アステラスは、世界の人々の健康へ貢献することを目指し、社会的責任を果たしながら、事業活動を行っています。研究・開発から製品に関する情報提供までのバリューチェーンの各機能において人権を尊重するとともに、医薬品医療機器等法をはじめとする関連法規の遵守に努めています。

事業活動におけるCSRの取り組みの図

 

研究

ヒトを対象とする研究やヒト由来試料を用いた研究における倫理的配慮

アステラスでは、ヘルシンキ宣言*および各国で定められた法令や指針などに則り、適切に当事者の同意を得て、ヒトを対象とする研究や、ヒト由来試料の入手とそれらを用いた研究を実施しています。

日本では、研究員を対象に生命倫理やゲノム研究・臨床研究に関する研修を行い、研究協力者の人権の尊重や個人情報の保護などに努めています。

また、社外有識者を含むヒト組織研究倫理審査委員会を設置し、研究計画の倫理性および科学的妥当性について中立的かつ公平に審査しています。

*ヘルシンキ宣言:ヒトを対象とする医学研究に関わる医師やその他の関係者に対する指針を示す倫理的原則

幹細胞の研究開発における倫理的配慮

アステラスは、これまで治療手段のなかった疾患に対し、幹細胞による新たな治療手段を提供できる可能性があると考えています。これを実現するため、幹細胞を治療に利用する研究開発活動を進めています。

ヒト幹細胞を用いた研究の推進により、慎重に検討すべき懸念が生じ得ることも認識しています。特に、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)を用いた研究は、社会的・生命倫理的な課題への配慮が必要なことを十分に認識しています。

こうした考え方や認識に基づき、アステラスは、ヒト幹細胞を用いた研究開発にあたり遵守すべき基本的な事項を「幹細胞の研究開発に関するポリシー*」に定めています。具体的には、ヒト幹細胞に関するすべての研究開発活動において、研究開発を行う国や地域の関連法令や規制を遵守します。また、社内責任者および社外専門家で構成する委員会を設置し、研究開発活動の倫理性、科学的妥当性および研究の正当性について同委員会から監督・助言を受けます。したがって、ヒト幹細胞に関するすべての研究開発プログラムは、倫理的に問題なく適正な科学的目的に沿った実施という観点で審査を受け、承認を得ています。さらに、ヒト胚性幹細胞を樹立・利用する場合は、米国科学アカデミーによるガイドラインなど、世界の主要な科学的権威によって制定された倫理基準を満たした上で行っています。

*詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.astellas.com/jp/system/files/policy.pdf

動物実験における倫理的配慮

アステラスは「動物の管理および使用に関するポリシー」*1に基づいて動物実験を行っています。社外有識者を含む動物実験委員会を設置し、4Rの原則*2を確認することで動物実験実施の可否を審査しています。また、アステラスの動物実験施設は、すべてAAALAC*3認証を取得しています。

*1 詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.astellas.com/jp/system/files/policy_on_animal_care_and_use_jp.pdf*2 4Rの原則:Replacement(代替法選択の可能性の検討)、Reduction(使用数の削減)、Refinement(苦痛の排除)、Responsibility(科学的、倫理的な正当性の検証責任)
*3 AAALACインターナショナル:国際実験動物管理公認協会。動物管理および使用プログラムに対する国際的認証を提供する団体で、動物実験が科学的・倫理的に実施されているかを調査・認証する機関

バイオテクノロジー、バイオハザードへの対応

アステラスは、遺伝子組換え生物の取り扱いや感染性材料を使用する実験は、世界保健機関(WHO)実験室バイオセーフティ指針*1、米国疾病予防センター(CDC)バイオセーフティマニュアル*2、米国国立衛生研究所(NIH)ガイドライン*3および各国の法律に準拠して行っています。

*1 Laboratory Biosafety Manual 3rd Edition
*2 Biosafety in Microbiological and Biomedical Laboratories 5th Edition
*3 NIH Guidelines for Research Involving Recombinant or Synthetic Nucleic Acid Molecules

遺伝資源の利用

アステラスは「遺伝資源についての基本的考え方*1」を公表し、生物多様性条約*2締約国会議で採択された名古屋議定書*3における遺伝資源の利用とその利益配分に基づき、入手に際しては提供国の関係法令を遵守し、その利用から生じる利益は提供国と相互に合意した条件で公正に配分することとしています。新たな遺伝子改変技術の利用に関しては、環境や生物多様性、ヒトの健康にもたらす影響が明らかになっていないため、生物多様性の保全と倫理面に配慮しながら慎重に取り扱っています。

