タンパク質を判別し、修復ないしは分解するなどの品質管理機能を担っています。遺伝的背景、生活習慣や加齢などの要因で、不良品タンパク質が小胞体に蓄積すると、小胞体ストレスと呼ばれる細胞への悪影響が生じます。それに対して、小胞体の品質管理能力を増強させる生体応答反応が起こり、この応答は、「小胞体ストレス応答」(又は、Unfolded Protein Response (UPR))と呼ばれています。小胞体ストレスは、タンパク質構造変性を伴う、遺伝子疾患、神経変性疾患、網膜変性疾患など多くの疾患の原因となりうるものであり、小胞体ストレス応答の機能は、近年急速に注目されています。
本提携において、両社は、Proteostasis社が有するProteostasis Network解析1) とDisease Relevant Translation (DRT™) プラットホーム2) の両技術を活用し、小胞体ストレス応答経路を選択的に調節する化合物を見出し、当該化合物のスクリーニング及びリード化合物の同定を行っていきます。小胞体ストレス応答経路を選択的に調節することにより、細胞のストレス応答の改善や機能の回復を図り、疾患の治療へつなげていきたいと考えています。本提携では、まず、ある遺伝性疾患を対象として共同研究を行っていきますが、同様に小胞体ストレスが関係する様々な疾患への治療応用を目指していきます。
アステラス製薬は、本共同研究の結果として得られる小胞体ストレス応答調節化合物について、全世界を対象地域とする独占的な開発・商業化の権利を有しています。但し、Proteostasis社も全世界を対象地域とする共同開発、及び米国におけるコ・プロモーションの権利を留保しています。
アステラス製薬は、契約一時金としてProteostasis社の転換社債を引き受けます。更に、アステラス製薬は、本提携における共同研究の費用及び研究、開発と売上の達成度に応じたマイルストンの総額として400百万米ドル超に加え、売上に応じたロイヤルティをProteostasis社に支払う可能性があります。
また、アステラス製薬は、本提携において更に新たなプログラムが追加選択された場合、当該2つのプログラムまでは本契約と同等の条件にて、研究、開発及び商業化できる権利を有しています。アステラス製薬が当該権利を行使した場合には、12億米ドル超(上記の400百万米ドル超を含む)を、共同研究の費用及び研究、開発と売上の達成度に応じたマイルストンの総額として、Proteostasis社に支払う可能性があります。更に、売上に応じたロイヤルティをProteostasis社に支払います。
アステラス製薬の上席執行役員・経営戦略担当である安川 健司は、次のように述べています。「Proteostasis社の基盤技術は、差別化された創薬アプローチを可能にするものと期待しており、近年注目度の高い小胞体ストレス応答に関して提携できることを大変嬉しく思います。本提携は、世界最先端の科学を活用できる優秀なサイエンティストと協働しながら新たな価値創造を目指す試みであり、その進捗と成果に期待しています。アステラス製薬は、今後も患者さんに新たな治療の選択肢を提供できる領域や基盤技術への投資をおこなっていきます。」
Proteostasis社のPresident & CEOのMeenu Chhabraは次のように述べています。「多くの革新的な新薬を研究開発してきたアステラス製薬と提携できることを大変光栄に思います。我々が持つ創薬における新しいアプローチと、アステラス製薬の研究開発に関する知識、経験を活かし、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患に対する新たな治療法を、早期に提供できることを期待しています。」
本提携は、アステラス製薬のイノベーションマネジメント部(通称:AIM)が主導しています。AIMは、前臨床段階における外部イノベーション機会の探索・獲得活動を一層強化・加速するため、2013年10月に新たに設置されました。AIMは、前臨床段階における戦略的な外部提携活動を統括し、外部イノベーションの機会獲得に関する戦略策定、探索、科学性評価、提携交渉などの一連の活動を一気通貫して担い、外部提携活動を戦略的かつ体系的に行っています。
なお、本提携による業績への影響は、2014年10月31日に修正公表した2015年3月期通期業績予想に織り込まれています。
1) タンパク質恒常性維持に関わる重要分子群の発現変動を総合的に解析する技術
2) 疾患関連性の高い細胞評価系を活用し、最適な治療薬の創製を可能とする技術
以上