アステラス製薬株式会社(本社:東京、社長:畑中 好彦、以下「アステラス製薬」)は、マイトカイン社(英名:Mitokyne, Inc.、本社:米国マサチューセッツ州ボストン、社長:カズミ シオサキ(Kazumi Shiosaki))と、ミトコンドリア注1関連疾患注2領域における共同研究・開発に関する独占的な提携契約を締結しましたので、お知らせします。

 アステラス製薬とマイトカイン社は、未だ有効な治療法が確立されていないミトコンドリア関連疾患領域において、患者さんが抱える中枢および末梢神経系障害、骨格筋・心筋障害、視覚・聴覚障害、代謝障害などの様々な症状を改善し、QOL(生活の質)の向上に貢献できるよう、本領域での研究・開発に注力します。

 本提携の背景には、近年、新規のミトコンドリア機能とその分子機構、様々な疾患へのミトコンドリアの関与など、ミトコンドリア生物学の発見や知見が進み、ミトコンドリア創薬に取り組む環境が整ってきたことがあります。

 本提携にあたり、研究についてはマイトカイン社が主導し、アステラス製薬は研究員を派遣すると共に、研究費の一部を負担します。開発については、アステラス製薬が主導し、臨床開発費用を負担します。

 アステラス製薬は、米国ベンチャーキャピタルのエムピーエム キャピタル(英名:MPM Capital)及びロングウッド ファウンダーズ ファンド(英名:Longwood Founders Fund)と共に、マイトカイン社に総額45百万ドルの出資を行う予定です。また、アステラス製薬は、5年間の契約期間内にマイトカイン社を買い取る独占的な権利を有しており、事前に合意した条件に応じて、買収金額として、最大で500百万ドル超を支払う可能性があります。
 なお、アステラス製薬が支払う契約一時金および研究費、並びに買収権行使時のマイトカイン社の価値を含めた総額は、最大で730百万ドルとなる可能性があります。

 アステラス製薬の代表取締役社長である畑中 好彦は、次のように述べています。
 「この共同研究・開発提携は、5月に発表した研究体制の改革の目的でもある、外部資源の更なる活用と新規領域への取り組みを具現化する機会と考えています。この提携により、ミトコンドリア関連疾患領域におけるリーダーとしての地位を確立し、革新的な新薬を世界中の患者さんに届けることを目指していきます。」

 マイトカイン社の創設者の1人で最高経営責任者であるカズミ シオサキ(Kazumi Shiosaki)は、次のように述べています。
「マイトカイン社を設立し、このような最先端の領域でアステラス製薬と提携できることを、嬉しく思います。ミトコンドリア関連疾患領域の研究・開発において、トップランナーになりたいという両社のビジョンは一致しており、本提携を通じて、双方の強みを生かして、新薬創出に取り組んでいきたいと考えています。」

 なお、本提携によるアステラス製薬の2014年3月期通期業績予想への影響は織り込み済みです。

注1ミトコンドリアについて
 ミトコンドリアは人体のほぼ全ての細胞に存在し、人間が活動するためのエネルギー産生を始めとして、活性酸素種の産生および除去、細胞死制御など様々な機能を有する極めて重要な細胞内小器官です。

注2ミトコンドリア関連疾患について
 ミトコンドリア機能不全に起因する病気を総称してミトコンドリア病と呼び、遺伝性あるいは自然発生のmtDNA(ミトコンドリア内に存在するミトコンドリアDNA)変異や、ミトコンドリア機能に関連するnDNA(細胞の核に存在する核DNA)変異が原因となります。ミトコンドリア機能不全は、特定の細胞や組織に影響すると考えられていますが、その原因は完全には解明されていません。ミトコンドリア病患者さんは、中枢および末梢神経系障害、骨格筋・心筋障害、視覚・聴覚障害、代謝障害などの症状を抱えています。典型的な発症時期は小児期で、患者さんの健康な生活とQOL(生活の質)に影響を与えています。

 次の三大病型がミトコンドリア病の60~70%を占めていると言われています。
1) ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様症候群(MELAS)
2) 慢性進行性外眼筋麻痺症候群/カーンズ・セイヤー(Kearns-Sayre)症候群(CPEO/KSS)
3) 赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群(MERRF)
他のミトコンドリア病には、リー症候群(Leigh syndrome)やミトコンドリア神経胃腸脳筋障害(MNGIE)、アルパース病(Alpers’ disease)、レーバー病(LHON)、神経性障害性運動失調網膜色素変性症(NARP)、脂肪酸酸化障害(FAOD)などがあります。

 ミトコンドリア異常は、筋機能不全、代謝不全、神経変性、視覚異常、更には、がんや心血管障害、腎不全など、一見、関連性の低いと思われる症状や疾患にも影響を及ぼすと考えられており、これらはミトコンドリア病を含めてミトコンドリア関連疾患と呼ばれます。ミトコンドリア異常に関連すると考えられている疾患例として、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症(ALS)、脳梗塞、気分障害、糖尿病、脂肪性肝疾患、骨粗しょう症、がん転移、末梢動脈疾患(PAD)、加齢性難聴(AHL)などが挙げられます。

 ミトコンドリア病およびミトコンドリア関連疾患の診断は、その症状が幅広いため、複雑なプロセスを必要とし、正確に診断されていない例も少なくないと言われています。

 

マイトカイン社について
 米国マサチューセッツ州ボストンに本社を置く、世界的に著名な科学者が2011年に創設したバイオテクノロジー企業です。創設メンバーは、スイス連邦工科大学のヨハン・オーワークス(Johan Auwerx)、カリフォルニア州立大学バークレー校のアンドリュー・ディリン(Andrew Dillin)、ソーク研究所のロナルド・エバンス(Ronald Evans)、ノーベル賞受賞者でマサチューセッツ工科大学のロバート・ホロビッツ(Robert Horvitz)です。

 

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