*1 詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.astellas.com/jp/system/files/Position%20Statement_Genetic%20Resources_ver.1.0_JP.pdf*2生物多様性条約:生物多様性の保全と持続的な利用を目指す国際条約
*3 名古屋議定書:遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する議定書

知的財産の取り扱い

知的財産の適切な保護は、競争力を維持しながら満たされない医療ニーズに対応していくために重要であり、アステラスは「知的財産に関するポリシー*1」を定めています。

また、保健医療へのアクセス改善に配慮し、各国の医薬品調達部門がアステラスの医薬品特許情報に容易にアクセスできるよう、世界知的所有権機関(WIPO)が運営するThe Patent Information Initiative for Medicines(Pat-INFORMED)に参加しています。

さらに、経済的に貧しい国では、特許出願および特許権の行使を行っていません。対象国は、国連の定めるLeast Developed Countries(LDCs)および世界銀行の定めるLow Income Countries(LICs)を参照して決定しています。*2

*1 詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.astellas.com/jp/system/files/property.pdf
*2 詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.astellas.com/jp/system/files/ip.pdf

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臨床開発

臨床試験における被験者の人権の尊重、個人情報の保護、信頼性の確保

アステラスは、ヘルシンキ宣言および医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)など関連法規制に則って、被験者の人権や個人情報の保護に十分配慮し、新薬候補物質の有効性、安全性を確認する臨床試験を実施しています。また、臨床試験の実施計画書は社内外の審査委員会で倫理的・科学的妥当性の観点から審査を受け、承認を得ています。

臨床試験の実施にあたっては、被験者が試験の目的や方法、予測される利益と不利益、健康被害補償に関する事項などに関する説明を十分に受け、同意したうえで試験に参加していることを確認しています。さらに、臨床試験に関わる社員などへの教育・研修を実施するとともに、治験実施医療機関に対してモニタリングを行い、臨床試験がGCPに則って適切に実施されていることを確認しています。

また、試験データを適切に管理し、被験者のプライバシー保護に努めています。なお、外部委託している臨床試験においても同様の基準で実施されていることを定期的に確認しています。

臨床試験に関する情報および試験結果の開示

アステラスは、臨床試験データの開示を進め、透明性の向上に取り組んでいます。臨床試験データの価値を最大化し、科学の進歩やイノベーションの推進に役立てるには、研究者をはじめ臨床試験データを活用する可能性のある方々が、臨床試験データに適切にアクセスできる必要があります。このようなアステラスの考えは「臨床試験データの開示に関するポリシー*1」としてホームページ上で公開しています。

アステラスは、自らが研究主体となって責任を負う臨床試験の情報の登録および結果の開示を行っています。外部のウェブサイト*2を通じて、各種法規制に従い匿名化した患者さんごとの試験データを、第三者の専門家により構成される審査委員会が科学的な有用性や研究者の適格性などをもとに審査して承認した場合に、要望のあった科学者や医療関係者へ提供しています。また、アステラスの臨床試験情報ウェブサイト上で、医療従事者や一般の方が確認できるように臨床試験結果の要約を公開しているほか、非専門家向けに要約した臨床試験結果を患者さんが確認できるようにしています*3

*1 詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.astellas.com/jp/system/files/Clinical_Trial_Data_Disclosure_Policy_Jp_2018_1.pdf
*2 患者さんごとの試験データは以下のウェブサイトを通じて提供しています。
https://www.clinicalstudydatarequest.com
*3 以下のウェブサイトで臨床試験結果を提供しています。
https://www.astellasclinicalstudyresults.com/Welcome.aspx

治験薬への拡大アクセス

アステラスは、「治験薬への拡大アクセスについての基本的な考え方*」において、臨床試験以外で患者さんに治験薬を提供する際の対応をまとめています。

重篤な疾患または生命を脅かす疾患をもつ患者さんの中には、現在ある治療法をすべて試みても効果がなく、また参加基準を満たさないため臨床試験で治験薬の投与を受けることもできず、臨床試験への参加以外の方法による治験薬の投与を求める方がいます。このような場合に患者さんの担当医から受ける治験薬の拡大アクセスの要請に対し、アステラスは、条件に合致するか否かを公正・中立かつ迅速に評価し、適切に拡大アクセス実施計画を作成します。拡大アクセスプログラムは、医薬品の臨床開発が進行し、承認取得が計画されている国で実施されます。また、拡大アクセスの要請があった国の規制に従って手続が行われます。

