内容につきましては、ご理解いただきやすいよう部分的に加筆・修正をしております。
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事前質問
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Q1 「株価低迷に対する対策」や「今後の事業方針」について
A 株価は、様々な要因により変動するものでありますが、今後の当社の将来成長のための施策について株式市場にご理解いただくために、コミュニケーションの充実をはかることが重要と考えています。
2023年度は、レキスキャンの後発品参入、IVERIC bio社買収による費用の増加、VEOZAHの想定を下回る進捗、減損損失の計上などにより、業績予想について、コアベース、フルベースともに複数回の下方修正を行いました。株式市場の皆さまの期待に応えられなかったことを、経営陣として重く受け止めています。
そこで、2024年度業績予想については様々なシナリオ分析を行い、リスクと機会を勘案して、意欲的でありながら、達成可能性にも従来以上に配慮した、よりバランスの取れた計画を策定しました。また、フルベースでは、期中に発生する予期しない下方修正のインパクトを和らげるために、減損損失リスクなどのその他の費用を期初予想に織り込みました。
なお、現時点で何か具体的な減損の兆候があるというわけでなく、過去計上したその他費用実績や無形資産残高を基に見積もりました。
そして、今後アステラスが成長していく姿を株式市場にお示しすることが何より重要であると考えています。
経営計画2021の主たるテーマはXTANDIの独占販売期間満了を克服できる体制を構築することであり、残りの期間で、その体制をしっかりと整えていくことが極めて重要であると考えています。
プレゼンテーション資料のスライド19において右側に示した重点戦略製品の将来成長に重要な取り組みやマイルストンを着実に進めることで、パドセブ、IZERVAY、VEOZAH、ビロイなど、主な成長ドライバーの売上成長に伴って利益も大きく拡大することを見込んでいます。
また、2025年度末までにPoC取得、すなわち、後期開発への進展を支持する臨床試験データの取得に成功するPrimary Focusのプログラムが出てくれば、持続的な成長を可能とするパイプラインの構築につながると期待しています。
Q2 「医薬品の開発は何がありますか」や「IZERVAYは日本でいつ販売になりますか?」など、臨床開発状況について
A 今後の開発の見通しについて説明いたします。
最初は、重点戦略製品について、2024年度に期待される主なイベントです。
尿路上皮がん治療剤のPADCEVは、EV-302試験に基づく一次治療の適応追加申請に関する日本および欧州での当局判断を第3四半期に見込んでいます。
胃癌治療剤のビロイは、米国食品医薬品局への再申請が5月に受理され、審査終了目標日が2024年11月9日と定められました。他の地域での当局判断は、欧州は2024年度後半、中国は第4四半期を見込んでいます。
加齢黄斑変性治療剤のIZERVAYは、米国でのラベル改訂の申請について、審査終了目標日が11月19日と定められています。欧州での当局判断は、現時点では2024年度後半になると見込んでいます。
ご質問の日本における開発に関しては、現在、当局と予備的な協議を行っております。今後の協議結果に応じて、追加があれば適宜お知らせいたします。
Focus Areaアプローチの進展では、2025年度末までに4つのプログラムで後期開発への進展の是非を判断するための臨床試験データの取得、を見込んでおります。具体的には、ポンぺ病を対象とした遺伝子治療薬AT845、胃がんを対象とした二重特異性抗体ASP2138、眼科領域の地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性を対象とした細胞治療ASP7317、固形がんを対象としたKRAS G12D分解誘導剤ASP3082
の4つです。
データ発表のタイミングは現時点で決まっておりませんが、順次お知らせする予定です。
2023年度のFocus Areaアプローチの主な進展については、プレゼンテーション資料のスライド12ページをご覧ください。
