前立腺がんは、がんが前立腺の中に留まっているか、外に拡がっているかが治療の分かれ目になります。

周りの臓器への浸潤(局所進行がん)

前立腺にできたがんが、前立腺の外に出て周囲の臓器に入り込んでさらに増殖していくことを「浸潤」といい、この段階のがんを「局所進行がん」と呼びます。TNM分類では、T3かT4の段階です。この段階のがんは一部にとどまっていないため、手術放射線によって完治を目指すことは難しくなります。

前立腺がんはすぐそばにある精嚢に浸潤することが多く、このため、早期がんで手術を行う場合は、前立腺と一緒に精嚢も全摘出されます。前立腺がんはまた、直腸や膀胱への浸潤も多く見られます。このような周りの臓器への転移は、CTやMRIなどの画像検査によって確認されます。

転移

さらに、がんが血液やリンパ液によって運ばれて前立腺から離れたところへ移動し、そこで増殖することもあります。これを「転移」といい、この段階のがんを「転移がん」と呼びます。「転移がん」はTNM分類のN1(所属リンパ節への転移)やM1(所属リンパ節以外への転移)で表されます。手術・放射線治療による根治は難しくなり、治療はがんの進行を抑えることが目的になります。

別の臓器に転移しても、転移がんは元のがんの性質を持っています。前立腺がんが膀胱や直腸に転移してもそれは「膀胱がん」「直腸がん」ではなく、「転移性前立腺がん」です。そのため、治療も前立腺がんに対するものと同じ方法で行われます。
がんによって転移しやすい臓器は異なっています。前立腺がんに多く見られるのは、骨や骨盤リンパ節への転移です。他のがんの多くは末期になってから骨に転移することが多いのですが、前立腺がんは比較的早期に骨に転移することがあります。

骨転移

前立腺がんの転移の中で最も多く、8割以上を占めるのが、背骨や肋骨、骨盤などの骨への転移です。そのため、前立腺がんで転移が疑われる場合は必ず、骨シンチグラフィという検査を行います。これは、骨にできたがんに集まる性質を持つ弱い放射性物質を静脈に注射し、特殊なカメラで撮影して画像にするもので、全身の骨の様子を見ることができます。骨に転移すると、痛みや麻痺が出たり、骨折しやすくなったりするため、それらの症状を抑える治療が行われます。

リンパ節転移

前立腺がんで骨転移の次に多く、約4割を占めるのが、リンパ節転移です。とくに、骨盤の中の前立腺の周りのリンパ節に多く見られます。リンパ節転移を調べるには、主にCT検査を行います。ホルモン療法で進行を抑える治療が行われます。

再発

浸潤や転移が見られず、がんが前立腺の中にとどまっていると診断された場合は、手術放射線治療によってがんを取り除き(あるいは死滅させて)、完治を目指します。しかし、すべて除去したと思っても、検査や肉眼では分からない小さながんが残っていたり、転移していたけれども小さくて発見されなかったがんがあったりすると、これが治療後に成長して再度発見されることがあります。これをがんの再発といいます。

前立腺がんでは再発の状態を2種類に分類しています。
治療後に定期的に測定しているPSA値が上昇することで確認される「生化学的再発(PSA再発)」と、治療経過中の画像検査や触診で新たにがんが発見される「臨床的再発」です。

手術療法の場合、治療後にPSA値は0.1ng/mL未満に下がりますが、再発があればこの値がだんだん上がっていきます。0.2ng/mLを超えたらPSA再発と認められ、再び治療が開始されます。放射線療法の場合は、治療後ゆっくりPSA値が下がっていきますが、下がりきったところからまた上がり始めたら再発が疑われ、最も低かった値から2.0ng/mL以上上がれば、PSA再発と認められます。

再発した場合の治療は、最初に手術療法を行ったか放射線療法を行ったかによって、選択肢が変わります。

再燃

前立腺がんは、ホルモン療法に奏効することがよく知られています。年齢や身体の状況により、根治治療の代わりに用いられますが、約半数の人が数年の経過で当初良く反応していたホルモン療法に反応しなくなり、これを再燃といいます。当初から十分に反応しないものは不応癌といいます。ホルモン療法のPSA再燃は、4週間以上あけて測定したPSA値が最低値より25%以上かつ2ng/mL以上上昇した場合に判定されます。ホルモン療法によって去勢状態(テストステロン値が50ng/dL未満)であるにも関わらず、再燃してきた前立腺がんを去勢抵抗性前立腺がんといいます。