* 詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.astellas.com/jp/system/files/position_on_expanded_access_j_2017-04-11.pdf

被験者の声を活かした臨床開発

規制当局や製薬業界は現在、患者さん中心のアプローチに注力しており、医薬品開発におけるバリューチェーンのすべての段階においてもその検討が進んでいます。

アステラスでは、リアルワールドデータを用いて現場で医療がどのように提供されるかを理解し、最適な臨床試験計画の立案方法、被験者の募集方法、被験者の視点に立った妥当な評価項目の特定方法において、被験者の声を活かした臨床開発に取り組んでいます。

例えば、質問票や患者日誌などによって患者さんの健康状態を把握・評価しています。リアルワールドデータを用いることで、疾患の罹患率に基づいて対象となる患者集団の大きさを推定したり、スクリーニング時の脱落率を予測したり、各医療機関における臨床試験の実施可能性を評価しています。また、患者さん向けウェブサイトを立ち上げ、患者さんやそのご家族(介護者)の視点に立った被験者募集や疾患情報等の紹介を行っています。特に筋疾患の分野において、患者団体と協働し患者さんやそのご家族(介護者)からの意見を臨床試験デザインに反映できるように努めています。このような取り組みにより、患者さんが臨床試験に参加しやすい環境を整え、より臨床的に意義のある試験結果が得られるように努めています。

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信頼性保証

偽造医薬品対策

正規の医薬品流通経路に偽造医薬品が混入することは、患者さんが有効な治療を受ける機会を失うだけでなく、重度の健康被害を引き起こす可能性があるため、世界的に深刻な問題となっています。

アステラスは「偽造医薬品対策についての基本的な考え方」を明確に定義し、ウェブサイト上で公表しています。

アステラスでは、品質保証部門、サプライチェーン管理部門など複数の関連部門のリーダーで構成する偽薬防止委員会を運営しているほか、製品に関わるセキュリティ・リスクを日常的に監視するプロダクト・セキュリティ部門を設置し、対策を行っています。これらの委員会や部門は、世界中の市場でアステラスの製品に影響を及ぼす不審な活動を監視するとともに、偽造医薬品や、アステラスの製品に悪影響を及ぼし患者さんをリスクにさらす可能性がある医薬品の横流し、盗難などの不法行為への対策を実施しています。

また、アステラスは、現行の規制や薬事法の定めに従って実施している製品へのシリアルナンバーの付与にとどまらず、計画的に偽造防止対策を進めています。さらに、他の製薬企業と連携してさまざまな活動に定期的に参画し、偽造医薬品の流通防止に取り組んでいるほか、各国の行政や司法当局における偽造医薬品の取り締まり活動に対しても積極的に支援・協力しています。

アンチ・ドーピングヘの取り組み

スポーツで問題となっているドーピングは、医薬品の乱用・誤用とつながりが深く、重篤な副作用を招く危険性があるだけでなく、不正な流通や偽造医薬品の温床となり得るという点で医薬品業界にとって重要な課題です。アステラスはドーピングに使用される可能性のある治験中の化合物を特定し、誤用防止に取り組んでいます。

2016年10月、ドーピング撲滅と公衆衛生の向上に貢献するため、アステラスは世界アンチ・ドーピング機構(WADA)と、スポーツにおけるドーピングを目的とした医薬品の誤用や乱用の防止に向けた国際的な連携に関する契約を締結しました。

ドーピングでは、市販されている医薬品だけでなく、まだそれほど知名度が高くない、あるいは検出が困難な開発段階の化合物が誤用・乱用されることが少なくありません。この問題に対処するWADAの取り組みを支援するため、アステラスは、ドーピングで乱用される恐れがあるアステラス製薬またはその子会社が単独開発中の化合物を特定し、その検出方法の開発段階において、関連情報をWADAに提供するよう協力しています。さらに、アステラスは、乱用を避けるために、臨床試験期間中ドーピングで使用される恐れがある化合物の誤用のリスクを最小限に抑えることにも協力しています。

製品回収

アステラスは、製品の安全性や有効性、品質に問題が生じた場合に実施するリコール制度を整備しており、関連情報を迅速に医療機関や影響を受ける関係者に伝達し、該当製品の回収を実施しています。2019年3月期は、自主回収を6件、当局主導のリコールを1件実施しました。なお、2019年3月現在、これらに関連する健康被害の報告は受けていません。