閉じるQ3 「株主還元方針」や「2023年度が前期と比べ大きく減益となった中、増配に踏み切った背景と、配当性向が非常に高い状態をどのように考えているか」など、配当方針について
A 株主還元方針ですが、成長を実現するための事業投資を最優先し、中長期的な利益成長に基づき、配当は安定的かつ持続的に向上させるという従来の方針に変わりはありません。
2024年度の配当については、利益成長の減速に加え、IVERIC bio社買収で発生した借入金を返済し財務健全性を早期に回復させることも意識し、4円増配を予想しています。
新たに導入する「コア営業利益」の新定義に基づけば、当社のコアビジネスによる収益力が今後も伸びていくと期待しており、持続的な成長と安定した財務基盤の両立を目指してまいります。
配当利回り、配当性向については具体的な目標や目安は開示しておりませんが、経営計画2021期間中は、2024年度以降の成長を見据えたうえで、より高い水準の配当を目指してまいります。
コアの新定義に関しては、以下もご参照ください。
ニュース | アステラス製薬 (astellas.com)
Q4 「小林製薬や自動車業界で不祥事が相次いでいるが、当社は大丈夫か。問題をどのようにとらえているか。」
A 他社様のことについては言及を差し控えさせていただきますが、他山の石のように捉えておらず、当社あるいは製薬業界に置き換えて注視しております。
医薬品は、規制当局に審査・承認された製造方法にて製造され、工程と品質が適切に管理されていることを製造ロットごとに保証します。当社では、さらに配送まで、一貫した高水準の品質管理を徹底していますので、どうかご安心いただきたいと思います。
医薬品の品質と安全性を確保することは、製薬企業の根幹であり、しっかりとした管理体制のもと信頼いただける安全な医薬品を患者さんに届けられるよう常に意識しております。
当社では、製造責任者とは別に、独立した品質保証の責任者を社長直属に設置することで、厳格な管理体制を敷いています。
また、社内に向け法令遵守の必要性を常日頃から周知するとともに、何か問題が起きた際、速やかに解決に向けた指示を出すだけでなく、日頃から、問題が小さいうちに社長にも情報が届くような体制、雰囲気づくりに努めています。小さな違和感が問題に発展する前に、改善の対処を指示できるような体制を会社として構築しています。
革新的で信頼のおける医薬品を患者さんに確実に届けるためのすべての努力を続けていきます。
閉じるQ5 自社株式を保有しない取締役、候補者がいるが、なぜでしょうか。
A 業務執行取締役(会長、社長、副社長)については、株主との利害共有の強化を図り、中長期的な企業価値や株主価値の向上への意識をさらに高めることを目的として、株式報酬を付与しており、当社株式の保有に関するガイドラインを設け、当社株式の保有を奨励しています。
社外取締役その他の業務執行をしない取締役が自社株式を保有すべきか否かについては、取締役と株主の利益を一致させるという観点から株式保有に肯定的な考え方や、独立性が損なわれるとの懸念から否定的な考え方など、さまざまな考え方があるところです。
また株式保有は個人の財産にかかわる事柄でもありますので、当社では、社外取締役その他の業務執行をしない取締役については、実際に当社株式を保有するか否かについて各個人の判断に任せています。
各取締役候補者については、その経験、見識等を評価していずれも当社の経営やその監督に貢献していただける人を提案しており、当社株式の保有にかかわらず、取締役としての職務を遂行していただけるものと考えています。
閉じるQ6 第1号議案の桜井候補および第2号議案の荒牧候補は、3社以上の社外取締役を兼職しており、当社の取締役として十分職務に専念できるか疑問です。女性という理由で選任するのは間違っていると考えます。
A 兼職先及び兼職数に関しては、当社の社外取締役としての職務遂行に支障がないことを前提として、当人と確認しています。兼職数が多くなる場合は、社外取締役へより慎重な判断をお願いしています。桜井候補、荒牧候補を含め、本株主総会で選任いただきました役員の兼職数及び兼職先に関しては、当社の社外取締役としての職責を果たすうえで問題ないと判断しています。
また、経営戦略に照らして取締役会がその機能を適切に発揮するために、取締役会が全体として備えるべきスキル等(知識・経験・能力等)を特定したうえで、取締役候補者を選定しています。取締役および社外取締役候補者とした理由は招集通知に記載のとおりであり、性別を理由に選定しているものではありません。
