住血吸虫症に対する新たな小児用治療選択肢の開発

就学期前児童における住血吸虫症の新たな治療選択肢としてEMAから肯定的な科学的見解を受領

主な目標
イノベーションの創出

命にかかわる感染症「住血吸虫症」

The Pediatric Praziquantel Consortium ロゴ

住血吸虫症(別名:ビルハルツ住血吸虫症)*1は、世界で最も蔓延している寄生虫疾患の一つで、78カ国に蔓延し、51カ国で流行しています。また、2億4,000万人以上が罹患しており、公衆衛生上の負担が大きく、経済的な影響をもたらします。貧困との関連性が高く、清潔な水にアクセスできない熱帯、亜熱帯地域において蔓延しています。住血吸虫によって引き起こされる疾患で、人々が生活の中で淡水に触れる際に寄生虫に感染します。小さな幼虫が人間の皮膚から血管に入り込み、臓器を攻撃します。住血吸虫症は慢性疾患であり、子供の感染率が特に高く、世界保健機関(WHO)によって分類される21の顧みられない熱帯病(NTDs)の1つです。
治療をしなければ、貧血、発育不全、学習能力の低下、臓器の慢性炎症を引き起こし、命にかかわることもあります。 


住血吸虫症に対する現在の標準治療は、学齢期や成人の治療に適しています。一方で、小児向けに適した製剤がないために5,000万人の就学前児童が公的な医療プログラムで治療されていないという課題がありました。
 

コンソーシアムパートナーとして革新的な製剤技術供与を行い、小児用治療選択肢の開発に貢献

小児用プラジカンテルコンソーシアムは、国際的な官民パートナーシップで、住血吸虫症に感染した就学前児童の保健医療アクセスを改善することにより、住血吸虫症という世界的な疾病による苦痛を軽減することを目的としています。生後3カ月から6歳の小児の住血吸虫症を治療するための適切な小児用医薬品を開発、登録、および持続的なアクセスの提供をミッションとしています。
アステラスは、2012年より小児用プラジカンテルコンソーシアムの創設メンバーとして参画し、製薬企業や研究機関、国際非営利組織といったコンソーシアムの参加者とともに、小児に適した製剤の共同開発に取り組んできました。
私たちの革新的な製剤技術は、特に新たな小児用治療選択肢の初期製剤開発において、極めて重要な役割を果たしました。水に溶ける錠剤(150 mg)で、幼い子どもが服用しやすいように苦みを軽減した錠剤を開発しました。
この小児用製剤は、プロトタイプ*2がアステラスにより開発、Merck(本社:ドイツ)により最適化され、高温多湿な熱帯地域においても安定性が高い錠剤を、簡素な製造プロセスでグローバルに製造できるようになりました。
 

アフリカの蔓延国の子どもたちの製品アクセスにむけて

2023年12月、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会(CHMP)が就学期前児童における住血吸虫症の新しい治療選択肢に関して肯定的な科学的見解を示しました。新しい治療薬が世界保健機関(WHO)の事前認証や必須リストに登録されるステップに加え、コンソーシアムの実施研究「ADOPT*3プログラム」が進行中であり、アフリカにおいて最初の蔓延国に新たな治療選択肢を導入する準備を行っています。
この新たな小児用治療選択肢を必要としている患者さんへ公平に届け、かつ患者さんが将来にわたって利用できるようにする(持続可能なアクセスを確保する)ためには、原料の調達や資金調達の新たな仕組みを共同で模索し、確立する必要があります。

アステラスは、保健医療へのアクセスを最重要課題と捉え、VISION「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの価値に変える」の下、その課題解決に向けて、包括的な取り組みを下記の3つのアプローチで積極的に行っています。
(1)アステラスのコアビジネス(Rx, Rx+)
(2)アステラス製品の入手可能性の向上
(3)外部パートナーが実施する保健医療へのアクセス向上に向けた活動の協働・支援

コンソーシアムでの活動は(3)に該当し、新たな小児用治療選択肢のEMAによる肯定的な科学的見解は、アステラス製薬が取り組むATH課題の解決に向けた大きな一歩となりました。

アステラスは、今後もコンソーシアムの一員として、コンソーシアムパートナーと連携し、アフリカの住血吸虫症まん延国の子どもたちに製品を届けることができるよう取り組んでいます。

コンソーシアムの活動やパートナーの詳細については、以下をご覧ください。
https://www.pediatricpraziquantelconsortium.org/

  • 国連の持続可能な開発目標(SDGs)を実現し、世界中の人々の健康を確保するためには、住血吸虫症などの貧困との関連が高い病気を克服する必要があります。コンソーシアムの活動はSDGsの「目標3:すべての人に健康と福祉を」と「目標17:パートナーシップで目標を達成しよう」において公衆衛生上の課題である住血吸虫症を制圧するために大きく貢献しています。
  • コンソーシアムの活動は現在、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund:Global Health Innovative Technology Fund)およびThe European & Developing Countries Clinical Trials Partnership(EDCTP)からの資金提供により支えられています。
     

*1 https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/schistosomiasis
*2 プロトタイプ:原型、最初に形にしたもの
*3 ADOPT: Adoption of Levo-Praziquantel 150 mg for schistosomiasis by endemic countries

新しく開発された小児用製剤 ©Merck

新しく開発された小児用製剤
©Merck

 

 

 


※本動画は、GHIT Fundにより2019年7月に作成されました。