製品回収の履歴

年度 リコール数 重度
(クラスI)
中度
(クラスII)
軽度
(クラスIII)
分類なし
2014 3 0 1 1 1
2015 3 0 1 1 1
2016 3 0 2 1 0
2017 3 0 2 0 1
2018 7 0 4 2 1*

*当局主導のリコール

FDA査察

アステラスは、現行の医薬品適正製造基準(current GMP:Good Manufacturing Practice)に準拠した独自の品質基準を定め、各製造現場でこの基準を採用しています。2019年3月期は、米国食品医薬品局(FDA)による査察を4件受けましたが、Form483*発行対象となったのは1件のみでした。

* Form483:米国食品医薬品局(FDA)による査察の結果、指摘事項があった場合に、FDAはForm 483を発行し、連邦食品医薬品化粧品法および関連法の違反となる可能性を通知します。

米国食品医薬品局(FDA)査察の履歴

FDA査察数 警告書発行 Form483受領数 Form483受領工場
2014 6 該当なし 1 高岡(日本)
2015 1 該当なし 1 ノーマン(米国)*
2016 5 該当なし 2 高岡(日本)、富山(日本)
2017 2 該当なし 0 -
2018 4 該当なし 1 富山(日本)

*米国ノーマン工場は2016年8月にAvara Norman Pharmaceutical Services, Inc. へ譲渡済み

品質マニュアル

アステラスは、品質保証部門の機能や活動を「品質マニュアル」に規定しています。世界各国・地域の各組織は、このマニュアルに基づき、グローバル・地域・国のレベルで、品質保証のための体制や、関連するさまざまな業務の運用管理や手順などに関するガイドラインと標準操作手順書類を策定し、教育訓練を通して内容の理解・浸透を図っています。

これらの文書類については、定期的に、また必要に応じて見直し、規制の変更や改訂などの外部環境の変化に素早く対応しています。

販社における品質保証体制の強化

アステラスでは、世界中の患者さんに均一で高品質な医薬品を供給するため、強固な品質保証体制をグローバルに構築してきました。グローバルに、かつグループ横断的に、一貫性のある品質マネジメントシステムを有しています。グローバルな品質保証体制の中には、各国の販社における品質保証の取り組みも組み込んでいます。世界各国の販社は、品質を重視するアステラスの企業文化と人材育成の強化に関して適切な支援を受けることができます。

グローバル品質保証体制図(2019年7月現在)

グローバル品質保証体制図

ファーマコヴィジランス(PV)*システムの向上

アステラスは、ファーマコヴィジランス(PV)機能とその他関連部門、販社、およびライセンスパートナーとの連携強化を通じて、PVシステムの更なる向上に継続的に取り組んでいます。これにより、規制要件への対応はもとより、製品戦略の拡大への対応、信頼性の高い製品情報の提供と製品の適正使用の推進につなげています。

アステラスは、製品の安全性情報を広く収集する体制を構築しています。PV機能に密接に関わる従業員だけでなく販社を含めた全従業員と契約社員を対象にPVについての研修を毎年実施することで、適切かつ迅速に情報を収集する体制を維持・強化しています。また、PV機能以外の部門が外部事業者へ業務を委託する場合は、必要に応じて業務委託契約に安全性情報の収集に関する要件を追加しています。

グローバルで使用している安全性情報のデータベースや関連手順も、環境の変化に対応するため、整備を進めています。2019年3月期には、規制要件の変更に伴う安全性情報のデータベースや手順の大幅なアップグレードを完了しました。

PV機能と他の部門との連携強化によって、大規模な医療データベースなどのリアルワールドデータを自社製品の安全性評価に活用し、リスクの最小化につなげる取り組みも進めています。さらに、安全性情報の監視、処理・報告、安全性シグナルの早期検出・解析に活用できる自動化技術や人工知能技術の探索・評価も開始しており、安全性情報の管理体制も今後強化していきます。

* ファーマコヴィジランス:医薬品安全性監視

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技術開発、生産

安定供給と品質管理

安全で有効な医薬品を確実に製造し、安定的に患者さんに提供することは、製薬メーカーであるアステラスにとって極めて重要です。その実現のため、医薬品の製造工程における製造管理、品質管理の基準(GMP)、および適正流通の基準(GDP)に合致した独自の基準を設定し、製造施設・設備のほか、原料の調達から保管、製造、さらに配送まで、一貫した高水準の品質管理を徹底しています。