閉じるQ7 経営計画2021の成果目標にコア営業利益率30%以上とあります(22年までは約18%)。
対応策として記載されている「デジタル技術活用による業務効率の最適化」でそこまでコア営業利益率は上昇するのでしょうか?より詳細で具体的な説明をお願いします。
A 具体的な案件や取り組みについては検討段階であるため、今後皆様にお知らせできるタイミングで適宜、開示してまいります。
デジタル技術活用による業務効率の最適化の一つの例として、生成AIのビジネスへの活用があります。社内外の生成AIツールを積極的に模索するだけでなく、個人データや機密情報を含む社内データの適切な使用と保護を確保するためのガイドラインの整備を行うなど、デジタル&変革担当のNick Eshkenaziが先頭にたち、社員が日常業務において生成AIを活用するための環境作りを推進しています。また、研究開発活動においては、大規模言語モデルを活用した多数のシステムを社内で開発し、採用しており、今後も推進していきます。
Q8 AT808の減損処理や、血管運動神経症状治療剤VEOZAHの当初予想を大幅に下回る売上など、現体制は、マーケットリサーチやマーケットの拡大戦略等において大きな問題を抱えていると考えています。経営責任、役員報酬減額について見解を明らかにするとともに、今一度開発戦略とマーケット戦略を基本から見直すべきと考えますが、役員体制の見直しを含め、その覚悟はあるのか、お伺いしたい。
A 血管運動神経症状治療剤VEOZAHに関して、2023年度の当初計画と実際の売上額との乖離が生じた要因は、マーケットリサーチ機能の不足で発生したものではなく、市場の変化によるところが大きいと考えています。計画立案当時のマーケットリサーチは製品発売前のデータを基に行われましたが、市場は変化しており、2024年度の計画は、最新データに基づき立案し推進しています。
マーケット戦略を根本から見直すのではなく、VEOZAHの製品価値向上に最も重要な、保険償還の加速、医師の製品の認知向上、患者の疾患認知向上という現在の3つの活動を、より加速することにより2024年度の売上目標の達成を目指します。
2023年度は、株式市場の皆さまの期待に応えられなかったことを、経営陣として重く受け止めています。現在実行中の経営計画2021の主たるテーマはXTANDIの独占販売期間満了を克服できる体制を構築することであり、残りの期間で、その体制をしっかりと整えていくことが極めて重要であると考えています。
2024年度以降、重点戦略製品が本格的に売上に寄与することを見込んでおります。本総会で選任いただきました役員をはじめ全社一体となり、持続的な成長に向けて引き続き全力で取り組んでいきます。
Q9 IZERVAYの獲得によりXTANDIの特許満了を回避するめどが立ったのは喜ばしいですが、その次のアステラスの発展を担う初期・中期段階のパイプラインが質・量共に貧弱な点を非常に懸念しています。Focus Areaアプローチのコンセプトはアステラスの研究開発の規模には合致しないように思われ、思い切った見直しが必要と思います。モダリティの種類の絞り込み、製品・開発品導入への注力等が必要ではないでしょうか。
A 貴重なご意見ありがとうございます。
当社は研究開発への投資にあたり、Focus Areaアプローチの考え方に基づいて選定したPrimary Focusに重点的に資源の配分を行い、革新的な治療法の研究開発に取り組んでいます。
Focus Areaアプローチを開始した当初からこれまでに、合計で6つのPrimary Focusを認定しましたが、試験の進捗やその結果を踏まえて取捨選択し、現在は、遺伝子治療、がん免疫、再生と視力の維持・回復、標的タンパク質分解誘導の4つをPrimary Focusと定めています。それぞれのリードプログラムが後期の臨床試験に入れるか判断するデータを2025年度までに取得できる見込みです。試験結果や後続品の進捗などを総合的に判断し、これまで通り優先順位をつけながら今後の投資を行っていきます。
社内ポートフォリオや外部環境に鑑み、製品・開発品導入の検討も随時行っています。
Q10 経口腎性貧血治療剤エベレンゾの売り上げ拡大の対策はいかがでしょうか?
