男性だけにある前立腺という生殖器にできる悪性の腫瘍です。

前立腺とは?

前立腺は、男性だけにある生殖器のひとつです。クルミほどの大きさで膀胱の真下にあり、膀胱から出た尿道が中央を貫いています(図)。前面に恥骨、背面に直腸があり、肛門から指を入れると直腸の壁越しに前立腺に触れることができます。このため、前立腺検査では直腸診がよく行われます。
前立腺は、前立腺液を分泌している臓器です。前立腺液は精液の一部となり、精子にエネルギーや栄養を与え、守り、運動を助けて卵子と受精しやすくする働きがあります。生殖機能において大切な役割がある臓器ですが、男性ホルモンを分泌しているわけではないので、前立腺がなくなっても男性らしさがなくなることはありません。しかし、前立腺そのものの成長や活動には男性ホルモンが深く影響しています。そのため、前立腺にできたがんも、男性ホルモンの影響を受けて成長するという性質があります。

がん(癌)とは

人間の身体のすべての臓器は、細胞からできています。その細胞は古いものが死滅する一方で、分裂して新しいものが生まれており、常に一定の数を保つよう制御されています。
ところが、何らかの原因(主に遺伝子の突然異変といわれています)でこの制御が利かなくなり、細胞が勝手に分裂して増殖したり、死滅すべきものが死滅しなくなります。こうして発生した異常な細胞は、組織の塊(かたまり)を作るようになります。これが、「腫瘍」と呼ばれるものです。
腫瘍の中でも、「悪性」のものは、発生した周囲の組織に入りこんで無秩序に増殖し、もとの組織を破壊して、その臓器の機能を失わせてしまいます。さらには、遠く離れた他の臓器にまで転移して増え続け、生命を脅かすことになります。この「悪性の腫瘍」が、がんなのです。
対して「良性」のものは、このような悪さはせず、増殖も穏やかです。

前立腺がんとは

前立腺がんは前立腺にできたがんをいいます。前立腺がんも他のがんと同じように、転移や再発することがあります。早期に発見・治療をすれば完治を目指すこともできます。
がんが前立腺だけにとどまり、他の臓器への転移がなければ、手術や放射線治療などの適切な治療を行うことで、10年生存率80%以上が期待できます。前立腺から離れた場所に転移している場合は5年生存率が45%になりますので、いかに早い時期に発見し治療するかが大きな鍵となります。

前立腺がんは、高齢になるほど罹患率が増えるということと、進行がゆっくりしている場合が多いという特徴があります。がんにかかっている方を年齢別に調べてみると、60歳以上でその数が急激に増加します。
しかし、高齢者の前立腺がんの25~50%は、進行が非常にゆるやかで、治療をとくに必要としなくても寿命にも影響を及ぼさない場合があります。他の原因で亡くなった方を調べてみたら、70代の2~3割、80代の3~4割に本人が気づいていない前立腺がんがあったという報告もあるくらいです。
前立腺がんの成長速度には人種差があることが知られており、アジア人は欧米人よりも遅い傾向があります。前立腺の成長や活動には男性ホルモンが深く関わっていますが、前立腺にできたがんも同じように、男性ホルモンの影響を受けて成長します。時間とともに進行し、リンパ節や骨など他の臓器に転移します。

前立腺がんの患者数

現在、わが国で前立腺がんの患者数は約18万人と推定されます(2011年厚生労働省患者数調査による)。罹患者数(年間の新規発生患者数)推定値は 2011年で7万 8,728人で、男性では胃がんに次いで2番目に多く、この20年間における増加も顕著なものがあります(図1)。今後、社会の高齢化や生活環境・食生活の欧米化とともにPSA検査の普及により、さらに増えるであろうと予想されています。日本人の前立腺がんによる死亡数も年々増加し、2014年では1万1,507人とこの20年間で約2.4倍に増加しています(図2)。

図1:日本人における男性がん罹患者数の推移(「部位別羅患数(全国推計値)年次推移 国立がん研究センターがん対策情報センター」より作図)

図2:日本人における前立腺がん死亡者数の推移(「部位別死亡数年次推移 国立がん研究センターがん対策情報センター」より作図)