品質監査

アステラスでは、グループ内の事業所と社外の製造・流通事業者の品質保証体制を定期的に監査しています。監査の頻度と深度はリスク分析に基づいて決定しています。

グループ内の事業所に対する監査は、現行の医薬品の製造工程における製造管理、品質管理の基準(cGMP)、または適正流通の基準(cGDP)を実践しているすべての組織を対象としています。製品ライフサイクルの全段階、サプライチェーン全体にわたって、方針書や手順書に従い、監査を実施しています。

社外の事業者に対する監査では、cGMP、cGDP、アステラスの規程の遵守状況を評価しており、新規事業者・既存事業者ともに監査しています。

2019年3月期は、グローバルで337件(グループ内組織:30、社外事業者:307)の品質監査を実施しました。

安定供給のための管理体制

グローバル製品の増加やモダリティの多様化により、サプライチェーンはますます複雑化しています。

こうした環境変化を踏まえ、アステラスは、2019年4月に世界各地域の需要予測や在庫情報、供給計画を一元的に管理する体制を構築しました。これにより、原薬の製造から製品の供給まで、グローバルにサプライチェーンを管理することが可能となりました。

また、輸出入を含むロジスティクスのコンプライアンスも推進し、安定供給体制を更に強化しています。

安定供給のための共同物流

アステラスは武田薬品工業(株)、武田テバファーマ(株)、武田テバ薬品(株)とともに、北海道において医療用医薬品を共同で保管・輸送する仕組みを構築しています。この仕組みによって、アステラスは、輸送効率と品質管理レベルの向上を図るとともに、医薬品の供給経路を分散化し、大規模自然災害など緊急時においても製品を安定供給できるよう努めています。

また、物流の共同化はコスト面でも効果があり、新たな物流拠点の設立が可能になったほか、CO2排出量の削減による環境負荷の低減効果もあります。こうした点が評価され、この取り組みは、平成30年に経済産業省のグリーン物流優良事業者表彰で、経済産業大臣表彰を受賞しています。

医療過誤の防止、医薬品の識別性向上

アステラスは、患者さんや医療従事者が医薬品を取り違えないよう、使用者の視点に立った製品の提供に努めています。カプセル剤・錠剤に製品名を直接表示しているほか、包装シート(PTPシート)を分割しても薬剤名や含量を識別しやすくするなど、医療過誤の防止に取り組んでいます。

また、PTPシートの表示の見間違えを防止するため、一部の製品においてPTPシートに見やすい色と書体を採用し、視認性の向上を図っています。

製品パッケージへのユニバーサルデザインの導入

一部の製品パッケージにユニバーサルデザインを導入しています。例えば、4週に1回服用する「ボノテオ錠50mg」のユニバーサルデザイン容器は、開封性に優れたパッケージを採用し、飲み忘れ防止のために服薬日の記載欄を設けるとともにカレンダー用のシールを添付しています。また、文字の読みやすさに配慮し、ユニバーサルデザインフォントを使用しています。

ボノテオ錠50mgのBOX型パッケージの写真
ボノテオ錠50mgのBOX型パッケージ

地域社会との関わり

持続可能な医薬品生産に向けて、アステラスは、製造事業所の近隣住民や地域コミュニティとの対話の機会を設け、アステラスの取り組みを積極的に開示することで、良好な関係の構築に取り組んでいます。

ここ15年間、アイルランドのケリー工場では、環境保護、安全衛生、エネルギー保護を地域住民と一体となって推進するため、毎年イベントを開催しています。このイベントでは、環境保護や安全衛生、エネルギー保護に関わるテーマを毎年設定し、地域の子どもたちがそのテーマに沿った絵画を作成しています。これらの絵画はカレンダーとして現地で販売されており、売上はすべてアイルランド腎臓協会に寄付されています。毎年12の学校から1,000件を超えるエントリーがあり、現在では、このイベントは地域の恒例行事へと発展しています。その他には、子供病院への寄付を伴う音楽イベント、地域への心肺蘇生研修、精神疾患や自殺傾向のある患者さんを支援する非営利団体Pieta Houseとの連携による5kmのウォーク&ラン等を実施し、地域社会との関りを大切にしております。2017年、アイルランドの最も優秀な企業の1社として「SEAI*1 Award」を受賞し、2019年には、「Green Award*2」を受賞しました。