A 2024年度の通期予想としてエベレンゾのグローバル売り上げは47億円を予想しています。
エベレンゾに関しては、競合品の存在など依然として厳しい環境下にありますが、適切な情報提供などを行うことで計画達成に向け取り組んでまいります。
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Q1 業績予想に関し、日本企業では最初の予想を低めに設定し、上方修正を重ねることが一般的ですが、社長の考えを伺いたいです。また、社内では意欲ややる気を示すために営業目標値を高めに報告することになっていないか、社内風土についてもお伺いしたいです。
A 当社は、より高みを目指し、なるべく多くの患者様に当社の薬をお届けするのが使命だと考えており、必ず達成できる目標よりも、意欲的な目標を掲げた上で、その達成に全力を挙げていくという企業風土を作っていきたいと考えております。
一方で、一部には無理な目標を掲げて、それが自分の意欲を示していると勘違いするようなケースがあるのではないかという声は社長自身の耳にも入っています。
当社は、売上が絶対的なのだということではなく、あくまでも必要な患者様に当社のお薬を届けていく、その使命を全うすることが使命だと考えております。
2024年度につきましては、複数回の下方修正を行った2023年度の反省も踏まえ、ただ単に意欲的な目標ということではなく、どのように達成していけるかという道筋も含めてお示しし、達成可能性ともバランスを取りながら目標を設定しました。
閉じるQ2 2023年度に減損損失を計上するなど、創薬はハードルが高く、難しい面もあると思います。御社では創薬にAI(人工知能)を活用しているか、そして今後もAIの活用を進化させていく方向に進んでいるかを教えてください。
A 当社は、創薬活動にAIを積極的に活用しています。具体的な例として、低分子化合物の最適化研究にAIを数年前から活用し、非常に有望な結果を得ています。最適化にかかる時間が70%短縮されるなどの成果もあります。
また、抗体薬や遺伝子治療薬などの新しいモダリティ(治療手段)への研究にもAIを活用し、遺伝子配列の最適化などに取り組んでいます。昨年度、AIをリードするNVIDIA社のGPUへのアクセス権を獲得し、AIの創薬活動をさらに加速させています。今年度もAI活用の効果が創薬活動に期待されています。
GPU: Graphics Processing Unit 映像の処理を専門に行うプロセッサーのこと。グラフィックスやビデオの描画、画像処理、3Dレンダリングなど、視覚的な情報の処理に特化。また、最近ではAIなどの高度な計算処理にも使用されている。
閉じるQ3 経営計画2021の成果目標の達成が厳しいという話なのであれば、目標を据え置いたままでは市場の評価が上がらないと思います。経営計画2021の成果目標を見直し、再度市場に問いかけることで、アステラスの評価が上がり、時価総額も上昇する可能性があると期待しています。経営計画2021の見直しについて、どう考えていますか。
A 経営計画2021そのものをこの時点で変更するのではなく、現在の見通しを考慮しながら、資本市場に対して達成可能な目標を正しく伝えていきたいと考えています。
成果目標の中で、2025年度の売上収益に関しては、元々XTANDIと重点戦略製品の合計で1兆2,000億円を目指すとしていました。現在の見通しでは、XTANDIを除いた、重点戦略製品の売上収益として2025年度には5,000億円程度を目指していますので、達成に向けある程度の自信を持っています。
パイプラインの価値については、4つのPrimary Focusそれぞれの基幹製品が2025年度までには後期の臨床試験に入れるかどうかというデータが取得できる見込みですので、これらが成功すれば、そのPrimary Focusから後続のプロジェクトが出てくることも期待でき、パイプラインの価値をさらに高めていくことができると考えています。
最後にコア営業利益率ですが、コアベース業績の定義を変更したことも踏まえて、これまで通り、長期的な目標としてのコア営業利益率30%は、常に北極星のごとく掲げ、XTANDIの独占期間満了までにどこまで利益体質を強化できるかということが、当社にとっての課題だと認識しています。
Q4 売上高は増えているが、営業利益と営業利益率が減少している理由は、IVERIC bio社の買収によるものと説明されていますが、それは予想されていたことでしょうか。
また、要望ですが、薬品名について、英文字の薬品名は株を買いたい人にとって敬遠される原因になる可能性があるため、カタカナに統一してほしいです。
A IVERIC bio社の買収は2023年5月に合意されたため、当初の2023年度計画には含まれていませんでした。そのため、買収後に買収に係る費用や今後の見通しを精査したうえで、第2四半期の決算時点で修正を行いました。M&Aは完了するまで実現するかどうか不確定であるため、完了前の段階で年度計画に織り込むことは困難でした。
製品名に関しては、開発段階の製品は通常、英数字表記のプロジェクト番号で示されますが、上市に近づくと商品名に変わります。招集ご通知等の書面の中は、日本で承認されている製品についてはカタカナで表記しており、日本未発売のものについては英字で製品名を表記しております。
皆様のご理解を促進するため、よりよい表記方法を検討してまいります。
Q5 中国において拘束されている当社社員について
A 本件につきましては、関係する皆様方に大変ご心配をおかけしております。従業員の方の健康、安全が確保されるように、引き続き関係各所と連携しながら、適切に対応してまいります。
