前立腺がんの検査には、(1)前立腺がんの可能性を調べるスクリーニング検査→(2)本当に前立腺がんであるかどうかを調べる詳しい検査→(3)前立腺がんと診断された後、がんの進行度を調べる検査があります。これら検査の結果によって、がんの診断と治療法の選択が行われます。

スクリーニング検査

前立腺がんの可能性をチェックする検査です。

集団検診や人間ドック、またはかかりつけ医で任意に行うことができる比較的簡便な検査が中心です。前立腺がんは初期には症状がほとんどないがんなので、早期発見・早期治療のためにはこの検査(とくにPSA検査)を定期的に行うことが非常に大切です。

PSA(前立腺特異抗原)検査

採血をして血液中のPSAという物質の量を測ります。PSA(前立腺特異抗原)は前立腺から分泌(精液中に放出される)されている物質です。正常な方の血液の中にもわずかに含まれていますが、前立腺に異常があると濃度が高くなります。前立腺がんがある場合も鋭敏に数値が上がるため、がんをチェックする有効な指標として使われています。PSA基準値は一般的に年齢を問わず1mL中に4.0ng以下であれば正常とされますが、施設によっては、表のような年齢階層別のPSA基準値を用いているところもあります。

年齢階層別PSA基準値

50~64歳 0.0~3.0ng/mL
65~69歳 0.0~3.5ng/mL
70歳以上 0.0~4.0ng/mL

一般的にPSA検査の間隔は、PSA値が0.0~1.0ng/mLの場合は3年毎、1.1ng/mL~基準値上限では毎年の検診が推奨されています。
精密検査として針生検を実施するか否かを判断するのに非常に有効なスクリーニング検査になります。

非常に有効な検査ですが、PSA値は前立腺がん以外の異常(前立腺肥大症、前立腺炎など)でも上昇するため、PSA値が高い方すべてにがんが発見されるわけではありません。また、PSAが正常値であってもがんが発見されることもあります。1回で判断ができない場合は、時間をおいて数回測定し、数値の変動を見る場合もあります。

PSA検診を受ける利益と不利益について

PSA検診には受診することで得られる「利益」がある一方、「過剰診断・過剰治療」につながる可能性があるなどの「不利益」も存在します。

〔PSA検診を受診することによる利益〕

  • 前立腺がんで死亡する危険が低くなります。
  • 前立腺がんが転移がんで発見される危険が低くなります。
  • 早期にがんを発見することで、最適かつ生活の質(QOL)の低下が少ない治療を選ぶことができるようになります。(症状、価値観、合併症、社会的な状況を考慮して治療を選ぶことができるようになります)

 

〔PSA検診を受診することによる不利益〕

  • 前立腺がんの中には、まれにPSAが全く上昇しないがんもあります。このようながんの場合、PSA検査を継続しておこなっても見逃される可能性があります。
  • 精密検査として前立腺生検を行う場合がありますが、これの合併症として、ときに発熱、直腸からの出血、血尿、あるいは精液に血が混じるといったことがおこる場合があります。
  • 精密検査の生検でも前立腺がんが見逃される場合もあります。(がんが見つからない場合も、経過観察をすることが必要です)
  • PSA検査あるいは直腸診で前立腺がんが疑われ前立腺生検を行った場合、がんが診断されないケースが50~80%あります。この場合は、結果的に不必要な生検を受けることになります。
  • 悪性度の低いがんが見つかり、治療を必要としないケースも出てきます。このような「PSA監視待機療法」の対象となるがんは10%くらいと考えられています。
  • 前立腺がんの治療(手術・放射線療法・ホルモン療法など)をおこなった場合、合併症により生活の質(QOL)が低下する危険があります。

(日本泌尿器科学会(編):前立腺がん検診ガイドライン(2010年増補版)、金原出版(東京)、p.40-41を参考にして作成)

直腸診

患者さんが仰向け(図)や前屈みなどの体勢になり、医師が患者さんの肛門から直腸に指を入れ、腸の壁越しにおなか側に前立腺を触ります。前立腺の大きさや表面の凹凸、硬さ、弾力性、押した時に痛みがあるかどうかなどを調べます。

正常な前立腺はクルミほどの大きさで、弾力があり、表面は滑らかです。がんができていると、前立腺にしこり(硬結)が触れ、進行すると大きく、表面がごつごつして、石のように硬くなっています。前立腺肥大症の場合も前立腺は大きくなりますが、表面は滑らかで弾力があるので、がんと区別することができます。

前立腺がんの中には、PSA値が上昇しないものもありますが、そのようながんも、直腸診で発見されることがあります。PSA検査と直腸診を併用することで、前立腺がん発見の精度をより高めることができます。

超音波検査

泌尿器専門の病院・診療所では、PSA検査や直腸診で異常を認めた場合、超音波検査で前立腺を観察することがあります。
さらに、肛門から専用の超音波プローベを入れて、前立腺の内部構造を詳細に観察し、指で触れた硬いものが本当にがんなのかどうかを識別したり、前立腺のどこにがんがあるかを推定したり、前立腺の大きさを測ったりします。

確定診断

本当に前立腺がんであるかどうかを調べる詳しい検査です。

スクリーニング検査で前立腺がんが疑われる場合は、前立腺の組織を直接採って、がん細胞があるかどうかを調べます。ここで初めて前立腺がんの診断が確定されます。

前立腺生検

がん細胞があるかないか、細い針で前立腺の組織の一部を採って顕微鏡で調べます。直腸から超音波検査の器具を入れて画像で確認しながら、直腸から必要な場所に針を刺して組織を採取します(下図のA)。会陰部(肛門の手前)から針を刺す場合もあります(下図のB)。少なくとも10~12か所から採取します。
採った組織を調べ、がんが存在することが確認された時点で初めて、前立腺がんと診断されます。

前立腺がんが認められた場合は、がんの顔つき(性状)(細胞の形や配列)を調べます。これによって、がんの悪性度(どれくらい悪さをしそうながんか)が分類されます。

病期診断

前立腺がんと診断された後、がんの進行度を調べる検査です。

がんがどれくらい拡がっているか、転移がないかを調べるために、次のような画像検査を行います。患者さんの状態に応じて、必要な検査を選んで行います。この検査結果によって、がんの進行度が分類されます。

胸部レントゲン検査

がんが肺に転移していないかを調べます。

CT(コンピューター断層撮影)検査

がんがリンパ節や他の臓器に転移していないかを調べます。

MRI検査

骨盤臓器の構造を見るのに優れた画像診断で、前立腺のどこにがんができているか、前立腺の外に拡がっていないか(被膜外浸潤)を調べます。前立腺がんの存在診断と同時に治療法の選択に有用な検査です。

骨シンチグラフィ検査

がんが骨に転移していないかを調べます。
病変のある骨に集まる性質を持つ放射性物質(体内にほとんど害がないもの)を静脈に注射し、3~4時間後に特殊なカメラで撮影して画像にします。全身の骨を観察することができ、撮影時間は20分ほどで終了します。