*1 SEAI(Sustainable Energy Authority of Ireland):CO2排出抑制をサポートするアイルランド政府所属の団体。
*2 Green Award:アイルランドにおける環境活動に対し、継続的な精神、リーダーシップ、イノベーションの基盤を評価する賞

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製品情報提供

製品の適正使用の推進

アステラスの医薬情報担当者(MR)は、医療従事者に製品の添付文書に基づく適正使用情報を提供することで、自社の医薬品が安全かつ効果的に使用されるように努めています。MRは高い倫理観に基づいて行動し、適用法令・規制、業界ルール、アステラスグループ行動規準を含む社内規程を厳重に遵守しながら、製品の情報提供を実施しています。

メディカル担当者(MSL)は、製品の安全かつ効果的な使用方法をはじめ製品について科学的根拠に基づいた情報交換を医療従事者との間で行うことで、医療従事者の製品についての理解を促し、製品の安全かつ有効な使用を推進しています。MSLは信頼性が高く、理解しやすく、公正かつ偏りがない医学的・科学的情報を提供しています。MSLは製品の販売促進につながる活動は行わず、各種規則などに準拠し、高い倫理観に基づいて行動しています。

問い合わせ対応

アステラスは、患者さんや医療従事者からの問い合わせに対して信頼性が高く、公正かつ偏りがない医療情報を提供する責任があると考えています。この責任を果たすことによって、安全で効果的な製品の使用を促進しています。

この認識のもと、世界の国々にメディカルインフォメーションセンターを開設し、さまざまな問い合わせに対応しています。主要なインフォメーションセンターでは、営業日でなくとも24時間体制で緊急の問い合わせに対応しています。2019年3月期は、約14万件の問い合わせがありました。

医療情報に関する問い合わせ対応に際してアステラスは、適切で一貫性のある正確な情報の提供を目指し、常に改善を続けています。その一環として、グローバルな医療情報システムを導入し、世界中のグループ会社で提供している回答を管理しています。これによって、簡潔、迅速かつ正確に問い合わせに回答するとともに、患者さんや医療従事者のニーズを分析し、製品のライフサイクルマネジメントに役立てています。グローバルレベルで医療情報システムを使用することで、患者さんや医療従事者からの問い合わせに対しより高質な対応を行います。

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調達

持続可能な調達への取り組み

アステラスは、サプライチェーン全体で社会的責任を果たすことが重要と考えています。その実現のために「Astellas Business Partner Code of Conduct」を定め、取引先に社会的責任に基づいた取り組みと協力同意書の提出を求めています。

重要な取引先を対象とするリスク評価

取引先の中でも特にアステラスの事業継続への影響が大きい「重要な取引先(critical suppliers)*」については、その選定プロセスにサステナビリティ・リスク評価を組み込み、グローバルで評価を実施しています。サステナビリティ・リスク評価は、(1)質問票に対する取引先の回答、(2)外部データベースの情報、(3)人権、環境、安全衛生、個人情報保護など持続可能性に関わるリスクに精通した社内の専門家による評価を基本とし、必要に応じて(4)アステラス社員が現地を訪問して行う実地調査の結果を組み合わせてリスクレベルを判断しています。2019年3月期には、リスク評価の精度を高めるために質問票の内容を刷新し、2019年2月から日米欧で運用を開始しました。

アステラスでは、取引先選定の段階で改善可能なリスクを特定した場合は、取引先に対して改善を働きかけ、経過をモニタリングしています。なお、重篤なリスクを特定し、かつ改善が難しいと判断した場合は取引を行いません。

また、取引開始後も、ビジネス部門がリスクの状況を継続的にモニタリングしているほか、少なくとも5年に1回は質問票調査や実地調査を行い、持続可能性に関わるリスクレベルを評価しています。さらに、必要に応じて5年以内であっても再評価を実施しています。

*原料の仕入先(直接材、間接材を問わず)や業務委託先、医薬品卸売業、販売提携先、銀行を含むアステラスの事業継続に対する影響が大きいと判断した取引先。なお、2019年3月期の1次取引先数(日米欧合計)に占める「重要な取引先」の割合は約10%でした。

取引先の実地調査

2019年3月期は、アステラスの社員が実地調査を実施し、排水処理施設の運用状況、従業員の作業環境、従業員の化学物質暴露防止の取り組みなどについてリスク評価を行いました。指摘事項があった場合は、改善案を提示して是正計画の策定を求めており、現在は是正計画に基づいてその改善状況をフォローアップしています。

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