Cytokinetics, Incorporated(本社:カリフォルニア州サンフランシスコ、以下「Cytokinetics社」)とアステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:安川 健司、以下「アステラス製薬」)は、神経筋疾患および非神経筋疾患を対象としたreldesemtivの臨床試験など、両社が共同で研究開発を進めている骨格筋プログラムの最新の状況をお知らせします。
 現在、両社は、骨格筋の筋力低下や疲労に伴うさまざまな疾患の治療薬候補となりえる低分子骨格筋活性化剤の創出を目的として共同研究を進めています。また、reldesemtivの他にもう1つの骨格筋速筋トロポニン活性化剤(Fast Skeletal muscle Troponin Activator: FSTA)を治験許可申請(IND)に向けた前臨床試験段階に進めており、共同で進めている研究プログラムを2019年まで継続します。
 Cytokinetics社はreldesemtivを、脊髄筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy: SMA)、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis: ALS)、その他の衰弱性神経筋疾患および骨格筋の筋力低下や疲労と関連する疾患の治療薬として開発中です。同時に、アステラス製薬は、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)患者および運動機能が低下している高齢患者を対象として非神経疾患における次世代FSTAの開発方針を検討するため、reldesemtivを用いた臨床試験を実施しています。

神経筋プログラム
脊髄性筋萎縮症(SMA)

  • 本年6月、Cytokinetics社は、II型、III型、またはIV型のSMA患者36人を2つのコホートにそれぞれ組み入れ、reldesemtiv懸濁製剤を8週間、経口投与した際の薬力学的効果を評価するために計画された第II相二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験のデータを発表しました。副次的目的は、reldesemtivの安全性、忍容性および薬物動態の評価です。本試験でreldesemtiv群では、有酸素運動能と持久力の最大下運動負荷試験である6分間歩行距離(6 Minute Walk Distance: 6MWD)のベースラインからの変化において濃度依存的に統計学的に有意な増加を示しました。本試験では、呼吸筋の強さの指標である最大呼気圧(Maximal Expiratory Pressure: MEP)においても統計学的に有意な増加を示しました。米国でSMAを適応症として承認された薬剤の開発で用いられたHammersmith運動機能評価スケールを含め、他の評価項目[上肢モジュール(Revised Upper Limb Module)、Timed Up and Go、努力肺活量(Forced Vital Capacity)、米国食品医薬品局(FDA)基準の患者報告アウトカム指標(Patient Reported Outcome Measure: PROM)に適合するように開発された指標であるSMA Health Index(SMA-HI)]では、reldesemtiv群とプラセボ群との間に差は認められませんでした。なお、有害事象は両群間で同様でした。
  • 英国オックスフォードで開催された2018 Muscle Study Group Scientific Meeting で発表された追加結果では、治験薬の投与中止から4週間後(追跡調査)の6MWDおよびMEPの評価項目で、持続的な増加を示しました。reldesemtivを1日2回450 mg投与した際の6MWDのベースラインからの変化量におけるプラセボに対する平均増加量は、8週間投与後24.89 m (p = 0.0584)および追跡調査時30.81 m (p = 0.0381)でした。同様に、reldesemtivを1日2回450 mg投与した時のMEPのベースラインからの変化量におけるプラセボに対する平均増加量は、8週間投与後13.15 cm H2O (p = 0.0298)および追跡調査時9.47 cm H2O (p = 0.1344)でした。
  • 追加解析では、reldesemtivを1日2回450 mg投与するコホートでの6MWDのベースラインからの変化量は、SMA-HIの特定の評価項目でのベースラインからの変化量と相関性を示しました。特に疲労度(相関係数 ([r] = ˗0.90、p = 0.01)および活動への参加意欲 (r = -0.82、p = 0.05))では有意に相関しました。SMA-HIスコアの減少は、PROMによって評価される疾病負荷(disease burden)の減少を反映します。したがって、負の相関係数は、6MWDが増加するにつれて、SMA-HIの評価項目によって評価される疾病負荷が減少することを示しました。
  • Cytokinetics社は最近、SMA患者を対象としたreldesemtivの第II相試験について議論する専門家会議を開催しました。専門家からは、建設的なフィードバックならびに今後の開発の方向性についてアドバイスを受けました。
  • Cytokinetics社は、SMA患者を対象としたreldesemtivの臨床試験において6MWDを評価項目とすることが受け入れ可能か、本年中にFDAと協議したいと考えています。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

  • Cytokinetics社はFORTITUDE-ALS試験(Functional Outcomes in a Randomized Trial of Investigational Treatment with CK-2127107 to Understand Decline in Endpoints – in ALS)を実施しており、ALS患者445例を試験に組み入れる予定です。本試験は、reldesemtivを12週間投与した際の肺活量(SVC)および骨格筋機能の他の評価指標におけるプラセボに対するベースラインからの変化を評価するように計画されています。副次評価項目は、ハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)およびハンドグリップダイナモメトリーにより測定した筋力のメガスコアのベースラインからの変化の傾き、ALS機能評価スケール-改訂版(ALS Functional Rating Scale-Recised: ALSFRS-R)のベースラインからの変化、治療下で発現した有害事象の発現率および重症度です。
  • 本試験は現在、ALS患者350人以上を組み入れており、2018年第4四半期に患者の組み入れが完了する見込みです。また、2019年前半に試験の結果が判明する予定です。

非神経筋プログラム
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)

  • アステラス製薬は最近、COPD患者の運動耐容能におけるreldesemtivの効果をプラセボと比較する第II相臨床試験を完了しました。本試験では、COPD患者約40例を対象に、2週間にわたるCWR(Constant Work Rate)持久時間のベースラインからの変化を評価しました。さらに、この試験では心肺および神経筋への影響および安静時肺機能を評価したほか、reldesemtivの安全性、忍容性および薬物動態を評価しました。
  • 本試験では、主要評価項目を達成せず、副次評価項目のいずれにおいても統計学的に有意な差を示しませんでした。なお、有害事象は両群間で同様でした。

運動機能が低下している高齢患者

  • アステラス製薬は、運動機能が低下している70~89歳の約60名の被験者を対象に、骨格筋疲労におけるreldesemtivの効果をプラセボと比較して評価する第Ib相臨床試験を実施しています。本試験では、等速性膝関節伸展におけるピークトルク値の合計のベースラインから投与14日目までの変化などを評価します。また、身体機能に対するreldesemtivの効果、安全性、忍容性および薬物動態を評価します。
  • 本試験の中間解析が最近実施され、独立データモニタリング委員会はあらかじめ設定された薬効欠如の基準を満たしていると判断しました。これにより、アステラス製薬は本試験への患者の組み入れを中止するよう治験責任医師に通知しました。

その他研究開発
 両社は、次世代FSTAのINDに向けた前臨床試験を開始する予定であり、これに伴いアステラス製薬からCytokinetics社へ200万ドルのマイルストン支払いが発生します。この新薬候補化合物は、reldesemtivとは物理化学的特性が異なり、本化合物を非神経筋疾患の治療薬として開発する可能性があります。また、両社は2019年まで共同研究を継続し、アステラス製薬はCytokinetics社の研究活動の支援を行います。

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