閉じるQ6 岡村社長にお尋ねしたいのですが、経営に関して自身の見立てが外れたと感じたエピソードや、株主に自慢したい成果などがあれば教えていただきたいです。
A 見立て違いは、様々起こると思いますが、その見立て違いが起きた時に、それに対してどれだけの対応策を取れるかということで、経営の質が決まってくると考えています。
2023年度は、残念ながらあのような決算内容になりましたが、新しいマネジメントチームでは、リスクも機会に対してもより綿密にシナリオ分析を行い、それらに対する対応策を様々手元に置いた上で経営の舵を取っていきたいと考えています。
それから、私自身が自慢する立場ではございませんが、アステラス製薬の一番の強みは、イノベーションに躊躇なく取り組んでいくところだと思っています。
これまでPrimary FocusからPoC取得、すなわち後期開発に進むことを示唆するようなデータの取得が達成できていないことは非常に残念ですが、これは世界の誰もまだ行っていないような最先端の科学を追求していることの結果であって、もう少しすれば、そのイノベーションの中から確かな製品が出てくると信じております。株主の皆様にはしばらくご辛抱いただくことになりますが、引き続きご支援をいただければと考えております。
Q7 ROE(自己資本利益率)も市場での評価対象になると思いますが、ここ4、5年のROEは低くなっています。ROEについてはどのように考えていますか。また、目標値設定における為替レートはいくらで想定していますか。
A 持続的な成長、企業価値の向上のためには、資本コストや株価に対する意識が不可欠であると認識しています。特に企業価値向上のためには、資本コストを上回る資本収益性を確保することが重要であると考えており、定期的にWACC(加重平均資本コスト)を算出、検証し、事業投資の意思決定の一つの指標として活用しております。
一方、医薬品事業は、足元の業績状況に加えて、開発パイプラインの将来価値によっても株価の評価を受けるものと認識しています。単年度の実績値として算出されるROE(自己資本利益率)や、ROIC(投下資本利益率)等々の資本収益性指標よりも、将来のパイプライン価値による評価を一つの指標とするほうが適切と判断し、経営計画2021を策定し、推進しております。
また、2024年度の為替レートは、対ドル145円、対ユーロ155円で想定しています。
閉じるQ8 市場性を考えると抗がん剤の研究開発に力を入れていることは正しいと思いますが、新しい機序など、何か期待できそうな開発品はありますか。また、アルツハイマー症候群などに対する開発品はないようですが、今後高齢化が進むにつれて市場の拡大が見込まれると思いますが、どう考えていますか。
A 当社が販売する抗がん剤では、XTANDI、ゾスパタは伝統的な低分子化合物、先日日本で発売したビロイは抗体そのものを用いた抗体医薬、パドセブはADC(薬物抗体複合体:抗体に他の機能を有する化合物を結合し、がん細胞に取り込まれた後で、その化合物ががん細胞を殺すことで薬効を示す)など、さまざまな種類があります。
当社が注力する4つのPrimary Focusのうち、がんを主たる標的とするがん免疫と標的タンパク質分解誘導の2つでは、これまで伝統的だった低分子や抗体をそのまま使うという形ではなく、これらをさらに改変した形で薬効を強める、あるいは安全性を高めるなどの取り組みを行っています。
例えば、がん免疫の最初の化合物は二重特異性抗体と言って、抗体の片腕はビロイと同じがん細胞の標的、もう片腕は免疫を司るT細胞をつかむことによって、がん細胞とそのがん細胞を攻撃するT細胞を接近させる抗体において、2025年度までにPoC取得(後期開発への進展を支持する臨床試験データの取得)の可能性があります。
また、Primary Focusである標的タンパク質分解誘導は、低分子二つをリンカーというもので繋ぐことで、従来の低分子では標的することが困難であったがんに関連するタンパク質を分解するというコンセプトに基づいており、こちらも2025年度までに基幹プロジェクトのPoCの判断(後期開発への進展の可能性判断)をできる予定です。
イノベーションに取り組んでいくことが当社の使命と考えてはおりますが、全ての領域にまんべんなくということはできません。アルツハイマー症候群などの一部の疾患につきましては、戦略的な理由から、当社の取り組みの対象外としており、取り組むことを決めている細胞医療、あるいは遺伝子治療のようなところにより経営資源を投下してまいります。
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Q1 現在業績が厳しい状態ですか、業績・株価はいつ頃までに回復予定ですか。期待してまってます。
具体的な株価対策を提示ください。
A 株価は様々な要因によって変動するものでございますが、今後の当社の将来成長のための施策について、株式市場にご理解いただくため、コミュニケーションの充実を図っていくことが重要と考えております。
数多くの株主様から当社の株価に対するご質問、それからご意見が寄せられたことを、経営陣としては重く受け止め、株式市場からの信頼回復に努めてまいりたいと考えております。
株価に関する当社の考えにつきましては、事前質問Q1の回答をご覧ください。
閉じるQ2 昨今、市場では従業員の賃上げが話題となっています。当社の賃上げ水準は他社と比較してどのようになっていますか?また、海外と比べた場合はいかがですか?
