前立腺がんの治療には、治療を行わず経過を見る「PSA監視療法」、完治を目指して行われる「手術療法」「放射線療法」、がんの進行を抑える目的で行われる「ホルモン(内分泌)療法」「化学療法」、進行したがんによる苦痛を取り除く「緩和医療」があります。

低リスクの前立腺がんには非常に進行が遅く、生命に影響を及ぼさないと考えられるものがあり、無治療で経過観察することもできます。
前立腺がんが前立腺の中にとどまっていれば、完治を目指す手術療法や放射線療法などの治療を行うことができます。また手術や放射線照射を希望しない方には、がんの進行を抑える治療を行うこともできます。このように、早期であるほど、治療の選択肢が広がるといえます。
一方、がんが前立腺の外まで拡がっている場合は、完治を目指すことが難しくなります。ホルモン療法や化学療法で、がんの進行を抑える治療を行います。
治療方針は、がんの進行度や悪性度、PSA値、患者さんの年齢(期待余命)、健康状態、人生設計、家族の受け入れ態勢など、さまざまな条件を考慮して選択されますが、患者さんの意志が第一に優先されることはいうまでもありません。医師とよく相談し、納得した上で、自分にとって最良の治療を選択することが大切です。

PSA監視療法(無治療経過観察)

定期的に検査するPSA値などが病状の悪化を示さない限り、なんら治療を行わず経過を観察する方法をいいます。この方法では、手術などの治療が必要となるタイミングをいち早く捉えるために、定期的に検査を受けることがとても重要です。
前立腺がんの中には、治療をしなくてもほとんど進行しないおとなしいものがあります。病期分類がT1~T2でグリーソンスコアが6以下、PSA値が10ng/mL以下の場合はその可能性があります。

手術療法(根治的前立腺全摘除術)

下記の方法で、前立腺と隣接する精嚢をすべて摘出します。

(1) 恥骨後式前立腺全摘除術
下腹部を切開して前立腺を取り出す
(2) 会陰式前立腺全摘除術
会陰部(肛門と陰嚢の間)を切開して前立腺を取り出す
(3) 腹腔鏡下前立腺全摘除術
腹部に小さな穴をあけ、内視鏡などの器具を挿入して外から操作して前立腺を取り出す

腹腔鏡手術は一般に出血が少なく、傷口の回復も早い手術ですが、前立腺がんの腹腔鏡手術は高い技術が必要とされます。また、立体視できる画像と精緻な操作のできるロボット支援下の手術が平成24年度から保険診療の対象になり、急速に普及しています。
それぞれに長所・短所があるので、よく医師と相談し選択することが重要です。術後1~2週間で退院が可能です。
副作用として、尿失禁と性機能(勃起・射精)の障害が起こることがあります。がんの状態によっては勃起に関わる神経を温存することも可能です。

放射線療法

下記の方法で、前立腺に放射線を当て、がん細胞を破壊し死滅させます。

(1) 外照射
身体の外から前立腺に向けて放射線を照射する
(2) 内照射(密封小線源療法)
放射線を発する物質を前立腺の中に埋め込んで内部から照射する

外照射は前立腺がんのほぼすべての病期において行われる治療法です。直腸や膀胱などの周辺臓器への影響があるため、排便や排尿の障害の副作用が出ることがありますが、強度変調放射線治療(IMRT)など技術の進歩とともに有効性や安全性は高まっています。週5日、1日1回照射して、6~8週間続ける必要があります。外来通院での対応も可能です。

内照射は小さな線源(放射線を出す小さな金属)を前立腺内に留置するため「小線源療法」ともいいます。現在一般的なのは、ヨウ素125を用い、永久的に前立腺に留置する方法です。身体への負担が少なく、早期前立腺がんに対して有効な治療法です。

放射線療法の副作用には、治療中~治療直後(早期)に現れるものと、治療後半年以降(晩期)に現れるものがあります。

早期の副作用は、排尿障害(頻尿、排尿痛、残尿感、排尿困難など)、排便障害などです。これらは時間が経つにつれて(通常1~3か月)おさまります。

晩期の副作用は、起こる時期や頻度に個人差がありますが、主な症状は血尿、血便(直腸出血)、勃起障害などです。

放射線療法は、完治を目指す目的とは別に、骨に転移した場合の痛みの緩和や延命目的で行われることもあります。

ホルモン(内分泌)療法

前立腺がんは、男性ホルモンの影響を受けて増殖・進行するという性質を持っています。男性ホルモンは、95%が精巣(睾丸)から、5%が副腎から分泌されています。
ホルモン療法は、この男性ホルモンの分泌を下記のようなさまざまな方法で制御することによってがんの増殖・進行を抑えます。

(1) 薬物による去勢療法(詳細は7.薬物療法を参照)
薬で男性ホルモンの分泌を抑える方法
(2) 精巣摘出術(除睾術)
手術で精巣(睾丸)を除去する方法

男性ホルモンが低下することから、性欲の低下、勃起障害、女性の更年期障害のような症状(顔面のほてり、のぼせ、発汗、疲れやすいなど)、乳房の膨大、乳房痛などが副作用として起こることがあります。この治療法は、続けていくうちにがんが男性ホルモンの少ない環境でも増殖・進行するようになる(耐性化)という問題点があり、その際は薬をかえたり、治療法をかえたりして対処することになります。

化学療法(詳細は7.薬物療法を参照)

ホルモン療法の効果があまり得られない時や、効果がなくなった時は、抗がん剤を使った化学療法を行う場合があります。

緩和医療

前立腺がんが進行して、治療に反応しなくなった場合、身体の苦痛をやわらげる治療の対象になります。骨転移巣に対する疼痛、脊椎転移による脊髄麻痺、排尿困難と血尿ならびに尿管閉塞による水腎症と腎後性腎不全などには、対策が必要になります。

治療費の補助

がんの治療には費用がかかるものが多くあります。助成制度を利用できるか確認してみると良いでしょう。

「治療にかかる費用とその支援」(外部サイト 独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)