- 2018 年 Genitourinary Cancers Symposium で発表 -
アステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:畑中 好彦、以下「アステラス製薬」)は、Pfizer Inc.(本社:ニューヨーク州、以下「Pfizer社」)と共同で開発・商業化を進めている経口アンドロゲン受容体阻害薬であるエンザルタミド*1(一般名、製品名:XTANDI®)で、非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象として実施した第III相PROSPER試験において、アンドロゲン除去療法(ADT: androgen deprivation therapy)単独での治療と比較し、ADTとエンザルタミドを併用投与することで、転移および死亡するリスクが統計学的有意に減少したことをお知らせします。無転移生存期間(中央値)は、ADTとエンザルタミドを投与した群では36.6カ月であったのに対し、ADT単独治療群では14.7カ月であり(n=1401; HR = 0.29 [95% CI: 0.24-0.35]; p < 0.0001)、転移および死亡するリスクが71%減少しました。PROSPER試験で得られたこれらのデータは、サンフランシスコで開催される2018年米国臨床腫瘍学会 泌尿生殖器がんシンポジウム(ASCO GU2018: 2018 Genitourinary Cancers Symposium of the American Society of Clinical Oncology)で発表します。
PROSPER試験で得られた結果を受け、アステラス製薬とPfizer社は米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)に追加承認申請を行っています。FDAとEMAは申請書の確認が完了し、申請が受理可能かを判断するための審査期間をそれぞれ設けています。さらに各国の規制当局にもデータを提出しています。
ASCO GU2018で発表をするRobert H. Lurie Comprehensive Cancer Center of Northwestern UniversityのMaha Hussain, M.D.は以下のように述べています。「非転移性去勢抵抗性前立腺がんにおいて、がん転移を極力遅らせることができるよう、画像診断で転移が確認されるまでに用いることが可能な治療薬が米国では強く待ち望まれています。PROSPER試験では、ADTとエンザルタミドを併用投与することで、標準治療であるADT単独治療と比較した場合に、転移するリスクの低下が示され、この治療法は非転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療における新たな選択肢となる可能性があります。」
PROSPER試験では、副次的評価項目として前立腺特異抗原(PSA: prostate-specific antigen)上昇までの期間、新たな抗がん剤治療を行うまでの期間、および全生存期間(OS: overall survival)についても評価しました。ADTとエンザルタミドを投与した群は、ADT単独治療群と比較して、PSA進行のリスクが93%低下しました(HR = 0.07 [95% CI: 0.05-0.08]; P < 0.0001)。また、エンザルタミドとADTの併用によってPSA上昇までの期間が、ADT単独群と比較してADTとエンザルタミド併用群では、33.3カ月(中央値)延長しました(37.2カ月[95% Cl: 33.1-NR] vs. 3.9カ月[95% Cl: 3.8-4.0])。
エンザルタミドとADTの併用によって、新たな抗がん剤治療を行うまでの期間がADT単独群と比較してADTとエンザルタミド併用群では21.9カ月延長し(39.6カ月[95% CI: 37.7-NR] V.S. 17.7カ月[95% CI: 16.2-19.7])、79%のリスク低減となりました(HR = 0.21 [95% CI: 0.17-0.26]; p < 0.0001)。最初に中間解析を実施した時点では、いずれの治療群でもOSの中央値には到達していませんでしたが、エンザルタミドは良好な成績を示す傾向がみられました(HR = 0.80 [95% CI: 0.58-1.09]; p = 0.1519)。
安全性は、今まで実施したエンザルタミドの臨床試験結果と同程度でした。グレード3以上の有害事象は、エンザルタミドとADTを投与した群では31%、ADT単独群では23%認められました。最も多く認められたグレード3以上有害事象(>2%)は、高血圧(5% vs. 2%)、疲労(3% vs. 1%)でした。主な心血管系有害事象は、エンザルタミドとADTを投与した群で5%、ADT単独群では3%でした。発作は、エンザルタミドとADTを投与した群では3件認められ、ADT単独群では認められませんでした。有害事象により治療中止になった患者の割合は、エンザルタミドとADT併用群で9%、ADT単独群6%でした
以上
*1: 日本においては、「去勢抵抗性前立腺癌」の効能・効果で、「イクスタンジカプセル 40 mg」が販売されており、非転移性を含む去勢抵抗性前立腺がん患者に対し、すでに使用されています。
PROSPER試験
PROSPER試験は国際共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験です。米国、カナダ、欧州、南米、アジア太平洋地域の医療機関において、非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者約1,400名が組み入れられました。ADT後にPSAレベルが上昇し前立腺がんが進行した患者のうち、無症候性で、現在および過去に転移が確認されていない患者が対象です。ADTに加え、エンザルタミド(160 mgを1日1回)を投与した群とプラセボを投与した群の2群間で比較しました。
PROSPER試験の主要評価項目である無転移生存期間は、がんが他の部位に転移したことをX線検査で確認できるまでの期間、あるいは治療中止から112日以内の死亡までの期間を示します。副次的評価項目は、PSA進行までの期間、新たな抗がん治療の開始までの期間、および全生存期間です。
PROSPER試験の詳細については、www.clinicaltrials.gov をご参照ください。PROSPER試験以外の前立腺がんにエンザルタミドを用いる現在実施中の臨床試験は、転移性ホルモン感受性前立腺がん患者を対象としたARCHES試験と、非転移性ホルモン感受性前立腺がん患者を対象としてEMBARK試験があります。
去勢抵抗性前立腺がんについて
米国がん協会によると、米国において2017年には男性161,000人以上が前立腺がんと診断されると推定されています。去勢抵抗性前立腺がんとは、テストステロンを去勢レベルまで下げても前立腺がんが進行する病態を言います。非転移性前立腺がんとは、がんが身体の他の部位に転移していることを示すエビデンスが臨床的に発見されず、PSAレベルが上昇している状態を意味します。非転移性前立腺がんで、PSAレベルが急速に上昇する男性患者の多くに転移性前立腺がんが生じます。
注意事項
このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。