A 当社は、国や地域ごとの労働市場の報酬水準の動向を確認し、優秀な人材の獲得のために競争力のある報酬を設定しています。日本国内では、2024年度は通常の昇給に加えて追加昇給を行い、平均で約4%の昇給を7月に予定しています。海外の労働市場では、日本よりも高い昇給率で推移している国・地域では、4%を超える昇給も行っています。
ビジネス環境は会社ごとに大きく異なることから、他社との比較ではなく、全体的な労働市場の動向と競争力を考慮し、適切な報酬水準を維持することを重視しています。
Q3 時価総額7兆円を目指すと言われていましたが、進捗はかなり厳しい状況だと思います。アステラス製薬としての見解をお教え下さい。
時価総額倍増の話はどこに消えたのでしょうか? その言葉を信じて投資し、騙された思いです。今後も今のところ持ち続ける考えではありますが、倍増が実現するのはいつを想定しているか回答下さい。
A 当社は、株式時価総額自体を目標にはしていませんが、経営計画2021では、3つの成果目標を達成することで、2025年度には株式時価総額7兆円以上と評価されるような会社を目指すと申し上げておりました。株価を意識して経営を行っていないというわけではありません。株価は、足元の利益や将来の成長、様々なステークホルダーの信頼などから形成される、と認識しています。
売上収益やコア営業利益率の目標を達成し、新しいイノベーションによる研究開発でパイプラインの価値を高めることで、株価の回復を目指しています。
株価の変動は予測できませんが、堅実な経営計画の推進により、資本市場からの信頼を回復し、株式時価総額の回復につなげたいと考えています。
Q4 臨床開発段階のプロジェクトで実現性・期待売り上げが高いものは何ですか?また、それは何時から業績に貢献する見込みですか?
A 重点戦略製品の追加適応症開発を急ぐことと、Focus Area アプローチからの新規製品の創出、の2つの戦略を推進しています。
重点戦略製品であるビロイとパドセブについて、追加適応症の開発や新たながん種での効果を検討しています。ビロイでは膵臓腺がんの試験が進行中であり、今年度の第4四半期にトップライン結果を取得できるものと見込んでいます。パドセブでは、尿路上皮がん以外のがん種においても開発を進めており、頭頸部がん、乳がん、肺がん、食道がんに対する臨床試験の結果を学会で発表しました。また、ビロイと同じ標的タンパクおよび免疫細胞をターゲットとするASP2138という二重特異性抗体も開発中であり、免疫療法と組み合わせることで効果を高めることを目指しています。
これらのプログラムの具体的な売上規模や上市時期については開示していませんが、各Primary Focusのリードプログラムを含め、早い時期に良い薬を患者さんに提供するために全力で開発を推進しています。
Q5 監査の体制について質問します。他社(製菓大手)で最近問題になっているようなシステムトラブルに関して、御社の監査法人はシステムをチェックする能力があるのかどうか(システムに詳しい者がきちんと監査しているか)を確認したいです。その上で、監査等委員は会計監査人の監査を相当であると評価しているのか、監査等委員会である取締役にお伺いします。
A (総会当日は吉光取締役により回答)
当社の会計システムについて、2020年から全社で統一されたシステムに変更しています。変更当初から当社の会計監査人であるEY新日本有限責任監査法人の専門スタッフによって、その適切性が確認されています。また、内部統制として、システムの運用に関しても会計監査人による監査が行われており、監査等委員会は定期的に監査報告を受けております。以上の定期的な報告を受けた結果、監査等委員会は、会計監査人のシステムに対する監査については、相当であると認めています。
Q6 日本国内では、ジェネリックを中心として薬品の不足が深刻となっているが、業界のリーディングカンパニーとして、薬価改定を含め、医薬品不足について、官民協力してどのように対応していこうと考えているか。また、業界全体での医薬品の不足は、貴社の業績にどのようなインパクトが考えられるか。
