- 最大3つのT細胞医療製品の共同開発・商業化に関する契約を締結 ‐
- アステラス製薬のユニバーサルドナー細胞技術、遺伝子編集技術とAdaptimmune社のがん抗原特異的受容体を同定する能力および多能性幹細胞からのT細胞分化誘導技術を活用‐

 アステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:安川 健司、以下「アステラス製薬」)は、子会社であるUniversal Cells, Inc.(以下「Universal Cells社」)を通じて、がん領域の細胞医療製品の開発に特化したAdaptimmune Therapeutics plc.(本社:米国フィラデルフィアおよび英国オックスフォードシャー州、以下「Adaptimmune社」)と、本日、がん患者を対象とした新たな多能性幹細胞由来の他家T細胞医療製品の共同開発・商業化に関する契約を締結しました。

 本契約に基づき、アステラス製薬とAdaptimmune社は、最大3つの標的分子に対して、特異的に作用する新しいT細胞医療製品候補を共同開発します。この共同開発では、Adaptimmune社が確立したあるいは開発中の、特定のがん抗原とヒト白血球型抗原(HLA)の複合体を認識する親和性向上T細胞受容体(Tcell receptor:TCR)、がん細胞のHLA型に関わらず特定のがん抗原を認識するHLA非依存TCR(HLA-independent TCR:HiT)、および特定のがん抗原を認識するキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor:CAR)を同定・検証する能力のほか、フィーダー細胞を使用せずに多能性幹細胞からT細胞を分化誘導する技術を活用します。アステラス製薬は、これらと、Universal Cells社が有するユニバーサルドナー細胞と遺伝子編集技術を組み合わせることで、免疫拒絶を抑えた革新的な他家T細胞製品の創製、開発ができると期待しています。

 Adaptimmune社は、かねてより、多能性幹細胞からT細胞を分化誘導させる独自の技術を開発しています。Universal Cells社とAdaptimmune社は、2015年、T細胞領域におけるユニバーサルドナー細胞に関する独占的ライセンス契約を締結し、共同で遺伝子編集TCR‐T 細胞医療製品の研究を推進してきました。今回の契約は、既存の共同研究を拡大するものです。

 アステラス製薬は、各候補製品に対し第I相試験終了までの研究開発資金を提供します。アステラス製薬とAdaptimmune社は、各候補製品の第I相試験が完了した時点で、両社、またはいずれか一方の会社で当該製品の開発・商業化を進めることを選択します。両社で開発・商業化を進める場合、それぞれが有するT細胞療法の分野における知的財産権に関わる共同独占的ライセンスを取得します。いずれか一方が開発・商業化を進める場合、実施会社は相手会社から当該知的財産権に関わる独占的ライセンスを取得します。

 さらに、アステラス製薬は、2つの標的分子を選択し、他家T細胞医療の候補製品を単独で開発・商業化する権利を取得します。それらに対して、Adaptimmune社から必要なライセンスを取得するとともに、同社に開発・商業化のマイルストンとロイヤリティを支払うことになります。

 アステラス製薬の代表取締役副社長 経営戦略・財務担当である岡村直樹は、「アステラス製薬では、がん免疫(immune-oncology)を研究開発戦略上のPrimary Focusのひとつに位置付け、新たなモダリティ/テクノロジーによる新たながん免疫治療法の開発に取り組んでいます。NK細胞に加え、T細胞はがん免疫における細胞医療戦略にとって大変重要であり、Adaptimmune社との提携により、将来的に固形がんを含むさまざまながんに対して新たな多能性幹細胞由来の他家T細胞療法を創出できる可能性があると考えています。今後もアステラス製薬は、最先端の科学、技術を積極的に取り込み、患者さんのアンメットメディカルニーズに応える革新的な医薬品の創出に注力していきます」と述べています。

 Adaptimmune社のChief Business Officer 兼 Co-FounderであるHelen Tayton-Martinは「私たちは、Universal Cells社とiPS細胞の遺伝子編集にフォーカスした共同研究を推進してきましたが、その拡大版となるアステラス製薬との共同開発提携を嬉しく思います。この新たな共同研究には、私たちの新規HiT技術を含むTCR-TおよびCAR-T細胞の両方のアプローチが含まれる可能性があります。両社の補完性の高い技術と専門知識を結集することで、がん患者さんに対し必要な時に使用が可能な、新たなT細胞医療製品の開発を推進させることができます」と述べています。

 本契約に基づき、アステラス製薬はAdaptimmune社に最大8億9750万ドルを支払う可能性があります。内訳は以下の通りです。

  • 契約一時金として5,000万ドル
  • 本提携で見出されたコラボレーション製品が共同開発・商業化される場合はコストと利益を両社で折半するほか、開発マイルストンとして製品ごとに最大7,375万ドル
  • 本提携で見出された製品をアステラス製薬が単独で開発・商業化を進める場合、開発マイルストンとして製品ごとに最大1億4,750万ドルおよび販売マイルストンとして最大1億1,000万ドル

 これらに加えて、各候補製品の第Ⅰ相試験終了までを対象とする年間最大750万ドルの研究開発資金を支払います。

 また、アステラス製薬は、本提携で見出された製品をAdaptimmune社が単独で開発・商業化を進める場合、開発マイルストンとして製品ごとに最大1億4,750万ドル、および販売マイルストンとして最大1億1,000万ドルを合わせ、最大5億5,250万ドルをAdaptimmune社より受け取る可能性があります。

 さらに、本契約に基づき一方の会社の単独開発により製品を商業化した場合には、売上に応じた一桁台半ばから10パーセント台半ばのロイヤリティを相手の会社より受け取ります。

 なお、本件によるアステラス製薬の通期(2020年3月期)連結業績への影響は軽微です。

以上

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