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社会 × ヒト

健全なスポーツが行われる社会のために

医療政策部 CSR &グローバルヘルスグループ
大野 好美(おおの よしみ)

国内外を問わず、競技会のたびに注目されるドーピング問題。国や各競技団体によるドーピング防止に向けた対策も注目されています。アステラス製薬では、CSR &グローバルヘルスグループが中心となってアンチ・ドーピングに取り組んでいます。

より複雑化する近年のドーピング

最初に基礎的なことを伺います。ドーピングとはどんな行為を指しますか?

大野: 「スポーツ競技において、アスリートが自分の運動能力を実態以上に向上させるために、薬物(ドープ=Dope)を不正に使用したり、物理的な方法をとること、また、それらを隠蔽する行為も含めてドーピングと言います」

対象となる薬物にはどんなものがありますか?

大野: 「一般的な方がよく耳にするものとしては筋肉増強の目的で使われるステロイド剤がありますが、その他にも世界アンチ・ドーピング機関(WADA)や日本アンチ・ドーピング機構(JADA)、各競技団体がさまざまな“禁止物質”や“禁止方法”を指定しています」

かぜ薬やのど飴などに含まれている成分によってドーピング検査で陽性になってしまったということもあるようですが?

大野: 「ドーピングというと何か特別な薬を用いているように感じるかもしれませんが、私たちが普段接する薬の中にも、指定されているものが数多くあります。WADAでは毎年1月1日に禁止表を更新しているのですが、アスリートやコーチが最新の情報を知らなかったり、ドーピングに詳しくない医師から処方された薬を飲んでしまったために検査で反応が出てしまう例もあります。ドーピングは故意かそうでないかに関わらず、規定に違反したということで処罰が下ることがほとんどです。そういう意味でいえば、プロであれアマチュアであれ、スポーツに関わっている人は自分には関係ないことと思わず、もっとドーピングに関心をもってほしいですね」

薬物以外のもの、物理的な方法とはどのようなものでしょう?

大野: 「たとえば自分の血液をあらかじめ貯蔵しておき、試合前にその血液を戻して赤血球の量を増やすいわゆる“血液ドーピング”や、検査前に他人の尿を自分の膀胱に注入する“尿ドーピング”などです。また、最近では、筋肉疾患を治療するための遺伝子治療法を利用して、特定遺伝子を筋肉細胞などに注入し、局所的なホルモン生成ができるようにする“遺伝子ドーピング”なども行われています」

ずいぶんと手が込んだ方法もあるわけですね。こうなるととてもアスリート個人で行っているとは思えませんが……

大野: 「そうですね。最近ではチーム単位など組織的な関与が疑われるケースも見られます。なかには医療関係者の関わりが示唆される例もあり、国際的にも問題となっています」

ドーピングはなぜ禁止されているのか?

そもそも、ドーピングの何が問題なのでしょうか?

大野: 「いくつか理由はあります。まず一番大きな理由は、アスリートの健康上のリスクです。薬物は使用法を誤ると、重篤な副作用につながる可能性があります。薬はそれぞれに使用量や使用法が定められていますが、その内容は当局の公式な許可を得たものです。しかし、薬物をドーピングに使うということは、その薬剤が認められていない用途や用法で使われるということです。ともすると治療に使われる何倍もの量が使用されるかもしれません。それはときには生命の危機に関わることもある、非常に危険な行為なのです」

ほかにはどんな理由がありますか?

大野: 「統一したルールのもとに公平に競い合うというスポーツのフェアプレイ精神を崩し、競技を行う者、観る者の楽しさを奪って、スポーツそのものの価値を損なうことは言うまでもありません。また、ドーピング自体が反社会的行為であり、広く薬物乱用を助長する行為につながる恐れもあります。近年ではトップアスリートのみならず、学生やアマチュアアスリートにまで、競技力向上を目的とした禁止物質の不正使用や乱用が国際的に見られるようになってきましたが、さらなる低年齢化やすそ野の広がりを危惧する声もあります。もはやドーピングはスポーツ分野のみならず、公衆衛生という社会全体の問題となっているのです」

アステラス製薬がアンチ・ドーピングに取り組む理由とは

アステラス製薬のアンチ・ドーピングに対する取り組みを教えてください。

大野: 「アステラス製薬ではドーピングという社会課題の解決に向けて、2016年10月、WADAとスポーツにおけるドーピングを目的とした医薬品の誤用や乱用の防止に向けた国際的な連携に関する契約を締結しました。これは、アステラス製薬で開発中の化合物がドーピングで乱用される恐れがある場合、WADAによる検出方法の開発に協力するべく、当社がWADAに情報提供するというもので、日本の製薬会社としては初めてのことです」

なぜそのような契約をされたのでしょうか。

大野: 「ドーピングでは、市販されている医薬品だけでなく、開発段階の化合物が誤用・乱用されることもあります。その多くはブラックマーケットによるものだと言われていますが、事前に情報を共有しておくことでWADAがあらかじめドーピングの潜在リスクを評価し、万が一ブラックマーケットでの流通を確認した際により早く対策をとれるようになります」

この契約の背景にある、アステラス製薬の想いを教えてください。

大野: 「製薬会社の使命は、病気や怪我などで薬を必要としている患者さんに、確実に薬を届けることです。しかし、それだけではなく、その薬が適正に使用されるようにすることも製薬会社の務めだと考えています。人々の健康に貢献するために開発された薬が本来とは違う目的のために使われた結果として、アスリートに健康被害をもたらしたり、社会全体に悪影響を及ぼしたりすることは私たちの本意ではありません。残念ながらドーピングの摘発件数は年々増えていますが、ドーピングを未然に防ぎ、健全なスポーツが行われるようにすることは、製薬会社の社会的責任において取り組むべき大きな課題だと思っています」

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