A 当社は、イノベーションを追求していく新薬開発に特化した研究開発型の製薬会社ですので、ジェネリックを自ら進めていくという考えは持っておりません。
その前提の上で、新薬について、欧米で既に発売されている製品がなかなか日本には届かない、あるいは開発すらされていないという、いわゆるドラッグラグ・ドラッグロスの状況について、非常に深刻な問題であると捉えています。
この問題に対して、製薬業界の団体や経団連などに対する活動も含めて、幅広く制度改革等を訴え続けております。
また、高品質で安全な製品を確実にお届けするということは、製薬業界にとってあるいは当社にとって最大の使命です。当社の主要製品については、原材料や生産拠点の複線化、あるいはバックアップ体制の構築などにより、必要な医薬品を必ず患者様にお届けできる供給体制を構築しています。
Q7 今後の株主還元について、もう少し詳細に教えていただきますでしょうか。
A 2024年度は、前年比で4円の増配、74円を予想しています。
2024年度の配当金について、利益成長が想定よりも遅延している現状を踏まえ、従来の増配幅は見直しましたが、将来の利益成長には引き続き自信を持っており、4円という増配幅を予想しています。
経営計画2021の期間中は、今後のさらなる成長を見据えた上で増配ペースを決定してまいります。
自社株買いについては、現時点で方針に変更はありません。
当社の方針は、まず成長に必要な事業投資を最優先し、かつ安定的、継続的な配当成長を行い、それでも余剰資金が生じた場合には、速やかに自社株式取得を実施する方針です。
Q8 今後の採用方針についてお伺いしたく存じます。 営業利益の減少に伴って研究開発職における新卒採用やキャリア採用を減らす予定はありますか。
A 短期的な業績の上下に基づいて採用方針を決定することはありません。長期的な戦略に基づいて、今後は、むしろ積極的に採用活動やインターンシップを実施する予定です。ビジネスの進捗状況だけでなく、将来のポートフォリオや必要な能力を考慮した採用の実現を目指します。
閉じるQ9 中国において拘束されている当社社員について
A 本件につきましては、関係する皆様方に大変ご心配をおかけしております。従業員の方の健康、安全が確保されるように、引き続き関係各所と連携しながら、適切に対応してまいります。
閉じるQ10 決算段階での大幅な減益は株主や市場からの信頼を損なうものである。遅くとも第3四半期までに把握できていた以下の減益要因を明らかにしなかったことは大問題。
IVERIC bio社買収に伴う「無形資産償却費」の大幅な増加は買収した時点で想定出来たものであり、引当金のように、想定金額を別途積み立てておくべき。
また、VEOZAHの民間保険については、事前に準備すべきことであったと考える。
A 2023年度は、レキスキャンの後発品参入、IVERIC bio社買収による費用の増加、VEOZAHの想定を下回る進捗、減損損失の計上などにより、業績予想について、コアベース、フルベースともに複数回の下方修正を行いました。株式市場の皆さまの期待に応えられなかったことを、経営陣として重く受け止めています。
2024年度業績予想については様々なシナリオ分析を行い、リスクと機会を勘案して、意欲的でありながら、達成可能性にも従来以上に配慮した、よりバランスの取れた計画を策定しました。また、フルベースでは、期中に発生する予期しない下方修正のインパクトを和らげるために、減損損失リスクなどのその他の費用を期初予想に織り込みました。なお、現時点で何か具体的な減損の兆候があるというわけでなく、過去計上したその他費用実績や無形資産残高を基に見積もっています。
市場調査によると、医師や薬剤師などの医療従事者の大多数は、現時点ではVEOZAHに対する保険適用範囲が処方の最大の障壁であると述べています。医療従事者、患者、市場参入への継続的な投資を行うことにより、VEOZAHの認知・教育と採用が促進され、年間を通じて需要が直線的に増加すると予想されます。今後の対策として、2024年度末までに、米国における民間保険カバレッジを80%以上にすることを目指します。
