アステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:畑中 好彦、以下「アステラス製薬」)は、未治療の急性骨髄性白血病(AML: Acute Myeloid Leukemia)患者を対象とした非盲検、用量漸増/用量拡大第I相試験(NCT02236013)において得られたFLT3/AXL阻害剤であるギルテリチニブの安全性、忍容性および抗腫瘍効果を示す最初の臨床試験成績が公表されたことをお知らせします。本データは、2017年第59回米国血液学会(ASH: American Society of Hematology)の年次総会にて口頭発表されました。

 「今回発表する最初の臨床データは、未治療AML患者において、標準化学療法併用時におけるギルテリチニブの良好な安全性と忍容性を示しています。」と、本試験の主席治験責任医師であるJohn Hopkins Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Centerの Keith W. Pratz M.D.は述べています。「さらに、探索的に抗腫瘍効果を評価したところ、FLT3遺伝子変異陽性(FLT3mut+)患者において高い奏効率を示す有望な結果が得られ、AMLの初期治療におけるギルテリチニブの更なる評価に対する期待が高まりました。未治療AML患者および他の治療段階にあるAML患者の予後改善に向けて、FLT3選択的阻害剤の評価に今後も注力してまいります。」

 この第I相試験の主な目的は、7+3 寛解導入療法(シタラビンとイダルビシン)および高用量シタラビン(HiDAC: high-dose cytarabine)による地固め療法とギルテリチニブ併用時における用量制限毒性(DLT: dose-limiting toxicities)や最大耐量(MTD: maximum tolerated dose)を含む、安全性/忍容性プロファイルを評価することです。本試験では、18歳以上の未治療AML患者に対して、ギルテリチニブと標準化学療法併用による治療およびギルテリチニブ単剤による維持療法を行いました。この併用療法による抗腫瘍効果の評価は、探索的な目的として評価しました。

 本試験は2つのパートから成り、初めに患者を用量漸増コホートに組み入れてMTDを決定しました。用量漸増コホートに組み入れられた患者に対し、1日40、80、120 mgのギルテリチニブを投与しました。用量の漸増は、寛解導入療法時のギルテリチニブ初回投与後に認められたDLTをもとに判断しました。用量拡大コホートの患者には、用量漸増コホートにて確定した用量拡大コホートの推奨用量のギルテリチニブを投与しました。地固め療法時、患者には1日1回投与でのギルテリチニブによる維持療法を、最大26サイクル(1サイクル:28日間)行いました。

 「未治療AML患者に対する標準化学療法とギルテリチニブの併用について得られた最初の臨床データは、私たちに大きな自信を与えてくれました。本学会で口頭発表できることを嬉しく思います。」と、Astellas Pharma Global Development, Inc.のsenior vice president 兼 global therapeutic area head, Oncology Development である Steven Benner, M.D.は述べています。「FLT3変異はAML治療の予後不良と関連しています。アステラス製薬は、AML治療全体において幅広くギルテリチニブの可能性を評価しており、一人でも多くのAMLに苦しむ患者さんに貢献できるよう尽力してまいります。」

 2017年7月9日時点で、50名の患者(用量漸増コホート17名、用量拡大コホート33名)を試験に組み入れ、その内、49名にギルテリチニブが少なくとも1回投与されました。FLT3変異を調べた患者48名のうち23名(47.9%)がFLT3mut+で、そのうちの13名(56.5%)は遺伝子内縦列重複(ITD: internal tandem duplications)でした。

 その他の主な所見:

  • 用量漸増パート 1~14 日目にギルテリチニブの投与を受けた 40 mg/day 投与コホ ートの患者 2 名において,DLT(好中球減少症、血小板減少症、駆出分画の低下) が認められた。ギルテリチニブの投与スケジュール変更後は、DLT は認められな かった。
  • MTD には到達しなかった。用量拡大コホートにおける推奨用量として、ギルテリチ ニブ 120 mg/day を選択した。
  • 10%以上の被験者に発現したグレード 3 以上の有害事象(TEAEs: treatmentemergent adverse events)は、発熱性好中球減少症(36.7%)、血小板減少症 (18.4%)、好中球減少症(16.3%)および血小板数の減少(12.2%)であった。
  • 一人以上の被験者に認められた重大な TEAEs は、発熱性好中球減少症(n=8)、 敗血症(n=2)、小腸閉塞(n=2)、肺感染症(n=2)および駆出率の低下(n=2)であっ た。
  • FLT3mut+患者群とそれ以外の患者群における治療終了時の複合完全寛解 (CRc: composite complete remission)率はそれぞれ 100%と 60.9%であった。

急性骨髄性白血病(AML: Acute Myeloid Leukemia)について

 AMLは血液と骨髄に影響を及ぼし、高齢者が多く罹患するがんです。米国がん協会によれば、2017年米国において約21,000人が新たにAMLと診断され、約10,000人が死亡に至ると推定されています*1

ギルテリチニブについて

 ギルテリチニブは治験中の化合物で、がん細胞の増殖に関与する受容体型チロシンキナーゼであるFLT3およびAXLを阻害します。AML患者の約1/3で認められるFLT3の2つの遺伝子変異である遺伝子内縦列重複変異(ITD: Internal Tandem Duplication)とチロシンキナーゼドメイン変異(TKD: Tyrosine Kinase Domain)の両方を阻害します。さらに、ギルテリチニブはAML細胞株のAXL受容体に対する阻害効果も示しており、治療抵抗性との関連が報告されています。現在、アステラス製薬は、日本を含むグローバルですでに開始されている複数の第III試験により、各種AML患者集団においてギルテリチニブの有効性および安全性を検証しています。ギルテリチニブの臨床試験の詳細については AstellasAMLTrials.comをご覧ください。

 ギルテリチニブは、寿製薬株式会社との共同研究により見出されました。アステラス製薬はギルテリチニブについて、全世界での開発、製造、ならびに将来的な商業化に関する独占的な権利を有します。ギルテリチニブは、米国FDAよりオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)およびファストトラックの指定を受けています。また、厚生労働省より「先駆け審査指定制度」の対象として指定を受けています。 

以上

*1 https://www.cancer.org/cancer/acute-myeloid-leukemia/about/key-statistics.html

アステラス製薬について

アステラス製薬株式会社(https://www.astellas.com/ja)は、東京に本社を置き、「先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する」ことを経営理念に掲げる製薬企業です。既存の重点疾患領域である泌尿器、がん、免疫科学、腎疾患、神経科学に加えて、新たな疾患領域への参入や新技術・新治療手段を活用した創薬研究にも取り組んでいます。さらには各種医療・ヘルスケア事業との融合による新たな価値創出にも挑戦しています。アステラス製薬は、変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの価値に変えていきます。

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