閉じるQ11 VEOZAHの売上が想定を下回ったことに関して、その原因分析結果、今後の対応策ならびに今後の見通しの確からしさについて、もう少し分かり易くご教示ください。
A 主な要因は以下の2つと考えています。
1. 米国におけるVEOZAHの宣伝活動が売上に影響するまでに予想以上の時間を要している
米国におけるVEOZAHの売上促進に対しては、製品名を使った直接的な宣伝活動が効果的と考えておりますが、宣伝活動が実際の需要の増加に影響を及ぼすまでには相応の時間を要します。
当初の想定よりも宣伝活動の効果が現れるのに時間がかかっており、患者様が医師とVEOZAHについて話し合い、処方箋を受け取って調剤をうけるまでの患者の工程とそれに要する時間は、当初の予想よりも長いことが判明しました。
2. 米国の保健支払者の動向も需要の増加に一時的な影響
市場調査によると、医師や薬剤師などの医療従事者の大多数は、現時点ではVEOZAHに対する保険適用範囲が処方の最大の障壁であると述べています。
医療従事者、患者、市場参入への継続的な投資を行うことにより、VEOZAHの認知・教育と採用が促進され、年間を通じて需要が直線的に増加すると予想されます。
今後の対策
- 2024年度末までに、米国における民間保険カバレッジを80%以上にすることを目指します。
- 引き続き製品名を使った直接的な宣伝活動全体を通じて、消費者や医師の意欲の向上に努めます。
- VMS(血管運動神経症状)の市場を継続的に成長させるための活動を重点的に実施します。
- 2024年度は、情報媒体の多様化に対応するため、様々な方法を組み合わせた情報提供を重点的に実施します。
Q12 過去1年間で株価が30%以上下落したという現状について、取締役の皆様の責任は非常に大きいと感じております。その点について、各取締役の皆様はどのようにお考えでしょうか。特に副社長のご意見を伺いたいと思います。
A 株式市場の皆さまの期待に応えられなかったことを、経営陣として重く受け止めています。
株価に関する当社の考えにつきましては、事前質問Q1の回答をご覧ください。
Q13 今後、貴社の株価上昇につながる材料があれば教えてください。
A 株価に関する当社の考えにつきましては、事前質問Q1の回答をご覧ください。
閉じるQ14 大学や他社など社外の知見を活かすことは重要だと思いますが、研究における社外との連携について、どのように考えていますか?
A 製薬会社は自社研究のみならず、他者との協働から、価値を創造しなければならない時代になっています。当社は、2013年ごろから欧米を中心に社外とも積極的に連携してきました。日本は、産業に関わる人々が外部連携する環境が欧米に比べ発達しておらず、産官学が一体となって成熟させる必要があると考えています。
当社では、大学との戦略提携、共同研究講座の設置、社外の方が使用できる研究施設の展開など様々な方法でオープンイノベーションに取り組んでいます。従来のように社外のイノベーションを取り込むだけではなく、パートナーの成長を支援し、連携の環境を発展させることで、ともに価値を生み出し、新たな医薬品の創出に貢献していくことを考えています。
最近の取り組みの例として、SakuLabTMやTME iLabといった社外の方が使用できる研究施設を国内外で展開しています。
その一つであるSakuLabTM-Tsukubaはアステラスつくば研究センターの敷地内にあり、利用者に対し、創薬に関する当社の様々な専門家によるサポートや当社の研究者とのネットワークの機会を提供し、当社の研究者にとっても刺激になるようにしています。
直近では、ボストン近郊のケンブリッジでも、社外向けの研究施設の活動を開始しました。
オープンイノベーション:製品開発や技術改革、研究開発や組織改革などにおいて、自社以外の組織や機関などが持つ知識や技術を取り込んで自前主義からの脱却を図ること。
創薬研究におけるオープンイノベーション | アステラス製薬 (astellas.com)